短編集
「飲め」
「エ!? 嫌ですけど!?」
「あ? 先輩の言うことが聞けねーってのかよ」
台詞だけを聞けば、飲みの席で無理に酒を飲まされそうになっている部下とアルハラしている上司の図。だがそうではないのは、サソリが手にしている物が酒の入ったグラスではなく、コルクで栓をされた小瓶であることからわかる。
トビことオビトは、言われるがままサソリに着いて彼の部屋まで来てしまったことを激しく後悔した。誰かを探していたサソリに、トビとして仮面を被ったオビトが声を掛けたのはつい先程……夕方と夜の丁度境目。
聞けばデイダラを探していたらしい彼は、まぁお前でもいいかとオビトの腕を掴んで己の自室へ向かった。その時点で既に嫌な予感はしていたオビトだが……。
小瓶の中で乳白色の液体が揺れる。サソリが探していたのは……被験者だった。先日、暁の裏切り者である大蛇丸の実験室で、奴が遺していった薬瓶を発見したサソリ。厳重に保管されていたソレが、一体どういう効果を持つのか確かめたかった。
その為にデイダラを探していたが、特にアイツに拘る理由はないし、どちらかと言えば暁の見習い小僧であるトビを犠牲にする方が組織にとっても都合がいいだろう。そう説明すればオビトは抵抗を始めた。当たり前だ。
「いいから早く飲めよ、ホラ」
「嫌ですって! サソリさんが自分で試せばいいじゃないですか!」
「あぁ? 何でオレが訳のわからん液体を飲まなきゃいけねーんだ!」
「その“訳のわからん液体”を他人に飲ませようとしないでくださいよぉ!」
言い争い、小瓶を押し付け合う二人。オビトはいざとなれば神威で逃げることは出来るが、できればサソリにその能力を見せたくはない。彼だけでなくペインと小南、そして己の真の目的を知るゼツ以外の暁の面々には、無力で何の術も持たない見習いだと思わせておきたかった。
神威を使わずこの状況を打破するには……と思考を巡らせたオビトが取った行動は。
「もうっ! しょーがないですね……わかりました、飲みますよ!」
「最初からそう言っときゃいいんだよ……ホラ」
観念したようにそう言って、片手をサソリに差し出すオビト。サソリは鼻を鳴らし、オビトに薬瓶を手渡す。
オビトが瓶の栓を抜くと、軽い音と共にミルクのような甘い香りが辺りに漂った。大蛇丸が作ったにしてはマトモそうな……いや、あの毒蛇がマトモなモノを調合するとは思えない。それはサソリとオビトの思考が一致した瞬間だった。
「じゃあ……飲みますよぉっ……!」
「いいから早く飲、んぐっ!?」
呆れ顔のサソリが口を開いた、その瞬間をオビトは見逃さなかった。その口に自分の指二本を突っ込み、閉じさせないようにする。そして。
「油断しましたねサソリさん! こういうのは先輩が飲むべきですよーっ!」
「ふあへんあ! へめ……っ!?」
「まぁまぁ、何かあったらボクが責任取りますから!」
思ってもいないことを言いながら、オビトはサソリの口に小瓶を傾けた。薬剤がオビトの指を伝い、サソリの口内へと滴り落ちていく。瓶の中身を全て注ぎ込んだオビトは、指を抜いて距離を取った。怒り狂ったサソリに殺されかねないと思ったからだ。
だが。
(……アレ?)
