短編夢まとめ

 あったかいご馳走も、甘くて美味しいクリスマスケーキも、サンタさんからのプレゼントも……何もかもが無縁だった幼少期を過ごしてきたけれど。
 昔、つらくて悲しかった分だけの幸せが……今の私に巡ってきたのだと、そう思えるのです。
 レモネードさん。貴方が……私の手を取ってくれたから。こんな私を、愛してくれるから。これ以上ないほどの幸せを、私はたくさんもらっているのです。
「今年もレモネードさんとイルミネーションを見れて……本当によかったです! しかも、おいしいショートケーキまで食べられるなんて……! 本当に、ほんとうに嬉しいです!」
「ケッ、毎年大袈裟すぎなんだよ」
 きらきらと輝いて、幻想的に彩られている街中を歩きながら……私はレモネードさんに感謝の気持ちを伝えた。「そんなに大したことしてねーだろ」と、レモネードさんは言うけれど……好きな人と一緒に、こんなにも幸せに満ち足りたクリスマスを迎えられることは、私にとっては奇跡なんだ。
 寒くて冷たい路地裏で、孤独に震えながら……暖かくて幸せなクリスマスを過ごす人々を眺めるだけだった、小さな私に伝えてあげたい。

 今はつらくても、悲しくても。貴女がこの日を……幸せに思える日が来るということを。

「来年も、レモネードさんとクリスマスを……迎えられたら、いいなあ」
「……何言ってやがる。これから先、いやってほどてめえとこの日を迎えるに決まってるだろ」
 ぽつり、と小さな声で零した言葉は、レモネードさんにしっかり届いていたみたいで。ぎゅ、とほんの少し強く……手を握り締められる。それがたまらなく嬉しくて……やっぱり私はどうしようもなく、レモネードさんのことが大好きなんだって思った。
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