短編夢まとめ
経緯は省略するが、色々あってレモネードが子どもの姿になった。
「わ~!ほんとにレモネードがちっちゃくなってるぞい!」
「当たり前だけど、レモネードにもこんな時代があったんだな~」
「あ? てめえら誰だよ。気安くジロジロ見てくんじゃねえ」
「か、かわいくないぞい……」
ギロ、と子どもらしからぬ目つきで睨みつけてくるところで「あ、やっぱりレモネードだわ」と思うヤキソバとルッコラであった。姿形と精神が幼くなったところで、彼が放つ威圧感はいつもとほぼ変わらないように思える。
「レモネードくん、怖がらなくても平気ですよ!」
「ッ、ちけえんだよテメエ!」
そんな中で、ニコラシカだけはやはり、彼に対する態度は変わらなかった。小さくなったレモネードとの視線を合わせる為に屈んで、安心させるように微笑みかける。
「ごめんなさい、いきなり知らない人に囲まれたら怖いですよね……」
「ハア? オレがガキだからってなめてんじゃねえよテメエらなんか怖くもなんともねえ!」
そう言いつつも、ぎゅ……とチェリーを強く抱き締めている辺り、レモネードがこちらをかなり警戒していることは明白だった。
「レモネードくんが不安に思う気持ちは分かります。……簡単に、私達を信じてくださいとも言いません。だから、約束をします。私達はレモネードくんやチェリーさんに、決して酷いことをしないと」
その証に、指切りげんまんしましょう!と小指を差し出すニコラシカに、レモネードは面食らう。
「……変なやつ」
戸惑いがちに、ニコラシカの小指に自分の小指を絡めた。こんな子ども騙しのような約束の交わし方、普段ならば絶対に信じようだなんて思わないのに……不思議と。ニコラシカはちゃんと、交わした約束を守ってくれるだろうと、レモネードは思えたのだ。
***
「レモネードくん、何か食べたいものはありますか? 私、頑張って作っちゃいます!」
黄色いエプロンをその身に纏い、ニコラシカはレモネードに優しく問い掛ける。
「……別に、くいたいもんとかねえよ。あんたが食べたいやつでいい」
「そうですか? じゃあじゃあ、今日はカレーライスを作っちゃいます!!」
「……勝手にすれば」
少年となったレモネードにとって、他人から手料理を振る舞われるなど初めてだ。どう反応したらいいのか分からないようで……素っ気ない態度が目立つ。しかし、ニコラシカにとってはいつものことなので、気にした様子はなかった。冷蔵庫から次々と材料を取り出して、カレーライス作りに向き合い始める。
「~♪」
「……」
手際よく野菜の皮を剥いていくニコラシカを、レモネードはじい、と興味深そうに見つめている。それはそうだ。他人が、他ならぬ自分の為に料理を作ってくれるなんて……今のレモネードにとっては奇跡に近いような出来事なのだから。
「……おい、」
「わっ?! レモネードくん、あぶないですっ! 私、包丁持ってますから……レモネードくんに当たったら大変です! 怪我しちゃいますよ?」
「……わ、わりぃ……」
ばつが悪そうにしているレモネードに、「どうかしましたか?」と、ニコラシカは優しく微笑みながら訊ねる。何か、気になることでもあったのだろうか?
「……なんか、ねえの。手伝えるようなこと」
「え?!」
「なに驚いてんだ。……オレが手伝ったら嫌なのかよ」
「そんなことないです!! えへへ、レモネードくんとお料理できるの、とっても嬉しいです!」
ぱああ!と嬉しそうに笑うニコラシカに「大げさすぎだろ」とレモネードは素っ気なく言うが、彼女が心の底から喜んでいる様子に……不覚にもどきどきしていた。
「つか、カレー甘口で作るつもりかよ。子ども扱いすんな」
「私、カレーは甘口が好きで……レモネードくんは、もう少し辛いほうが好みですか?」
「……いや、それなら別にいい」
そんな会話を交わす二人を、ヤキソバとルッコラは眺めつつ、思う。
「普段のレモネードと比べ物にならねえくらい素直だな~」
「明日は槍が降るぞーい! というか、完全にニコラシカのこと好きなのが丸わかりだぞい!!」
普段もあれくらい素直になればいいものを……と、思わずにはいられない。まあ、普段の煙に撒いたような言い回しも、あれはあれで一周回って素直なのかもしれないが。
「レモネードくん、にんじんは小さめに切ったほうがいいですか?」
「だから子ども扱いすんな! あんたが作ったやつなら……ちゃんと食うし……」
カレーを食べる前に胸焼けしてしまいそう。カレーが完成するまで、ヤキソバとルッコラはずっと、二人のやり取りを聞く羽目になった。