その場に頽れてしまったサソリに、オビトは戸惑う。ロクなもんじゃないだろうとは思っていたが、もしかして本当に劇薬の類いだったのだろうか。それは困る。只でさえ人手不足なのに、これ以上メンバーが減ってしまうのは……サソリクラスの強者などそう見つかるものではないから、補充も難しい。
“計画”に支障が出てしまう可能性だってある。それだけは避けたかった。
「さ、サソリさ~ん……?」
オビトは、サソリに恐る恐る近づいてみる。へたり込んで時折身体を痙攣させ、苦しそうな息を吐いているサソリ。その頬は真っ赤に染まり、瞳は熱に蕩けていて……思わず生唾を呑み込む。
胸元を握り締める拳は白く、相当力を込めているようだ。それ程までに苦しいのだろうか。
「ぁつ……い……っ」
途切れ途切れにサソリがそう言うので、急いで握っている箇所から手を外させ、マントのボタンを外してやる。
そこでオビトは呆気に取られた。現れた黒いインナー越しに、二つの突起……乳首が主張していたから。しかもその部分だけ布地が濡れて、そこから薬液と同じ甘い香りが広がっていく。
(な、んだコレは……ッ)
オビトは動揺しながらも、薄っぺらい布を自らの手で引き裂く。すると甘い香りは強まった。
メッシュインナー一枚になったサソリ。網越しに見える胸部の慎ましやかな飾りは勃ち上がり、充血してピンク色になっていた。そして――その先端からは、サソリが呼吸する毎に……半透明の液体が漏れ出していて。
「どうし……っ、どうなってるんスか、コレ」
「知るかよ、っ……それ、飲んだら……急、に」
オビトは動揺を露にしながらも、トビの仮面を被ることは忘れない。震える手でサソリが指すのは、オビトが持ったままだった小瓶。その瓶には……先程までは書かれていなかった文章がはっきりと記されていた。
「ええーっと……“おっぱいが止まらなくなる薬”……っハァ!?」
「なん……ッ」
その文章に度肝を抜かれたオビトと衝撃で固まるサソリ。おっぱい、というのはもしかして……二人してトロトロと溢れている液体に視線を向けた。
(ふざけんな、あのクソ蛇っ……!)
サソリは内心で歯噛みする。というかおっぱいって何だ、女向けの薬だろうになぜ男にも効くんだ。あとそんなモン作ってどうする気だったんだ……等、苛立ちと共に疑問が生まれる。だがその答えを知るのは、大蛇丸本人のみである。
「“母乳が出なくなるまで搾れば一旦は落ち着く”、“薬には催淫効果があり、そちらは数時間程度で切れる”……らしい、デスケド」
「クソが……っ」
“そちらは”という事は、母乳の方の効果は切れないということか。オビトが読み上げる文言に低く唸るような声を上げるサソリだが、頬を染め瞳を潤ませたままでは迫力がない。それどころか……。
オビトは手を伸ばしそうになり、はっとして動きを止める。
(今オレは、何を……ッ)
サソリはオビトより年上の男だが……その美しさの前では性別や年齢など些細な問題だ。沈魚落雁閉月羞花……その言葉通りの麗人が、蕩けた発情顔で両乳首からミルクを溢れさせているのだ。童貞に抗う術などない。
壮絶な色香に当てられ、己の奥底に眠っていた筈のそういった欲が起き上がるのがオビトにはわかった。
このままここに居ては不味い。そう判断し、部屋から出ていこうとしたが……。
「待て……っ」
「な、何スか……」
サソリの前を通りすぎようとしたが、その一言で動けなくなったオビト。
沈黙がやけに長く感じる。続く言葉を……期待してしまう。
「お前、言ってただろ……責任、取れよ……っ♡」
