100day Challenge
10.イタデイ
2024/10/02 23:53SS
「デイダラ? どうしたんだ?」
優しい声音で、壁際に追い詰めたイタチが首を傾げる。自分より高い所にあるその顔だけど……相変わらず、視線は合わない。
何かにつけて贈り物をくれたり、逢瀬の約束をするのも向こうから。なのにイタチは、オイラを見ようとしない。
そんな事が何度か続いて、我慢できずに詰め寄ってしまった。今だってすぐに目を反らされてしまう。
「オイラを見ろよ……っ」
口から零れたのは紛れもない本心。ああ、胸が痛い。泣きたくなんてないのに、コイツにそんな姿見せたくないのに……眦にじわりと涙が溜まる。
「デイダラがあまりに可愛いから……その、緊張して」
「は、?」
「だから、目を合わせられなかった……」
思いもよらぬ回答に脱力してしまった。
照れているのか、頬を染めているイタチ……どうやら本当らしい。
深く深く、溜め息を吐く。オレもコイツも、本当に……。
「……馬鹿じゃねーの、うん」
「すまない、寂しくさせたな」
イタチの黒い瞳がオイラを見つめて優しく微笑む。
オイラが一番最初に美しさを感じた、写輪眼の赤い瞳じゃない。
――それでも。
「やっぱ見るの禁止! うん!」
「ど、どうし、」
「だって、オイラ……ドキドキして、どうしたらいいかわかんなくなる……うん」
「――っ」
今ならその眼だけじゃなく、全部が愛しいって思える。
イタチは呆気に取られた、と思ったら……真っ赤になっているであろうオイラの、息が止まるぐらい強く抱き締めた。