好きだ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
タイムリミットがやってきた。
「リン、時間だ」
直接迎えに来たクラピカがリンの腕を引き、部屋から連れ出した。
クロロのもとには、またセンリツが戻る。
クロロと話す前よりも、リンは更に暗い顔をしている。
「…隠し事のできないやつだな。一体何を言われた?」
掴んでいた腕を放し、リンに向き直って問い掛ける。
『あ…えっと…何でもない』
「何でもないという顔じゃないだろう。私はちゃんとお前の頼みをきいたんだ。お前も話してほしい」
強い口調とは裏腹に、クラピカは優しくリンの頭を撫でた。
『う…んとね、やっぱり…あいつは蜘蛛なんだなぁと思っただけ。それが結論だったよ…』
そう言いながら溜め息を吐き、リンはクラピカの肩に頭を預けた。
「…そうか」
二人は飛行船の廊下の窓から、何も見えない夜の黒い世界を見つめた。
クロロとリンが話をしていた部屋からクラピカとセンリツが待っていた部屋は、間にひと部屋挟んだだけの距離だった。
センリツには二人の会話の一部始終が聞こえていた。
聞くつもりは決してなかったが、「聞こえるから部屋を移動しよう」と言うと、クラピカに実況するよう頼まれるかも知れないと思い、言い出せなかった。
センリツはクロロと部屋に二人きりになり、ふと興味が湧いて話しかけてみた。
「あなたはリンの事が好きなのね」
「…好き?」
クロロの顔に、表現しがたい微妙な変化の色が見える。
「気に入ってるのは確かだが。まぁ、俺の中ではリンも緋の眼も同じで、世の中の珍しいお宝みたいなものだ。…退屈しのぎだな。
それにあいつの明け透けな感情の表れ方や愚直さは面白い。傍に置いてみたい。
人間をこんな風に思うのも…まぁ、珍しいかもな」
クロロの話を聞きながら、センリツはクスクスと笑った。
「?」
「ごめんなさい、笑ったりして。貴方みたいな天下の盗賊さんにも、わからない事があるのね。
あなたは勘違いしてる」
クロロは無表情ながらも、どこか不思議そうにセンリツを見つめる。
「まだ会って間もないけど、あなたの心音、リンといる時だけ少しリズムを変えるの。
普段は恐れなどない、死を享受したような、冷たくて耳を塞ぎたくなる音だけど、リンといる時だけ違う。
少し優しい音色が混じる。温かい音に変わる。
貴方はリンの事が好きなのよ」
クロロはセンリツの言葉を、口を挟むでもなく嫌な顔をするでもなく、黙って聞いていた。
・