短編夢まとめ
『この街に見窄らしい人間なんていらないんだよ!』
そう言って容赦なく、オレに対して刃を向けてきた貴族の人間がいた。まだバンカーとしての力が覚醒していなかったオレは……チェリーを両手で抱き締めて、ただただ震えて奮われる暴力に耐え忍ぶしかないと、そう思っていた。
「邪魔です。私の道を塞がないでくださいます?」
それを、お前は変えたんだ。恐怖で強く閉ざしていた瞼を開けたら、一人の女のバンカーが、オレをまるで守るみたいに、オレの前に立ってくれていた。他の人間がオレに容赦なく向けて来る、奇異の視線から庇うように。
『ヒッ……!!な、なんだよお前……!このぼくを、誰だと思って……!!』
「そんなこと知る必要などありませんし、興味もありません。とにかく、こんなところで騒ぎを起こし、通行の邪魔をしないでください。……さっさと退かなければ、私の槍で貴方を退かすだけです」
女がそう脅すと、オレを虐めていた貴族の男は怯んで、情けない悲鳴を上げながら立ち去っていった。女の冷たい視線と空気感に圧倒されたのか……周りの人々もたちまちに何処かへと散っていく。
「すげえ……!」
女はたった一瞬で、オレのことを助けてくれた。救ってくれた。オレはこの先……一生、この日のことを忘れないと思う。
「……まったく、この街の人々はくだらないことでよく騒ぐ……。さっさと次の街へ移動しなければ」
「! ま、待てよ!!」
女はオレのことにも目も暮れず、とっととその場から立ち去ろうとしてしまう。オレはそれがなんとなく嫌で、女の手を掴んで引き留めてしまった。
「っ?! ……なんですか、きみは。まだ逃げていなかったのですか?」
「逃げるわけねえだろ! その……オレのこと、助けてくれたんだからさ。お礼くらいさせろよ」
「……私はきみを助けた覚えなどありませんし、礼などいりません。それよりも、私から手を離しなさい」
「やだ!」
オレが駄々を捏ねてくるなんて思っていなかったのか、女は少し困ったように眉を下げている。その様子は、さっきまでの冷徹なバンカーとは真逆の印象に思えて……かわいかった。
「……私なんかに触れては、きみは呪われてしまいますよ。私は悪い魔女ですから」
「そんなの知らねえ! つーか、あんたのどこが悪い魔女なんだよ?! オレのこと助けてくれたじゃん!」
「だから、助けた覚えなどないと言って……」
「あんたが助けた覚えなんてないって言ったって、オレはあんたにお礼をするまで絶対離れてやらねーから!」
ぎゅ!とオレは女の手を強く握って、絶対に離れないと強く意思表示をする。……本当に嫌だと思うのなら、女はオレの手を容赦なく払い除ければいいだけの話なのだ。そうしない辺り、この女の人はやはり優しいのだろう。
「……きみのような子どもが、私に対してどんな礼ができるというのです。私は子どもの相手をするほど暇じゃありません」
「オレもバンカーってのになるんだ! だから、禁貨を集めたら……あんたにも分けてやるよ!」
「自分で集めたほうが早いので必要ありませんし、子どもから禁貨を集ろうなんて思っていません」
「ぐっ……! じゃ、じゃあ……! オレ、あんたの身の回りの世話手伝う!!」
「私は召使いなど必要としていません。……いいから、この手を離してください」
女はオレの提案を尽く却下して、自分から離れろと言ってくる。オレはそれが……どうしても嫌で、寂しかった。視界がじわじわと滲んできて、地面にぽたぽたと雫が零れ落ちていく。
「……!? な、なぜ泣いて……」
「やだ!! ぜってー離さねえ!!オレは……オレはあんたのそばにいたいんだよ!! ちゃんと役に立つから……オレをあんたのそばにいさせろ!!……もう、ひとりぼっちは……いやなんだよ……」
カッコつかねえことなんか分かっていた。けれど、こうでもしなければ女が本当にオレのことを省みずどこかに行っちまいそうだったから……オレは駄々を捏ねまくって、女の情に訴え掛けたのだ。ズルいことをしているのは分かっていたが……どうしても、この女の傍にいたかった。離れたくなかったんだ。
「……はあ、仕方ありませんね。もう勝手に着いてきなさい。その代わり、私の足手まといになるようならば容赦なく置いていきますから」
「……! うん、わかった! オレ、ちゃんとあんたの役に立つから!」
「期待なんかしていません。……まったく、道に迷わなければこんなことには……」
女は仕方なさそうに溜め息を吐きつつも、ちゃんとオレの手を握ったままでいてくれていた。それが嬉しかったし、やっぱりこの人は優しいんだって……オレは確信した。
「オレ、レモネードっていうんだ! あんたの名前は? 教えてくれよ!」
「…………ニコラシカ」
「ニコラシカ! これからよろしくな! あ、ちなみにオレの腕の中にいるコイツはチェリーってんだ! オレの相棒で生きてる貯金箱!」
「ピューイ!」
「聞いてもいないのにべらべらと……うるさい子どもですね」
ニコラシカはぶっきらぼうに言いつつも、オレの言葉に律儀に反応を返してくれた。それが本当に嬉しくて、オレは……生まれて始めて、心に暖かいものが、芽生えたような気がしていた。
