100day Challenge

15.カブサソ

2024/10/13 16:15
SS
 


 音隠れに点在していた、大蛇丸の“元”実験場。実験体達はとうに逃げ出し、辺りは閑散としていた。実験体達を戦わせるためだけに作られた闘技場で、カブトは一人、準備を進めていた。
 大蛇丸をその身に取り込み、姿の変わったカブト。自らを証明するための……これは第一段階だった。
 カブトは禁術――“穢土転生”を発動させた。地面が隆起し、一つの棺が地中から生えるように現れる。
 蓋が開き、姿を見せたのは――サソリ。危うげな足取りで一歩、二歩進んだその男は、立ち止まって口を開く。

「ココは……オレは死んだ……筈だが」
「甦ったんだよ。ボクの手によってね」

 目が醒めたらしいサソリは、頭を振りつつ目蓋を開ける。肌には無数の罅が入り、白目部分が黒く染まったその姿は、紛れもなく穢土転生の術で甦ったことを証明するものだ。

「お前は……カブトか」
「そうだよ。その姿が本体?」

 自分のことも覚えられているか怪しかったが、杞憂に終わり安堵するカブト。
 カブトは初めて見るサソリの本体。ヒルコとはまた違う、美少年然とした容貌に戸惑う。

「あぁ……そういやお前には見せてなかったな」

 何でもない事のように口にするサソリに、カブトの眉がピクリと跳ねた。穏やかではない心中を必死に隠しながら口を噤んだ。

「その姿……裏切ったか。もやしから蛇へ成長したってか?」

 自ずから裏切ったと言っておきながら、その表情には一欠片の惜しさも窺えない。
 カブトは苛立ちながらも、これを告げれば……と内心期待し口を開く。

「違う……ボクは最初から大蛇丸様の部下だ」

 サソリは顔を歪め、苛立った表情になる。カブトはそれに心臓が跳ねるのを感じた。口角が上がってゆく。
 ――しかし。

「チィ……大蛇丸……あのクソヤローが」

 露になったサソリの感情の矛先は、違った。カブトへ向けられたものではない。

「……もういい、ッ」

 激情に駆られたカブトは、それでもなんとか堪えて術を解除し、強制的にサソリを棺へと戻す。
 一人になったカブトは歯噛みし、苛々と髪を掻き乱した。

「大蛇丸様じゃなくて、ボクを見ろよ……!」

 一人だけの空間に、カブトの叫びは虚しく響く。真実だけではなく嘘もくれなかった男に、何を求めているのか……自分でもわからなかった。

「まぁいいさ……これで準備は整った」

 次に顔を上げた時、カブトの瞳は妖しい光を灯していた。うちはマダラ……を名乗る男への手土産もある。
 暗がりへと足を進めるカブト。その足取りは重く――その先に光はない。




 

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