100day Challenge

14.サスデイ

2024/10/11 17:49
SS
 


「あ、雪……」
「降ってきたか」

 頭の上に冷たい感覚がした、と思ったら目の前にちらつく白い破片。初雪だった。
 学校からの帰り道。一緒に帰っていたオレとサスケは、立ち止まって同じように空を見上げる。

「積もらなきゃいいが……」
「何でだよ。積もった方が絶対楽しいだろ、うん」
「……ガキ」
「んだとテメー!」

 言い争いながら、また歩き出す。
 サスケとつるむようになったのは中学生の時だ。入学式で偶然、同じ学校に通うことになったって知って……最初は冗談じゃねぇと思った。何で旦那じゃなくてお前がいるんだ、ってな。
 オレにもサスケにも、生まれつき前世の記憶ってのがある。忍者で犯罪者で、そして十九歳で文字通り爆死したとかいうふざけた記憶だ。だけどその記憶に引っ張られているのも事実。
 そして何の因果か……生まれ代わったのはオレとコイツの二人だけのようだった。孤児だったオイラは兎も角、サスケに至っては親兄弟まで別人だったらしい。
 サスケには入学式後に話しかけられて、クラスまで同じだったことでまた話しかけられて……最初は邪険に扱ってたが、状況もあって今はある程度仲良くしている。……前世のオイラが聞いたら鳥肌モンだろうな、うん。
 十九歳にいきなりガキに混じってガキの振りしろったって、そりゃ無理な話だ。サスケに至っては結婚して子供まで産まれたらしい。加えてあの無表情と口下手っぷりで、友達なんてのが出来たこともなかったと。
 要するに周りから浮きまくって孤独だったんでつるむようになった、って感じだな……うん。執拗いサスケに、オレが根負けしたってのもある。
 相変わらず反りは合わねえから喧嘩は絶えないが、まあ仲良くやってる方なんじゃねえかな……うん。

「なぁ、今日家行っていいか」
「う……いい、けどよ」

 サスケからの唐突な言葉に固まってしまう。赤くなった顔を隠すためにマフラーに埋めるが、きっとバレてる。

「いい加減慣れろ」
「っるせぇな!」

 前世も含めてそういった事が初めてだったオレに、快楽を教え込んだのはサスケだ。オレはいつもコイツの手練手管に翻弄されるばかり。中学の頃から何度だってシているのに、回数を重ねても一向に慣れる気がしない。
 ――でも別に、オレたちは恋人同士って訳じゃない。中学の性欲の盛り、なんとなく始まった関係が続いてるだけだ。距離感がバグった結果みたいな感じかね……うん。
 これが……遊びだって言えたら、楽なのかもしれねぇな。そんなことを考えながら吐き出した息は白い。手袋をしていない自分の手が、やけに冷たく思えた。
 サスケがそういう時だけ見せる穏やかな態度も、優しい手つきも、他の奴を想ってんだろうなって考えると辛くなるばっかりだ。
 オイラはとっくにお前の事が好きになってるってのに……馬鹿みてーじゃねえか、こんなの。

「ホラ、行くぞ」
「っ……うん」

 手袋を取ったサスケが、剥き出しで悴んだオレの手を握る。冷たいだろうに、しっかり指を絡ませて。
 優しくするな、と言いたかった。でもオレはその優しさをはね除けることも、礼を言うことすらできない。胸が苦しくて、辛くて、それでも何も言えない。素直なのは、熱くなる頬の温度だけだ。
 このまま、前世でのサスケの相手ってのが現れなきゃいい。そう願いながら、オレの家への道を歩いた。




 

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