それは確かに、先程のオビトが口にした台詞で。
そして今のオビトには……あまりにも甘美な囁きだった。
「っしょ……しょうがないっスね……♡」
震えるオビトの声。それは緊張と、それから興奮のせい。
ぎこちなくサソリを抱き上げ、ベッドの上に寝かせるオビト。自分もマントを脱ぎ、畳む時間すら惜しくて適当に放る。ついでに手袋も取ってしまった。
サソリの右足に跨がるようにして覆い被さったオビトは、その薄い胸に両手を添わせた。
忍だが傀儡躁演者であるサソリは、他の者と比べて筋肉量が少なく華奢だ。そんな男の貧相な胸だというのに、しっとりと肌理の細かい肌に触れるだけで昂ってしまう。
「っあ……♡」
すっかり硬くなった乳頭を手の平で押し潰すように触れられ、上擦った声がサソリの口から漏れる。同時にとろとろ♡と母乳が溢れてオビトの手を濡らした。
「ふぅ♡ア♡う♡♡」
熱い手がサソリの僅かな胸筋を揉む。その動きは、段々と大胆になっていった。インナーの大きな網目が胸の頂に擦れ、その度にサソリは短く嬌声を上げる。
サソリの脳内は、媚薬のせいで早くも蕩け始めていた。オビトから与えられる快楽は薬によって増幅されていることもあり、今まで感じたどんな性感より気持ちがいい。
夢中になってしまいそうだったが、サソリの僅かに残った理性とプライドがそれを許さない……だが、止められるのはもっと嫌だった。
サソリのそのインナーが邪魔に思えてきたオビトは、指を引っ掛けてそのまま引き裂く。
(だってこのままだと、おっぱい……を絞れないからな……っ♡)
誰にともなく言い訳を頭の中だけで呟きながら、インナーの残骸を性急に取っ払う。
漸く完全なるお披露目を果たした乳首。色づいたそのひとつを指で摘まめば、それだけでぴゅっ♡と乳白色の温かな液体が飛び出した。
「ア♡♡っふうぅっ♡♡♡」
一層高い声が上がる。待ち焦がれていた刺激に、大きな反応を見せてしまったサソリ。快楽の痺れがその全身を襲う。
「あれ、サソリさん……そんなに気持ちよかったんですか?♡」
「あ、っ……♡♡ちが……っ♡」
否定しながらも、違う筈がないのはサソリ本人が一番よく分かっていた。羞恥で身体が熱くなり、足を閉じようとして両太股でオビトの脚を挟み込んでしまう。
その様子を特等席で眺めながら、今度は親指と人差し指で濡れた飾りをくに♡と摘まみ、感触を楽しむようにこりこり♡刺激するオビト。
「っきゃうぅ♡♡♡」
「っわ、」
少し強い力で乳頭を摘まめば、その拍子にぷしゃあっ♡と勢いよく母乳が噴き上がり、それはオビトの面を汚した。
驚きに目を見開いたオビトだったが、それはすぐに細められる。
「ハハ、サソリさんのおっぱいに顔射されちゃいましたよぉ……あ、これ甘いんスね」
面で隠されたオビトの顎や唇にまで付着した母乳。試しに舌で舐め取ってみればそれは、仄かに甘くてまるでミルクのようで。
そこでオビトに悪戯心が湧いた。仮面を軽く上にずらし、口元を露出させる。
「あ……っ♡」
それに反応したのはサソリだ。謎に包まれた暁見習い、その姿の片鱗をこんな形で見ることになるとは思わなかった。勿論それだけではなく……期待に息が荒くなる。
サソリの反応に口端を上げたオビトは、その胸の飾りに口を寄せた。自分を蕩けた目で注視しているサソリに見せつけるように、殊更ゆっくりと……舌で乳首を舐め上げる。
「っあ♡♡アーっ♡♡♡」
