100day Challenge

18.カカサソ

2024/10/18 23:57
SS
 


 ※ 学パロ





「誘ってきたのはそっちでしょ?」
「いや……その……」

 しどろもどろになりながら、何とかカカシからの猛攻を避けようとする。だけど、かわしてもかわしても無駄な気がするのは何故だろうか。
 セーラー服のリボンをぎゅっと握る。もしこの服を脱がされでもしたら……いや、そんな事あるわけねぇ。
 このオレが何故、女装して、しかもカカシなんかとラブホテルにいるのか。
 その発端は、仲間内での賭けだった――。



「げ……」
「っしゃあ勝ったァ!」
「やったぜ! うん!」

 私立暁高校、生徒会室。生徒会といえどこの高校のそれはそこまで堅苦しいものではない。だからこうしてゲームに興じることができるわけだ。
 オレは携帯ゲーム機片手に顔を歪める。某レースゲームで馬鹿共に負けたからだ。よりによって飛段にまで……。
 最悪なのはそれだけじゃない。このゲームには罰ゲームが賭けられていた。

「な~にしてもらおっかなぁ、うん」
「んー……サソリにだろ? 普通のじゃつまんねぇしな……そうだ! 小南ー!」
「……金ならねぇぞ」

 何やら考え付いたらしい飛段とコソコソ話し合いを始めたデイダラの背中に声を掛ける。明日散髪に行く予定があるから、できるだけ金は使いたくなかった。
 小南まで呼んで、一体何の作戦会議中なんだか……面倒事じゃなければいいが。
 そして、悪い予感は的中するもので。

「絶対嫌だ!!」
「ワガママ言うなよ旦那! うん!」
「じゃあテメェが代われよ!」
「負けたのはサソリちゃんだろォ?」
「大人しくしなさい」

 椅子に座らされたと思ったら飛段に羽交い締めにされる。抵抗するが、身長差や体格差のせいで意味を成さない。

「女装してナンパ待ちなんてできるか!!」



「ハァ~~~~~ッ……」

 盛大に溜め息を吐いた。
 あの後何故か乱入してきた弥彦と長門に丸め込まれ……というか脅され、結局やる羽目になってしまった。
 長門がどこからか貰ってきた予備の制服に渋々着替え、小南に軽く化粧を施され伸びた髪はそれっぽくセットされた。ミニスカ渡されたときは本気でキレそうになったが……渋々履いた。元の顔立ちと身長の低さから、今のオレは女にしか見えない。どこからどう見てもセーラー服姿のJKだ。……たぶん。
 足元のハイソックスとローファーから顔を上げ、数十メートル先にある喫茶店のテラス席へ視線を飛ばす。飛段とデイダラが呑気な顔で手を振ってきたので睨み付けてやった。
 駅前の待ち合わせスポットであるこの場所は、ナンパスポットでもあった。だからこうして一人で、誰かが声を掛けてくるのを待っているフリをしているわけだ。
 大きく舌打ちをすれば目の前を流れる人が怯えた声を漏らした。いくらこのオレが可愛いからって、不機嫌そうな顔で腕を組んでいる女に易々と声を掛ける人間なんているハズが――。

「ねぇ、何してるの?」
「あ?」

 いた。しかも……コイツは。
 視線を遮るようにオレの前に立ったのは、ブレザー姿の男。ワックスで逆立てた髪型は銀色で、眠たそうな両眼は細められていて。黒いマスクを着けているが顔は整っているだろうことが、目元と鼻梁の高さからわかる。

「は……っ、いや」
「ん?」

 木ノ葉高校のはたけカカシ。つい名前を呼びそうになったがすぐ口を閉じる。
 生徒会会長のコイツとは、交流会やらで何度か顔を合わせたことがある。いけ好かねぇ奴だ……向こうでは天才と持て囃されているらしいが、そいつがこんなところでナンパとはな。

「さっきからカワイイ子がいるなって思って見てたんだよねぇ」
「あ、あぁ……?」

 コイツ、まさかとは思ったが……気付いてねぇのか。いや、そっちの方が好都合だ。
 ちらりとデイダラ達の方を見る。飛段の奴が頭上で丸を作っているのが見えた。“行け”ってことかよ……。
 若干げんなりするが、同時に悪戯心が沸き上がる。完璧な生徒会長様の弱みを握れるってんなら悪くねぇ……かもな。内心ニヤリとしながらカカシに視線を戻す。

「この後って空いてる?」
「あ、お……じゃなかった、うん。暇だから……アナタと遊びたいなぁ~なんて」

 女言葉に修正しながら、ぎこちない笑みを作る。果たして上手くできているのか、当然ながら女のフリなんてしたことねーから分からんが……相手はかかってくれた。

「よかった、じゃあ移動しよっか」
「うん、っ!?」

 返事をした途端に手首を握られ、そのまま引っ張られる。足が縺れそうになって慌てたが、カカシは木にもせず歩を進める。
 焦って後ろを振り返るも、頼みの綱であるデイダラと飛段は雑踏の向こうにいて見えない。選択を後悔しながらも、オレはカカシに着いていくことしかできなかった。



 そして。
 カカシに引きずられるようにして連れ込まれたのは……ラブホテル。
 何度も抵抗しようとしたがその度に受け流され、ついにここまで来てしまった。
 流石に二人とも制服姿なら止められるだろうとタカを括っていたが、連れ込まれた先のホテルが“ユルい”ことで有名で高校生御用達となっているラブホだったので絶望した。
 いや、でもオレは男だし……恥をかくのは向こうだ。何を怖がる必要がある? 最悪の場合は馬鹿二人に連絡したっていい。だから大丈夫だ……きっと。

「やっ、やっぱり私……」
「怖くなっちゃった?」

 ベッドの壁際でカカシに追い詰められる。逆端に座っていた筈なのに、カカシがくっついて来やがるからその度に逃げて……を繰り返していたらついに逃げ場がなくなってしまった。

「こういうの初めて? ――サソリくん」
「ッな――」

 名前を呼ばれて固まってしまう。その隙にベッドへ押し倒された。
 気付かれていた……! いつからだ、もしかして……。

「流石に何度か会ってるし、わかるよ」
「やめ……っ!」

 カカシが苦笑しながらオレの上に跨る。身を捩って抵抗しようとするが、両腕を押さえ付けられてできない。端正な顔が近づいてくる。

「オレをからかおうとしたこと……後悔させてあげる」





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