100day Challenge
20.我サソ
2024/10/24 19:27SS
※ サソリ上忍if
「……何をしている」
「そりゃこっちのセリフだ」
深夜、風影屋敷の屋上。寝付きが悪く、外の風に当たろうとしたオレは、手摺に両腕を置いて立っている先客を発見した。薄闇の中、僅かな明かりにその赤髪が透かされる。
「明日もはえーんだからさっさと寝ろ」
「子供扱いするな」
その男はオレの補佐を務める男、サソリ。片手をヒラヒラと振り、追い払うような仕草をされるが気にせず彼の隣に並んだ。
昔はサソリの方が自分より身長が高かった。しかし今は殆ど同じぐらいまで伸びた。それぐらい成長しているのに……。
「ホラ戻れよ、風影様」
ニヤっと笑ってオレをあしらうこの男には、オレが未だに子供に見えているのだろうか。
そう考えると少し腹が立った。どうにかして困らせてやりたくなる。
「名前で呼べ」
「は? ……ったく……」
とはいえ、すぐに思い浮かんだのはこれぐらいで。……何とも子供染みた命令だと、自分で口にしてから後悔する。
しかしこれはオレの願望でもある。小さい頃はずっと「我愛羅」と呼んでくれていたが、風影に就任してからはずっと「風影様」「五代目様」……そのどちらかでしか、呼んで貰えなくなっていたから。
「我愛羅。……これでいいか」
オレの思考を知ってか知らずか、僅かに苦笑したサソリがオレの名前を音に乗せる。
それだけで……胸の中が温まるのだから。現金なものだと思う。
「何だ? 寂しかったのか」
「あぁ、寂しかった。……だからもっと呼んでくれ、サソリ」
揶揄うように笑いながら言われるが、それをオレは肯定する。紛れもない事実だったから。これを機に名前を呼んで貰えるようになるなら、それが一番だ。……今は、それで我慢しよう。
だけど。
「……検討しておいてやるよ」
そういってふいとそっぽを向いたサソリの頬は、赤く染まっていて。
オレは結局、我慢できずに……その唇を奪った。