予想と違わない強い快感に、サソリは歓喜の声を上げた。舌で乳頭が潰される度に、ミルクを漏らして悦がってしまう。その優しい刺激だけで……達してしまいそうだった。それぐらいサソリの性感は高められていた。
「はぁ……っ♡」
同じようにオビトも興奮しきっていた。普段の気位の高いサソリからは想像もつかない痴態、その可愛らしさと艶やかさに……虜になってしまいそうだった。いや、最早手遅れなのかもしれない。
「っふ♡♡あ♡あぁッ♡♡♡」
オビトが尖りきった先端を咥え、吸い上げれば口の中に溢れるミルク。その度にサソリが上げる甘い悲鳴。官能を掻き立てられたオビトは、まるで赤子のように夢中になって母乳を飲み下した。
「あ、っひ♡♡♡だめ♡♡なんかクるっ♡♡♡」
「へ、」
「ぅやっ♡♡♡ア、あぁ~~~~~ッッ♡♡♡♡」
身体を震わせ、歓喜の声を上げるサソリ。見開かれた瞳が揺れる。
その厭らしさにオビトは仮面の下で瞠目した。
ふるふると震える乳首から口を離し、面を元の位置に戻すオビト。上がる口角を抑えられなかった。
「おっぱいだけでイっちゃったんスか?♡」
「イ、った……?♡」
揶揄うようなオビトの台詞に、サソリは思わず肘をついて上体を起こす。そして己の陰茎に視線を向けるが、勃起こそしていれど射精した感覚はない。達した直後特有の倦怠感もなく、身体はまだ火照ったままだ。
(可愛いしエロいし……クソ……っ)
元々幼い顔立ちのサソリが無防備に首を傾げていると、あどけなさが倍増する。はふはふと一生懸命に息をするその姿は、あどけなさと色香が共存していて……オビトはとっくに勃起している自身の陰茎が、硬さを増すのを感じた。
(絶対にコイツで童貞卒業してやる……っ!)
闘志を燃やしつつ、しかしどうするかと頭を巡らせるオビト。手遊びのようにサソリの乳首を軽く摘まんだり、指先で転がしたりと僅かな刺激を繰り返す。
それだけでは当然足りなくて……焦れたサソリは。
「なーにしてるんスか?♡」
「あぅ……♡♡だってぇ……♡♡♡」
己の勃起をオビトの足に擦り付け始めたサソリ。指摘され口ごもるが、カクカク♡と拙く腰を動かすことは止めない。
「オレが責任取るって言ったのは、おっぱいのことだけなんスけど」
「あう……っ♡♡頼む、コッチもっ♡♡♡」
加虐心からつい意地悪を言うオビトに、サソリは眉を下げて乞うた。ずっと放置されていたサソリの陰茎は、もう限界だった。
張り詰めたそれを一刻も早く触って、欲液を吐き出して、気持ち良くなりたい。想像しただけでサソリの屹立は震え……先走り汁が溢れて下着を汚した。
(早く、はやく……っ♡♡♡)
「っん♡♡うぅっ……♡♡♡」
「あ、コラ……っ♡」
焦れったくて自分で触り始めようと下半身に手を伸ばしたサソリ。オビトはその腕を掴んでそれを阻止した。
プライドの高いこの男が自分から……公開オナニーを始めようとするなんて。それほどまでに切羽詰まっているのだろう。それなら、と新たな思い付きを口にするオビト。
「しょ~がないですねぇ、じゃあサソリさんがオネダリできたら触ってあげますよ♡」
「っ、おねだり……?♡」
きょと、と惚けたような顔をするサソリを今すぐに犯し尽くしてやりたくなるオビトだが、鋼のような理性でそれに耐える。
「フー……♡そうっス、どこを触ってほしいのか……オレに教えてください♡」
「あ、ぅ……♡♡どこ、って……っ♡♡♡」
含羞の色に頬を染め、固まるサソリ。まさかそんな事を言われるなんて、初めての事に戸惑う。
しかし欲には勝てず……おずおずと口を開いた。
「っ、オレの……ちんこ、」
「おちんぽ、ね♡」
