短編集

 


 ※ 学パロ(現パロ)
 ※ 最初だけモブ視点です





 ――モブside


「ッシャーセー」

 自動ドアが開くと同時にチャイム音が流れ、オレは反射的に口を動かした。もう一人の店員である先輩は事務所で仮眠中かスマホを弄っているかで、気怠い歓迎の挨拶を咎める人間はいない。コンビニの深夜バイトなんてそんなもんだ。
 時刻は深夜二時を回りそうなところ。やるべき業務は終わったし……暇だ。店内の客は今入ってきた一人だけ。早くレジ来ねーかな、なんて欠伸を零しながら考えていた。

「……これ」
「ッシャセ、ぇー……」

 レジ前に立ったのは赤い髪の男。歳は高校生ぐらいだろうか。入店した時はあまりよく見てなかったけど、ベビーフェイスのイケメンだった。……補導されろ。
 しかしオレが息を詰まらせた理由はその顔じゃない。
 赤髪イケメンが持ってきたのはコンドーム。しかも三箱。そしてLサイズ。
 この顔で巨根かよ……しかも彼女と随分お盛んなご様子で。まぁ高校生ならそんなもんか。益々補導されろ。
 なんて色々考えながらも顔には出すことなく、淡々とレジを通してゆく。いいよなぁイケメンは。オレも彼女欲しい……。

「袋どうされますか?」
「っ、お願いします……」
「袋代三円頂戴しますので合計二千七百三円になります」
「……これ、で」

 千円札を三枚差し出してきたイケメン。だが頬が僅かに赤くなっていた。高校生だとゴム買うの恥ずかしいよな~わかるわ~。
 遥か遠くなってしまった青春時代を思い出しながらビニール袋にゴム三箱を詰め、お釣りを手渡す。

「ありがとーございあしたー」

 気の抜けた挨拶をバックにイケメンは店を出ていく。自動ドアが閉まったところで、イケメンに別の人間が近づいていった。
 彼女か? と思ったが、あれは銀髪の……男?
 何事かを言い争う二人が遠く離れていくのを見ながらオレは首を捻る。罰ゲームとかだったのか? そうじゃないと友達の前でわざわざゴム買うなんて真似しないよな。いやに仲良さそうだったけど。
 それとも……。いや、これ以上は藪蛇な気がする。考えるのやめよ。
 ……オレも彼女欲しい。出会いが欲しい……。



 ――サソリside


「……ほらよ」
「お! 買えたんだなァサソリちゃん」

 えらいえらーい、とふざける飛段にビニール袋を押し付ける。ゴムが三つガサリと音を立てた。

「っ、お前が買ってこいって言うから……!」

 罰ゲーム、というより一種のプレイじみたこの行為。飛段は態々オレにコンドームを買いに行かせ、オレを辱しめてその姿を楽しんでいる。
 女が相手だった時は普通に買えたのに、これをオレに使われるんだと思うと……それを実感するだけで……っ。

「だってないとできねーだろ?」
「ざけんな、あんなに散々……っ」

 ナカに出しているくせに、とはさすがに言えず口ごもりそっぽを向く。一気に熱くなった顔を見せない為でもあったが、多分……無駄だ。
 そんなオレを、飛段は躊躇いもせず抱き締めた。深夜で人通りも少ないとはいえ、どこで誰が見ているかわかんねーってのにコイツは……!

「なーサソリ……オレもう我慢できねー」
「っな……」
「だから早く家帰ろうぜ。……でねーと今ここで犯しちまうかも」

 耳元で囁かれ、背筋が震える。それは嫌だからではなく、もっと別の……。
 片手で尻を揉まれ、その奥にある孔が疼いてしまう。熱い息を吐き出せば飛段が笑った。

「ゲハハッ! 何だかんだ言ってサソリもコーフンしてんだろ」
「っ……るせぇ、早く行くぞ」

 飛段の腕から逃れ、その手を取って歩き出す。行き先は勿論、一人暮らしであるこの男の家。つい早足になってしまうのはこのバカのせいだ。
 早く熱を発散したくなるのも、肌を合わせたくなるのも、コイツだから。……コイツだけだ。オレをそうさせるのは。




 
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