ふたつの約束
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ふと、クロロが思いついたように立ち上がった。
「そういえば鎖野郎は仲間の眼を集めてるんだったな」
『…それが何か?』
例の不敵な笑みを浮かべ、クロロはリンの目の前へやってきた。
「条件を変えよう。俺のものにならなくていい。しかも奴の仲間の眼は俺が集めてやる」
『は……?』
突然の思わぬ発案に、拍子抜けた声を漏らすリン。
へ??…それは何で??
何のメリットが??
あ、いや待て
クロロは条件と言った
続きがあるんだ
リンがまたキュッと締まった顔に戻る。
「ただし、その間だけ、リンは俺と共に行動するんだ。俺と協力しあって緋の眼を全て集める。
…どうだ?これ以上ない好条件だと思うが」
クロロが身長差の分、上からリンを見下ろすが、それよりもずっと高い場所から悠々と見下ろされているような気がする。
余裕綽々の不敵な笑みをたたえて。
リンは返事に詰まった。
確かに好条件
それが本当ならね
だけどもし眼を全て集められたとしたら、
その時に「そんじゃ、さよーなら」と、あっさり帰してくれるだろうか?
一度捕まってしまえば最後、もう二度とクラピカの元へは戻れないかも知れない
『…あのさ』
「ちゃんと終わったら返してやる。しかもお前の頑張り次第で、眼が早く集まればその分早く帰れる。
言っておくが、これは俺がお前の頑固さに負けたが故の折衷案だ。これ以上の譲歩はない。
ここで承諾しないなら、こちらももう要望は一切聞くつもりはない」
クロロは確信しているように強気だ。
この条件は飲まないわけにはいかないと───
さて、どうする…
こんな事、クラピカが許すはずがない
クラピカは旅団が来たら望み通り闘い、返り打ちにする覚悟
こんな風に勝手に動いている事自体、クラピカに対する裏切りなのかも知れない
てな事も言ってらんないけどさ
だいたい死んだクラピカの仲間は、その元凶であるこいつに眼を集められるの、嬉しいわけなくないか?
クラピカだってきっと…
いやっ!そこまで考え出したらキリないよ!
結論出ない!!
一旦は死ぬ覚悟までしたんだから
―――飲もう。この条件
クラピカの命、脅かす可能性は何としてでも排除する!
『…わかった。クロロがそれでいいなら…。
一緒に眼を集めてくれるんだよね?』
リンの返答に、クロロは思いの外、パッと明るい表情を見せた。
「ああ。交渉成立だな。約束は守る。
───ありがとう」
『……』
"ありがとう"…だって
何て嬉しそうな顔をするんだろう
私の事…好きなのかな
ああ…クラピカと…
どの位の間、離れる事になるんだろう?
それよりもまず…
クラピカに何て言おうか……
『…とにかく一度家に帰るから。いい?』
「もちろん。鎖野郎には話すのか?」
『…話さないよ。他の言い訳考える』
「そうか。それじゃ明日、同じ時間にこの場所で」
「くくく◇彼によろしく◆」
クロロとヒソカの二人は、そう言って一瞬にしてその場所から消えていなくなった。
リンはしばらくそのまま一人で立ち尽くしていた。
そして来る時には一時間で駆けてきた道を、ゆっくりトボトボ歩いて帰った。
家に着く頃には外はすっかり真っ暗で、クラピカからの着信もあれ以来なかった。
玄関の前でドアを開ける勇気が出なくて、ノブに手をかけたままリンは動けずにいた。
どの位の間、そのままでいただろうか。
だいぶ経ってから、内側からドアが開かれた。
中からクラピカが少し不機嫌そうな表情で顔を出す。
「…いつまでそうしているつもりだ。早く入れ、風邪を引く」
リンは何も言う事ができずに、黙って家の中へ入った。
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