「ぉ、おちんぽ、っ♡トビの手で、さわってくださ……っ♡♡♡」
より卑猥な単語を素直に復唱し、更には教えられていないにも関わらず敬語になるサソリ。オビトはそれに征服欲が満たされるのを感じた。サソリが呼ぶ名前が、本当の名でないことが惜しく思えるほどに……。
下穿きごとズボンを下ろして脱がせ、サソリを丸裸にするオビト。ぷるん♡と飛び出したサソリの陰茎は、肌と同じように白く、しかし亀頭は充血してピンク色に染まっていた。
「かぁわいいおちんちんですね~♡」
「あう……っ♡♡♡」
子どものように小さな性器が一生懸命に勃起し、先端からトロトロと先走りを垂らしている様子は非常に可愛らしく……扇情的だった。
オビトが先っぽを指でつつくだけで、ビクビクと身体を震わせ快感に耐えるサソリ。それに構わず、オビトは……二点攻めを開始しようと手を伸ばす。
「やっ♡♡いっしょだめ♡♡♡」
「でもおっぱいも搾らないと治んないですよ?」
サソリの拒否は、オビトの尤もらしい台詞で一蹴されてしまう。
再びサソリの乳首を手で刺激しながら、彼の屹立をもう片方の手で包むオビト。数回扱いてやるだけで、熱く昂ったそれは瞬く間に限界を迎えた。
「らめ♡♡♡すぐイっちゃ♡♡♡あ、ッ~~~~~!♡♡♡♡」
声にならない悲鳴と共に……サソリは果てた。五感が宙に浮くような、身体の芯を蕩かすような法悦に、全身が痙攣をさせる。
サソリの陰茎から迸る精液。ぴゅっぴゅ♡とサソリの薄い腹を汚したそれは、しかし。
「サソリさん、精液よりおっぱいの方が出てませんか?♡」
「うぅ……っ♡♡♡」
サソリの射精量はその性器の大きさに見合ったものだったが、母乳はその倍は出ていた。しかも弄っていない方の乳首まで……。
それを指摘され、通常なら羞恥や屈辱を感じるだろう。勿論サソリだってそうだ。だがそれだけではなく……サソリは、馬鹿にするようなオビトの台詞に――下腹を疼かせていた。
(なんだこれ……っ♡♡♡なんで♡♡いやなのに♡♡♡嫌なこと、言われてるはずなのに……っ♡♡♡♡)
きゅん♡きゅん♡と痺れに似た熱がサソリの下腹部に集まる。身体の
完全に発情しきったサソリを目の当たりにして、オビトは仮面の下で歪な笑みを浮かべる。
(これなら……っ♡)
服を脱いだオビト、その右上半身の大部分は柱間細胞だ。白く染まっている肌に、サソリは目を見開きはすれど何も言わなかった。
サソリの脚の間に移動したオビトは、その膝を曲げさせる。そして指に付着したサソリの精液に、母乳を足し……サソリの秘められた孔へと、その指を伸ばした。
「っ、?♡なに……っ♡♡」
「だ~い丈夫ですよぉ! もっと気持ちヨくしてあげますからねぇ♡」
サソリのアナルを指で解しながらオーバーなリアクションでそう言うオビトに、訳も分からずコクリと頷くサソリ。無防備なその姿にクラつきながらも、オビトは……まずは一本、指を差し入れる。
「ア、っ♡♡♡」
少ない性知識を総動員し、解すという答えに辿り着いたオビトだったが……その必要すらなかったようだ。媚薬の効果は絶大で、既に蕩けきったアナルはヒクヒク♡物欲しげにオビトの指を締め付ける。
「っふ、ぁ♡♡♡あぁっ♡♡♡」
オビトが指を増やしてナカを掻き混ぜてみれば、嬌声を上げて悦ぶサソリ。
物欲しげに収縮するソコに、オビトは……痛いぐらい勃起した己の一物を添えた。その肉茎は、長さも太さもサソリのものとは比べ物にならないぐらい大きいが……サソリは今から何をされるのか全く気付いていない。
