サソリ受け×恋人同士×コスプレ
「おい、着てやったぞ」
「うおお……っ」
軽い音を立てて試着室のカーテンが引かれる。そこには、白地に紺色の襟がついたセーラー服……を身に纏ったサソリの旦那が両手を腰に当てて仁王立ちしていた。長袖の口は襟と同じ紺色で絞られ、胸元には赤いリボン。スカートは膝上から十センチ程度の位置で、長すぎず短すぎず。紺色のハイソックスまで履いたその姿は、まさに女子高生だった。
驚安の殿堂を謳う某総合ディスカウントストア。平日の昼間だからか店内はガラガラで、だからこそオイラは売り場のコスプレゾーンに旦那を引っ張って来たわけだ。ハロウィン前ということもあり所狭しと並ぶコスプレ衣装の中から選び出したのはオーソドックスなセーラー服で、女装といえどこれぐらいなら旦那も着てくれるだろうという打算もあった。本当はもっと……イヤ、でもこれも十分。
「三十五歳にさせるコスプレじゃねーだろ」
「いや! カワイーぞ旦那! うん!」
「お、おう……」
浮かれるオイラに引き気味の旦那。だって好きな相手がこんな可愛い格好してるんだから仕方ない。
呆れ顔の旦那が一転、ニヤリと笑って床から持ち上げたのは。
「コッチじゃなくていいんだな?」
旦那の手にあるハンガーには、色合いは似ているけれど……今着ている物より数段布面積の少ないセーラー服が。
上着はショート丈にも限度があるだろって感じの短さで、胸の半分程度しかない。女なら確実に下乳が見える。旦那は男だけど、それはそれで……。スカートも短くて、二十センチあるかどうか怪しいぐらいだった。しゃがみでもしたら尻が丸見えになりそうだ。
もし旦那がこれを着たら……想像するだけで口の中に唾が湧いて、喉を上下させる。
「……そっちもお願いします、うん」
「クク……」
数秒固まった後に頭を下げれば、旦那に笑われた。カーテンが閉められお着替えタイム……かと思いきや、現実はそう甘くなかったようで。
「帰ったら着てやるよ」
「え~! お預けかよ、うん!」
「ンなの外で着れるか」
ゴネるが一蹴され、旦那は服に付いているタグでサイズを確かめ始める。
文句を言おうとした所で、ある事に思い至ったオイラは口端を上げた。
「ま、そうだな。他の奴にエッチな旦那の姿、見せたくねーしな……うん」
「何バカな、こと……っ」
試着室に押し入り、後ろ手で素早くカーテンを閉める。
驚いた表情の旦那。その唇を奪った。隙間から舌を挿し入れ、絡める。深いキスを続けていれば、次第に旦那の身体から力が抜けていった。
「っう、ンン……はぁっ」
「帰ったら続きしような、旦那……うん」
あれだけで身体に力が入らなくなったらしい旦那は床にへたり込み、その髪と同じぐらい赤い顔で荒い息を繰り返していた。もっとシたい気持ちを何とか押し止め、試着室から出る。
後で怒られるかもしれねぇが……それより今のオイラの頭を占めているのは、どうやってあのエッチな格好をした旦那を攻めるか、だった。
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