短編夢まとめ

 オレのことを優しく受け止めて、柔らかで暖かな笑みを浮かべて見つめてくれるニコラシカを前にすると、ささくれだっていた心が癒やされていくのが分かる。オレを見る人間達は、誰もが冷たい視線を容赦なく浴びせてきたのに……ニコラシカだけは違った。愛してるとか、大好きって言葉をたくさん、たくさんオレに惜しみなく与えてくれる。

 それがとっても嬉しかったのは事実なのに。オレはやっぱり、どうしようもなく不安な気持ちに襲われるんだ。

「……ニコラシカ、キスしたい」

 彼女の柔らかな頬に手を添えて、ねだってみる。すると彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながらも「……レモネードくんが望むのなら、いいですよ」って受け入れてくれた。
 どきどきと煩く高鳴る心臓を抑えつけながら、おそるおそる……ニコラシカの唇に自分の唇を重ねてみる。あまくて、やわらかなそれに触れたら……こころが不安でいっぱいになった。
 こんな簡単にいいですよって、オレのことを受け入れてしまう優しいニコラシカを……もし、他の奴に取られてしまったらどうしようって怖くなる。こんなに可愛くて、優しい彼女にはきっと……本当はオレなんかよりも相応しい人間の傍にいるべきだって、取り上げられてしまうんじゃないかって……怖くて、不安で仕方がなくなるんだ。
「……レモネードくん?」
 心配そうな面持ちで、オレを気に掛けてくれるニコラシカ。頭を撫でて、ぎゅっと抱き締めてくれる彼女の体温が酷く心地良い。
「ニコラシカ、オレが大人になるまで……誰のものにもならないって約束しろ」
 ワガママだって分かってる。こんなにもたくさんの愛情を与えてくれる彼女に、これ以上を望むなんて罰が当たるかもしれないことも知っている。だけど、それでもオレは彼女を誰にも渡したくなかった。ニコラシカは優しいから……絶対に、オレとの約束を破らずに守ってくれる。子どもじみてる我儘も独占欲も、ニコラシカは受け入れて。オレと言う存在に縛られてくれるだろうことを……オレはずるいから知っていたんだ。
「……もちろんです。私の全ては……レモネードくんのものですよ。きみが望んでくださる限り……私はきみの隣にいます」
 彼女の唇から確かに紡がれた言葉に、オレはやっと安心できたような気がした。
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