先端同士が触れ合って、くちゅ♡と卑猥な水音が鳴る。
「ふ、ぁ?♡♡」
「もっともーっと、ミルク出しましょーね♡」
仮面の向こうで、オビトの眼がニンマリと笑う。
何かがおかしい、そんな気がするのに……蕩けきったサソリの頭ではもう、気持ち良くなること以外……何も考えられなくて……♡
「ぅ、あぁぁぁ~~~っ♡♡♡♡」
サソリの返事を待たず、逸物がゆっくりと挿入されていく。圧倒的な物量でナカに押し入られ、前立腺を押し潰されて……サソリは堪らず気をやってしまう。
ぴゅっ♡ぴゅっ♡と先程より薄く量も少ない吐精。同時に、弄っていない乳首からもミルクが噴き出す。
「っ……♡挿入だけでイったんですかぁ?♡」
(ほ……っ、本当に、サソリで……童貞喪失しちまった……♡)
サソリを煽るような台詞を吐くオビトだが、その実余裕なんてものはなかった。うねって搾り取ろうとしてくる隘路、その温かい粘膜の襞に包まれて……眩暈のするような快楽がオビトを襲う。
「あ……っ♡♡♡♡ひ、っう……♡♡♡♡♡」
それはサソリも同じで。イったばかりなのに、動いていないのに……ナカに挿入されているだけで気持ちいい。まるで底のない沼に沈められていくような深い官能。ないはずの子宮が疼き、その度に
「クソ……っ、一回、出しますよッ……!♡」
「待、っああぁっ!♡♡♡♡」
遂に耐えられなくなったオビトは、律動を開始した。乱暴にサソリを揺さぶり、穿つように腰を打ち付ける。
そして、そのまま。
「イ……っく……!♡♡」
「あ゛、っ♡♡♡ヒぃっ♡♡♡♡イっひゃ、イっひゃうぅぅ♡♡♡♡♡」
オビトは初めて、雌孔での絶頂を得た。それはあまりにも強い快感で、目の前がチカチカ明滅する程。
サソリのナカで熱が爆ぜる。体腔に精を注がれ、オビトと同じように法悦を感じると同時に……サソリは充足感で満たされる。
(お……っ♡♡男の、ちん……おちんぽ突っ込まれて、中出しされて……っ♡♡♡それなのに、なんで……♡♡♡♡)
どうして、こんなに幸せだと感じるのか――。
昇り詰めた後の浮遊感の中で生まれたサソリの疑問は、しかし大きな手で思い切り腰を掴まれたことにより雲散霧消する。
「はーっ♡はーっ♡あ゛ー……気持ち良すぎ……っ♡♡」
「ぅ゛♡♡あぁ♡♡♡奥ぐりぐりだめぇっ♡♡♡♡♡」
ナカに出された精子を塗り付けるように最奥を捏ねられ、ぴゅ♡と母乳をお漏らしするサソリ。彼の真っ赤に腫れた陰茎の先端からは、絶えず欲望の雫が垂れていた。
オビトの剛直は、一度射精しただけでは治まらず……未だに硬度を保ったままだ。散々サソリの痴態を見せつけられては当然とも言えるだろう。
「っあぁんっ♡♡♡ひあぁっ♡♡♡♡」
その鮮やかな赤色の髪を振り乱して快楽に酔うサソリ。オビトはその淫靡な表情を眺めながら、ゆっくりとした抽挿で追い立てる。
焦らすような緩い刺激に、耐えられなくなったサソリは。
「うぅ♡♡おっぱ♡♡おっぱいもしてぇ♡♡♡♡」
「ッ!♡しょーがないですねぇ♡♡」
玉のような汗を浮かべ、熱に浮かされた顔で、胸を突き出して……オビトに乳首への刺激をねだった。
そのあまりにも倒錯的な光景に、オビトは眩暈を覚える。興奮で自然と息が荒くなってゆく。
(あのサソリが、自分からこんな……ッ♡♡)
「ぅあ♡♡♡オビトのおちんぽ、おっきく……♡♡♡♡」
「ッ♡煽んのも、いい加減にしろよ……っ!♡♡♡」
淫語を口にし続けるサソリに、堪らなくなったオビト。腹いせとばかりに、尖った乳首を軽く引っ張りながら抓る。
