100day Challenge
12.イタサソ
2024/10/07 23:59SS
※ 転生ネタ
「……あ」
「お前……」
駅で偶然すれ違って、呆気に取られること三十秒。
互いに前世の記憶があると確信した。
「お前、友達はいいのか」
「シスイの事なら大丈夫だ。アイツは今日は授業がない」
それからオレ達は、毎日のように顔を合わせている。聞けばイタチは、前世の記憶を持つ奴に初めて出会ったらしい。……オレも、な訳だが。
前世ってのは、自分が忍として生きた時の記憶。夢物語みてぇだが……そうじゃない。何故だかそう確信できる。
「すまない……迷惑だっただろうか」
「そういう訳じゃねぇが……」
今世も芸術家として生きているオレは、個展がついこの間終わったところだ。作品の制作も一段落ついて、今は割合暇な期間だ。
イタチは大学三年生で、一・二年生の時に頑張って単位を取ったと言っていたのでまあ、暇なんだろう。ゼミに見知った顔がいた時はつい大声を上げそうになった、と苦笑していた。
マイペースなコイツのことが嫌い……なわけじゃない。ただ、知っているイタチの姿とあまりにも違って戸惑ってしまう。
「サソリ……?」
「いや、別に……何も」
歯切れ悪く誤魔化せば、イタチは別段気にした様子もなく微笑してティーカップを持ち上げ口に運ぶ。
記憶の中のイタチは、こんなに笑う奴じゃなかった……と思う。デイダラや大蛇丸に絡まれようが何をしようが無表情の鉄面皮だった筈だ。
暁でのツーマンセル相手だった鬼鮫なら表情の動く所を見たこともあるかもしれないが、生憎オレがこいつと組まされたことはなかった。
「お前……笑うんだな」
つい口に出してしまい、気付いたときにはイタチがまた苦笑していた。
「悪ィ」
「構わない。実はオレも、サソリと茶をしているのが少し不思議なんだ」
そう言って笑うイタチに、そっちの方が似合ってると言おうとしたが……照れ臭くなってやめた。