「わ~!ほんとにレモネードがちっちゃくなってるぞい!」
「当たり前だけど、レモネードにもこんな時代があったんだな~」
「あ? てめえら誰だよ。気安くジロジロ見てくんじゃねえ」
「か、かわいくないぞい……」
ギロ、と子どもらしからぬ目つきで睨みつけてくるところで「あ、やっぱりレモネードだわ」と思うヤキソバとルッコラであった。姿形と精神が幼くなったところで、彼が放つ威圧感はいつもとほぼ変わらないように思える。
「レモネードくん、怖がらなくても平気ですよ!」
「ッ、ちけえんだよテメエ!」
そんな中で、ニコラシカだけはやはり、彼に対する態度は変わらなかった。小さくなったレモネードとの視線を合わせる為に屈んで、安心させるように微笑みかける。
「ごめんなさい、いきなり知らない人に囲まれたら怖いですよね……」
「ハア? オレがガキだからってなめてんじゃねえよテメエらなんか怖くもなんともねえ!」
そう言いつつも、ぎゅ……とチェリーを強く抱き締めている辺り、レモネードがこちらをかなり警戒していることは明白だった。
「レモネードくんが不安に思う気持ちは分かります。……簡単に、私達を信じてくださいとも言いません。だから、約束をします。私達はレモネードくんやチェリーさんに、決して酷いことをしないと」
その証に、指切りげんまんしましょう!と小指を差し出すニコラシカに、レモネードは面食らう。
「……変なやつ」
戸惑いがちに、ニコラシカの小指に自分の小指を絡めた。こんな子ども騙しのような約束の交わし方、普段ならば絶対に信じようだなんて思わないのに……不思議と。ニコラシカはちゃんと、交わした約束を守ってくれるだろうと、レモネードは思えたのだ。
***
「レモネードくん、何か食べたいものはありますか? 私、頑張って作っちゃいます!」
黄色いエプロンをその身に纏い、ニコラシカはレモネードに優しく問い掛ける。
「……別に、くいたいもんとかねえよ。あんたが食べたいやつでいい」
「そうですか? じゃあじゃあ、今日はカレーライスを作っちゃいます!!」
「……勝手にすれば」
少年となったレモネードにとって、他人から手料理を振る舞われるなど初めてだ。どう反応したらいいのか分からないようで……素っ気ない態度が目立つ。しかし、ニコラシカにとってはいつものことなので、気にした様子はなかった。冷蔵庫から次々と材料を取り出して、カレーライス作りに向き合い始める。
「~♪」
「……」
手際よく野菜の皮を剥いていくニコラシカを、レモネードはじい、と興味深そうに見つめている。それはそうだ。他人が、他ならぬ自分の為に料理を作ってくれるなんて……今のレモネードにとっては奇跡に近いような出来事なのだから。
「……おい、」
「わっ?! レモネードくん、あぶないですっ! 私、包丁持ってますから……レモネードくんに当たったら大変です! 怪我しちゃいますよ?」
「……わ、わりぃ……」
ばつが悪そうにしているレモネードに、「どうかしましたか?」と、ニコラシカは優しく微笑みながら訊ねる。何か、気になることでもあったのだろうか?
「……なんか、ねえの。手伝えるようなこと」
「え?!」
「なに驚いてんだ。……オレが手伝ったら嫌なのかよ」
「そんなことないです!! えへへ、レモネードくんとお料理できるの、とっても嬉しいです!」
ぱああ!と嬉しそうに笑うニコラシカに「大げさすぎだろ」とレモネードは素っ気なく言うが、彼女が心の底から喜んでいる様子に……不覚にもどきどきしていた。
「つか、カレー甘口で作るつもりかよ。子ども扱いすんな」
「私、カレーは甘口が好きで……レモネードくんは、もう少し辛いほうが好みですか?」
「……いや、それなら別にいい」
そんな会話を交わす二人を、ヤキソバとルッコラは眺めつつ、思う。
「普段のレモネードと比べ物にならねえくらい素直だな~」
「明日は槍が降るぞーい! というか、完全にニコラシカのこと好きなのが丸わかりだぞい!!」
普段もあれくらい素直になればいいものを……と、思わずにはいられない。まあ、普段の煙に撒いたような言い回しも、あれはあれで一周回って素直なのかもしれないが。
「レモネードくん、にんじんは小さめに切ったほうがいいですか?」
「だから子ども扱いすんな! あんたが作ったやつなら……ちゃんと食うし……」
カレーを食べる前に胸焼けしてしまいそう。カレーが完成するまで、ヤキソバとルッコラはずっと、二人のやり取りを聞く羽目になった。