「ぅあ゛♡♡♡♡しょれきもちっ♡♡♡♡あ゛ぁ゛~~~~っ♡♡♡♡♡」
強い刺激、待ち望んだ快楽にサソリは……喉を晒し無様にイった。摘ままれた乳首からぷしっ♡とミルクが溢れる。
そこでオビトは気付いた。最初の頃より母乳の量が減り、勢いは弱まっていることに。この様子で絞ってやれば、やがて止まるだろう。
しかし、今更この交合を止める気は……オビトにはなかった。
最早サソリの為に、という建前はオビトの頭の中から消え去っていた。美しい顏を快楽に歪めるこの男を、もっと啼かせたくて仕方がなかった。
「上手にオネダリできて偉いですね~♡」
「ぁ、う……♡♡♡」
息を切らせてシーツの上で力なく横たわっているサソリ。オビトはその頭を撫でた。本人こそ気付いていないが、その声は甘く優しい。
オビトに褒められ、撫でられて……サソリは多幸感でいっぱいになる。
(っ、なんだ、これ……♡♡♡)
両親を亡くしてからずっとサソリの心を占めていた空虚。それが、決して満たされないと思っていた空洞が……満たされていくような。
もっとして欲しくなったサソリは、オビトの手に擦り寄る。
(可愛い……っ♡)
オビトは息を詰まらせた。胸が締め付けられて痛い。変な音が鳴っている気さえした。
この胸の高鳴りは、あの少女にしか感じなかった筈なのに。心が乱される……冷静に、なれない。
衝動に駆られたオビトは、太い面紐で目元を隠すようにして仮面を右側へ移動させ、更に隙間から視界を確保するために少しだけ上にずらした。
素顔の殆どを晒すようなオビトの行動に、サソリの表情が驚きに染まる。彼に何か言われる前に、オビトはその唇を自分のもので塞いだ。
「ン……っ♡」
「ぁ、んぅっ……♡♡」
ぎこちない口付けだった。舌を絡め合い、互いにとって初めての接吻を堪能する。
深いキスを交わしながら……オビトは律動を再開した。
「んうぅ~~~っ♡♡♡♡っは♡♡♡あぁっ♡♡♡♡」
「ぁ♡っは、スゴいな……♡♡」
貪るようにオビトの怒張に吸い付き離れようとしない、サソリのナカ。熱い肉襞に絡み付かれ、オビトは思わず吐息を漏らした。
弄くられすぎて真っ赤に腫れた胸の頂が視界に入り、尖ったソコも忘れずに可愛がってやる。
「あ゛っ♡♡♡ちくびらめぇっ♡♡♡♡」
「何がダメなんだ、こんなにイっておいて♡」
「それやばいぃ♡♡♡♡きもちよすぎるうっ♡♡♡♡♡」
よがり狂うサソリ。そのイヤらしさに視覚を刺激され、生唾を呑んだオビトは……一層結合を深めていく。
激しくなった律動、そのせいで。
オビトの顔横に辛うじて引っ掛かっていた仮面が――外れた。
「っあ……♡」
落ちた面が鈍い音を立てる。
ついに露になったオビトの素顔、その全体像に、サソリは息を呑んだ。
黒髪に黒い瞳の、精悍な顔つきをした男だった。皺のような傷跡や閉じられたままの左目が気になるが、それらを差し引いても整った顔立ちをしている。歳は二十代後半ぐらいだろうか。自分より確実に年下だろうことは間違いない。
そしてこの雄は、自分を求めている……こんなに必死になって。
我を忘れて、サソリはオビトの顔に見惚れる。――愛おしいと、そう思ってしまった。
(やっ……て、しまった……っ)
対してオビトは、動きを止めた。背中を冷たい汗が伝う。
夢中になりすぎた。しかも顔を見られてしまった。隠し通さなくてはならなかったのに。どうする……。いっそ、ここで。
ある極端な結論に達しそうなオビトの思考を止めたのは、他でもないサソリだった。
「トビ……っ♡」
「っ……」
