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『何…それ…どういう意味…?』
リンの鬼気迫る表情に、思わずグレスは気押された。
しかし、問われるまま正直に、ありのままを話した。
「だからその…襲いに来た盗賊団連中の一人が、貴女を神殿で見つけて連れて行ったんです」
『違うでしょ!?ハンターだよ!!助けに来たハンターの人達…で…しょ…』
言いながら、師匠から聞かされていたその日の話を思い出した。
確か師匠は…
一人で旅をしていて…
たまたま通りかかったら私達一族の惨劇を見つけたと───
「嘘ではありません!!里にはハンターなど来ませんでした!!…奴らは貴女を奪い、他に誰もいないとわかるとそのまま去って行きました。
…だからてっきり貴方は殺されたのだと…」
グレスの説明に、リンは頭が混乱して真っ白になった。
どういう事…?
師匠…
何が何やら…私は…
一体、なんなの……?
「とにかく本当に無事でよかったです。もはや生き残りは世界中に貴女と私しか居ません。どうか、協力して一族を復興しましょう!!」
『それより教えて…その…私を抱いて出て来たのって…どんな人か覚えてる?』
明らかに青ざめて、震える唇がようやく動く状態で、リンは問い掛ける。
「あ、はい…えっと、確か黒髪で短髪、体格が良くて年は二十歳前後。
…そうだ、仲間には確かこう呼ばれてました」
『「アルト」』
グレスの言葉と同時に発せられたリンの言葉が、同じ名前を呼んだ。
『……マジ……?』
その場に愕然と膝をつく。
ハンター試験、移動中の飛行船の中で会長に聞いた師匠の名前…
" アルト・リーハント"
『あは…意味わかんないって…マジで…てかあんたさ、その人達が盗賊団だって、確証持って言ってる?』
「確証というより、俺はそいつらの会話も聞こえる距離にいました。
遺体が全部焼かれていた事に、もったいないだの、無駄足だっただの…
貴女を抱いていたアルトという人物に向かって、高く売ろうという声も聞こえてきました」
グレスの話を聞きながら、リンはひどい眩暈に襲われた。
『嘘だよ…全部…そんなの嘘………』
リンのただならぬ様子に、グレスは"何か"を悟った。
「もしや…貴女は今までその男に育てられたのですか?」
黙ったまま俯いているリン。
「もしそうなら貴女は騙されてる!取り込んで成長してから売るつもりだったんだ!場合によっては赤子より高く売れる…っ」
『黙れ!!あんたに何がわかる!消えてよ!
師匠は本当に愛情かけて育ててくれた!!信頼されて任された仕事も断り続けて、やりたい事もやんないで、結婚もしないで、自由もなくて…
不幸な境遇だからって、他人の金すろうとした奴に、師匠の事とやかく言われたくない!!』
リンは立ち上がり、猛スピードで去っていった。
「あっ…デューナっ…」
グレスの声が遠のいてゆく。
信じない…私は信じない!!
握った拳から、真っ赤な鮮血が滴り落ちた。
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