100day Challenge
9.角サソ
2024/10/01 21:03SS
「オイ、飛段を何とかしろ。最近勧誘が執拗くて敵わん」
「……なぜオレが」
「相方だろ」
暁アジトの角都の部屋、そのドアを蹴り開けたと思えば開口一番に文句を垂れるサソリ。胡座をかき読書をしていた角都は、手元の本から視線を上げず応答する。サソリはそんな彼の手元から本を取り上げた。眉を顰めサソリを睥睨する角都だが、サソリは気にする素振りもなく話を続ける。
「大体あの宗教は何だ。普通の信者は罪を悔い改めて天国やら極楽やらへ行きたがるってのに、その罪を重ねてどうする」
「カルト教団の理屈なぞオレが知るか。……そもそも、不死のアイツには黄泉や冥土なぞ縁の無いモノだろう」
「あー……その為に不死を追い求めてる部分もあんのか? お前はどう思う?」
「……どうでも良い」
話しながら本を開くサソリ。だが好みの物ではなかったようで、数ページ捲っただけで角都に突き返していた。
サソリの細い手首を握った角都は、そのまま自分の腕の中にその身体を収める。驚きに目を瞬かせるサソリだが、心なしか嬉しげに表情を緩ませ、甘んじて角都に抱き締められていた。
「死後の世界があったとして、どうせオレもお前も地獄行きだ」
「は、違いねぇ。……精々長生きするこった」
角都はサソリの首筋に顔を埋め、サソリはそんな角都の頭を撫でる。
互いに“罪”を重ねすぎているから。不死に近い存在であれども、最期に訪れる死から逃げ延びる事を願うように。