100day Challenge

23.デイサソ

2024/10/31 23:26
SS
 


「トリックオアトリート! うん!」
「ンだその服は……」

 ノックもせずに部屋のドアが開け放たれた、と思ったら開口一番これだ。
 説明するのが面倒なぐらい派手な衣装。ジャケット、シャツ、ベスト、ショートパンツにブーツ、極めつけは大きな羽根飾りの付いた帽子。その全てが色とりどりで、だというのに妙にマッチしている気がするから不思議だ。

「マッドハッターらしいぞ、うん」

 言われてみれば確かに、ジャケットにはトランプのチャームが付いている。しかし何故、狂った帽子屋なんだ。ハロウィンぽさはない気がするが……。

「なんで着てるお前自身があやふやなんだよ」
「小南が用意したからオイラは詳しくは知らないんだ、うん。サソリの旦那の分の衣装もあったぞ」
「くだらねぇ……」

 溜め息を吐く。今日はハロウィンだが、まさかそんなイベント事にあの女が乗っかるとは思わなかった。それとも誰かの思い付きなのか……リーダーとかじゃねえだろうな。まさかな……。

「それより旦那! トリックオアトリートだってば、う……ん!」

 その顔面にビニールに包まれた飴を投げつけてやる。ぶつかる寸前で片手で受け止めたデイダラは、手の中の菓子に唇を尖らせた。

「ンだよ旦那、そこは悪戯一択だろ? うん」
「テメェの考えなんざお見通しなんだよ」

 鼻で笑ってやれば、唸り声が返ってきた。
 拗ねながらも早速飴を食べることにしたらしいデイダラは、包み紙を開けて中身を口に放り込む。口に含んだ瞬間、好きな味に目を輝かせるデイダラ。そういう所はまだまだガキだな。

「それよりデイダラ……Trick or Treat?」
「……あ」

 問いかけてやれば、オレからそう問われることは全く想定していなかったらしいデイダラが口を半開きにする。悪戯する気満々でオレの部屋まで来たデイダラが、わざわざ菓子を持ってくるとは思えない。オレが渡した飴は、溶けるのが早いから今頃胃の中だろう。
 オレが口角を上げれば、飴を食った時よりも目を輝かせるデイダラ。
 ……全く、何を勘違いしているんだか。

「悪戯、でいいんだな?」
「だっ、旦那からの悪戯なんて刺激が強――ぁ、?」
「お、効いてきたか」

 地面に崩れ落ちるデイダラ。体に力が入らないらしい。
 焦った表情のデイダラを見下ろす。

「だっ、旦那……まさか」
「そのまさかだぜ。……あの飴、旨かっただろ?」

 それだけで察したらしいデイダラの顔が青ざめる。オレは笑いが止まらない。
 好きな味がした? 当たり前だろ。あれはオレ特製の飴……ついでに筋弛緩剤入りだ。

「じゃあ望み通り悪戯してやるよ。まず最近新しく調合した毒だろ……」
「おかしいって旦那ァ! ハロウィンだろ!? 今日は世の中のカップルがコスプレセックスする日じゃねーのかよ!?」
「お前の認識も大概ずれてる気がするが……あとオレとお前はカップルじゃねえだろ」
「そうだけどさぁ! うん!」

 デイダラの言葉を聞き流しながら、薬品棚から実験したかった毒や薬品を見繕う。
 それにしても、協力的な実験体が手に入って何よりだ。ハロウィンなんて素晴らしいイベントを催そうと考えた小南とリーダーに感謝だな。

「安心しろ、殺しはしねーから」
「当たり前だろ!? 芸術コンビがこれで解消なんて冗談じゃねーぞ! ……旦那! その注射器しまってくれよ! うん!」
「はーいチクッとしますよー」
「これがオチだなんてオイラ嫌だ! 嫌だぞだん……な……」





 ハッピー(?)ハロウィン!


 

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