そう言って容赦なく、オレに対して刃を向けてきた貴族の人間がいた。まだバンカーとしての力が覚醒していなかったオレは……チェリーを両手で抱き締めて、ただただ震えて奮われる暴力に耐え忍ぶしかないと、そう思っていた。
「邪魔です。私の道を塞がないでくださいます?」
それを、お前は変えたんだ。恐怖で強く閉ざしていた瞼を開けたら、一人の女のバンカーが、オレをまるで守るみたいに、オレの前に立ってくれていた。他の人間がオレに容赦なく向けて来る、奇異の視線から庇うように。
『ヒッ……!!な、なんだよお前……!このぼくを、誰だと思って……!!』
「そんなこと知る必要などありませんし、興味もありません。とにかく、こんなところで騒ぎを起こし、通行の邪魔をしないでください。……さっさと退かなければ、私の槍で貴方を退かすだけです」
女がそう脅すと、オレを虐めていた貴族の男は怯んで、情けない悲鳴を上げながら立ち去っていった。女の冷たい視線と空気感に圧倒されたのか……周りの人々もたちまちに何処かへと散っていく。
「すげえ……!」
女はたった一瞬で、オレのことを助けてくれた。救ってくれた。オレはこの先……一生、この日のことを忘れないと思う。
「……まったく、この街の人々はくだらないことでよく騒ぐ……。さっさと次の街へ移動しなければ」
「! ま、待てよ!!」
女はオレのことにも目も暮れず、とっととその場から立ち去ろうとしてしまう。オレはそれがなんとなく嫌で、女の手を掴んで引き留めてしまった。
「っ?! ……なんですか、きみは。まだ逃げていなかったのですか?」
「逃げるわけねえだろ! その……オレのこと、助けてくれたんだからさ。お礼くらいさせろよ」
「……私はきみを助けた覚えなどありませんし、礼などいりません。それよりも、私から手を離しなさい」
「やだ!」
オレが駄々を捏ねてくるなんて思っていなかったのか、女は少し困ったように眉を下げている。その様子は、さっきまでの冷徹なバンカーとは真逆の印象に思えて……かわいかった。
「……私なんかに触れては、きみは呪われてしまいますよ。私は悪い魔女ですから」
「そんなの知らねえ! つーか、あんたのどこが悪い魔女なんだよ?! オレのこと助けてくれたじゃん!」
「だから、助けた覚えなどないと言って……」
「あんたが助けた覚えなんてないって言ったって、オレはあんたにお礼をするまで絶対離れてやらねーから!」
ぎゅ!とオレは女の手を強く握って、絶対に離れないと強く意思表示をする。……本当に嫌だと思うのなら、女はオレの手を容赦なく払い除ければいいだけの話なのだ。そうしない辺り、この女の人はやはり優しいのだろう。
「……きみのような子どもが、私に対してどんな礼ができるというのです。私は子どもの相手をするほど暇じゃありません」
「オレもバンカーってのになるんだ! だから、禁貨を集めたら……あんたにも分けてやるよ!」
「自分で集めたほうが早いので必要ありませんし、子どもから禁貨を集ろうなんて思っていません」
「ぐっ……! じゃ、じゃあ……! オレ、あんたの身の回りの世話手伝う!!」
「私は召使いなど必要としていません。……いいから、この手を離してください」
女はオレの提案を尽く却下して、自分から離れろと言ってくる。オレはそれが……どうしても嫌で、寂しかった。視界がじわじわと滲んできて、地面にぽたぽたと雫が零れ落ちていく。
「……!? な、なぜ泣いて……」
「やだ!! ぜってー離さねえ!!オレは……オレはあんたのそばにいたいんだよ!! ちゃんと役に立つから……オレをあんたのそばにいさせろ!!……もう、ひとりぼっちは……いやなんだよ……」
カッコつかねえことなんか分かっていた。けれど、こうでもしなければ女が本当にオレのことを省みずどこかに行っちまいそうだったから……オレは駄々を捏ねまくって、女の情に訴え掛けたのだ。ズルいことをしているのは分かっていたが……どうしても、この女の傍にいたかった。離れたくなかったんだ。
「……はあ、仕方ありませんね。もう勝手に着いてきなさい。その代わり、私の足手まといになるようならば容赦なく置いていきますから」
「……! うん、わかった! オレ、ちゃんとあんたの役に立つから!」
「期待なんかしていません。……まったく、道に迷わなければこんなことには……」
女は仕方なさそうに溜め息を吐きつつも、ちゃんとオレの手を握ったままでいてくれていた。それが嬉しかったし、やっぱりこの人は優しいんだって……オレは確信した。
「オレ、レモネードっていうんだ! あんたの名前は? 教えてくれよ!」
「…………ニコラシカ」
「ニコラシカ! これからよろしくな! あ、ちなみにオレの腕の中にいるコイツはチェリーってんだ! オレの相棒で生きてる貯金箱!」
「ピューイ!」
「聞いてもいないのにべらべらと……うるさい子どもですね」
ニコラシカはぶっきらぼうに言いつつも、オレの言葉に律儀に反応を返してくれた。それが本当に嬉しくて、オレは……生まれて始めて、心に暖かいものが、芽生えたような気がしていた。
