100day Challenge

13.オロサソ

2024/10/08 14:58
SS
 


 ぱちぱちと小枝の爆ぜる音。辺りは暗く、まるで焚き火の周囲以外は闇に包まれているような錯覚に陥る。

「永遠とは、何かしら」
「……いきなり何だ」

 不意に大蛇丸が発した問いに、サソリは片眉を上げた。
 暁からの数ヵ月に及ぶ長期任務の最中、夜営していた時の事だった。
 焚き火を眺めている大蛇丸は、いつもより艶のない髪に目の下には隈、と疲労の色が濃い。
 コイツがここまで疲れている姿を見せるのも珍しい。そう思うと同時に、それに気付けてしまう自分に渋面を作るサソリ。

「いえね……永遠の命なんて存在するのか、と思って」
「お前の目は節穴か?」

 大蛇丸は焚き火を挟んだ向こう側に座っているサソリに視線を移す。彼は珍しく、己の制作した傀儡、ヒルコから出てきていた。
 サソリは人形のような美しい容貌をした少年の姿をしているが、既に人であることをやめ、文字通り人形になっている。胸で脈打つのは心臓ではなく唯一生身の部分である“核”だし、腹には内蔵代わりのワイヤーが収納されている。食事や睡眠を取る必要もなければ、疲れることもない。寿命が来て死ぬことも。

「漸くオレの作品になる気になったか」
「アナタの人形遊びに付き合う気はないわ」

 サソリが殺気立ち、二人の間に緊張感が走る。だがそれはすぐに雲散霧消した。つまらないじゃれ合いに体力を使いたくない大蛇丸と、チャクラを溜めている最中だったサソリが同時に脱力したからだ。

「……傀儡の何が気に入らない? お前が長年探し求めている“永久”が手に入るってのに」
「アナタに身体を弄らせるリスクを、私が理解していないとでも?」
「チィ……」

 サソリが大蛇丸を傀儡にするとすれば……サソリ自身と同じ自らの意志を持つ人傀儡ではなく、“三代目風影”のように意志のない作品とするつもりだろう。大蛇丸がそう言外に告げれば、図星だったサソリは舌打ちして黙り込む。

「……どこまで命を繋げばいいのか、と思って」

 ぽつりとそう零した大蛇丸。永遠に生き、全ての術を研究し尽くして……その先に何があるのか。
 いつも自信に溢れている彼にしては珍しく弱気な姿に、サソリは少なからず動揺した。

「その時はオレが殺してやるよ」

 だから思わず言ってしまった。約束じみた台詞を。
 呆気に取られていた大蛇丸だったが、次第にいつものシニカルな笑みを浮かべ始め……サソリは先程の言葉を後悔した。

「フ、フフフ……随分熱烈な告白ね」
「違ぇ、笑うな、クソ……っ」

 サソリは逃げ出したい気分になりながらそっぽを向く。人間であったなら頬が火照っていただろう。
 その様子を見て、笑いが止まらなくなる。いつの間にか先程までの鬱屈とした気持ちは消え去っていた。疲れすぎていたのだろう。全く、この私があんな弱気な考えに至るなんて……⁠。

「その時を楽しみにしてるわね」
「チィ……絶対に傀儡にしてやるからな」

 サソリの台詞は物騒だったが、照れ隠しにしか聞こえないのだから不思議だ。
 機嫌を良くした大蛇丸のサソリ弄りは、サソリがキレて三代目風影を持ち出すまで続いた。





 10/8 永遠の日




 

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