とろりと甘やかに細められたサソリの目。ゆっくりと持ち上げられた左手がオビトの頬に……そこにくっきり残った痕に触れる。
何よりも優しく、熱い手だった。オビトはその一挙一動全てから目が離せなくなる。
「止めんな、よ……っ♡♡♡もっと……♡♡」
「っく、ァ……♡♡」
オビトの頭を引き寄せたサソリは、その唇に口付けた。深い深いキスをオビトに施す……己の熱を、感情を分け与えるように。
そうしながらサソリは、意識的にナカに埋められたままの陰茎を締め付ける。引き絞られるような刺激に、萎えかけていたオビト自身が力を取り戻していくのを感じ……うっそりと笑った。
(あぁ、コイツは……っ♡)
肉襞が媚びるように纏わりついてくるのを感じ、オビトは再び熱くなった息を吐く。自分の行動を正当化しながら。
そうだ、もうここまで来てしまったのだから……後戻りはできない。それなら……。
「オビトって、呼んでくれ……ない、か」
黒髪の男が零した言葉。それは十年以上名乗っていなかった己の本名だった。捨てた筈の自己。それを開示することに、声が震える。
「っ、うん……♡♡♡オビト、オビ、っあぁ!♡♡♡♡」
サソリが頷き、名前を呼んだ途端に……再開された腰使い。一際大きな声を上げたサソリ、その唇にオビトがかぶりついた。
二人の男はただ肉欲に溺れる。互いを求め、混ざり合い、そして――。
「っはぁ♡♡サソリ……っ♡」
「オビトぉ♡♡♡っイイ♡♡♡♡気持ちイイのぉ♡♡♡♡♡」
名を呼ばれた事で、最後の理性すらかなぐり捨ててしまったオビト。抉るような律動でサソリを追い立て、自身の性感を高めていく。
サソリは射精することしか考えていないオビトのピストン運動に背筋を震わせた。男の欲をぶつけられることが嬉しいと、そう感じてしまう。
「サソリ……っ出すぞ♡全部受け止めろ♡♡」
「っうん♡♡♡♡ナカ♡♡♡♡ナカに出してぇっ♡♡♡♡♡」
やがて限界を迎えたオビト。サソリはその台詞を聞いて、自分の脚をオビトの腰に絡める。一滴残らず、注いでもらうために。
「っイ゛、ぐぅ……っ!♡♡♡」
「ア、っっ~~~~~!!♡♡♡♡♡♡♡」
きつく目を閉じたオビトは、最奥に思い切り精を放つ。そうして何度も何度も白濁を吐き出した。
サソリは熱い奔流を感じ、その度に身体を痙攣させる。今までにない法悦、想像を絶する快楽……到底耐え切れなるものではなかった。そして……。
「ォ゛……っ…………♡♡♡♡♡」
強張っていたサソリの身体から力が抜ける。その意識は白一色に塗り潰され……彼はそのまま気を失った。
オビトは肩で息をしながら、ゆっくりと己の陰茎をサソリの孔から引き抜いた。ゴポリと音を立てて、ベッドに精液が垂れる。
「っ……はぁ」
大きく息を吐いたオビトは、サソリの隣に寝転がった。熱を持った身体に、冷たいシーツの感触が心地良い。
サソリの顔を眺めるオビト。美しくあどけない顔付きの男は、オビトの気など知らず意識を絶っていた。
(……やっちまった……)
オビトは頭を抱えたい気分になる。一時の昂りに身を任せすぎた。
しかし……もう、戻れはしない。肉欲を、身体を重ねる心地よさを……空いた穴を埋める存在を、知ってしまったのだから……。
サソリの頬を指でなぞる。そこから伝わる温もりを、手放そうとは思えなかった。
立ち上がり、その身体をシーツに包んで抱き上げたオビト。サソリにひとつキスを落とした彼は……共に夜闇へと姿を消した。
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