短編集

 


 ※ 男性妊娠
 ※ 倫理観×かも





 何故、どうして――こんな事に。
 好き勝手に揺さぶられながら、サソリは後悔の念と共に空気を吐き出した。

「出すわよ……ッ」

 サソリの上に覆い被さっている大蛇丸が、耳元でそう囁く。サソリが感じるのは、嫌悪と恥辱だけ。
 ここは、大蛇丸のアジトの内のひとつ。
 大蛇丸の手に堕ちたサソリは、その一室で……毎晩、辱しめを受けていた。

「っ、ハァ……」
「ぅ、っ……」

 ナカに液体が広がる感覚に、サソリは小さく呻き声を漏らす。サソリの後孔に精を放った当の本人……大蛇丸はそれを意にも介さず、自らの逸物をサソリから引き抜いた。
 サソリが拐われ、術で意識を失っている間に何処かを改造され……夜毎大蛇丸に犯されるようになって二月近く経った。
 鎖でベッドに繋がれ、ただ屈服させられる。痛みや快楽を感じないサソリにとっては、苦痛なだけの時間。
 サソリには勝手に手を入れられた感覚はある。仮にも自らの躯だから、生じている違和感には気付いていた。なのに、それが何処なのか判らない……大蛇丸に聞いても、何の答えも返ってこない。

「フフ……また明日ね」
「……死ね」

 サソリが罵倒しても大蛇丸は笑うだけだ。それがサソリにとっては気味が悪かった。抵抗しようと無駄だと、そう言われているようだった。



 ある時。珍しく昼間に大蛇丸がこの部屋へ来た。

「妊娠してるわよ、アナタ」

 開口一番サソリが吐かれた台詞。
 ――…何を言われているのか、まるでわからなかった。

「は……?」

 サソリは笑おうとした。何の冗談だと。下らねぇことを言うなと一蹴してやりたかった。
 けれど。

「フフ……っ、まさか本当に、上手くいくなんてね……」
「嘘、だろ……?」
「いいえ、本当よ」

 差し出された写真。それは超音波所見……所謂エコー検査によるもの。
 そこには、黒い楕円状のナニカが写っていて。自分の知識が正しければ――…。

「嫌……嫌だ、いや、ッ」

(こども? オレが? この身体で、どうやって?)

 譫言の様に同じ台詞を繰り返すサソリ。疑問に身を震わせる彼の脳裏を過るのは、大蛇丸が施した……己への改造。

「あぁ、やっと気付いたの?」

 暴れることもできず愕然とするサソリに、大蛇丸は零れる笑みを隠しきれない。
 この毒蛇がサソリの……人傀儡の身体に造ったのは――子宮。
 これで、この美しい傀儡人形は自分のモノになった。愛の結晶も無事に出来た。
 ……後は、心だけ。

「産まれてくるのが楽しみね」

 絶望し怯えるサソリを、大蛇丸はきつく抱き締める。そして薄らと笑った。




 
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