短編夢まとめ

 オッス! 俺は名もなきモブ不良バンカー(仮)! 突然だけど、俺には……憧れてやまない、一人のバンカーがいるんだ!
 その人の名前はレモネードさん! BB7っていう7人いる山賊集団の内の一人で……俺達不良バンカーの間では、憧れの対象として超絶有名人なんだ!
 誰も寄せ付けないような鋭い眼光と威圧感。容赦のないバトルスタイルで、一人でどんどん大勢のバンカー達を打倒していく姿……どれをとってもめちゃくちゃかっこいい。伝説のヤンキーとは、きっとあの人の為に存在するんだって、俺は信じてやまない。
 ワルでクールで……孤高の一匹狼なレモネードさんみたいな男になりてえ!って……俺はずっと憧れて、密かにレモネードさんの追っかけをしていたんだ。

 ……そしたら……そしたらさ!!

「レモネードさーん! 今日の晩ご飯は何がいいですか? 食べたいものがありましたら……遠慮なく仰ってくださいね!」
「……肉。メニューはてめえで考えろ」
「お肉ですね! かしこまりました! それだと……冷蔵庫に確か豚肉が入っていましたから、生姜焼きにしますね!」

 ……………だ、誰よお! そのひよこみたいな黄色い女、誰よおッッ!!(号泣)
 レモネードさんに晩御飯振る舞うって……最早夫婦か何かか?!?! 仲睦まじい様子で、手を繋いで歩いている二人を見て……俺はそんなツッコミが止まらないでいた。

 そう……。いつの日からか、レモネードさんの周りをちょこまかと動き回る……子犬とか、ひよこで例えられるような、小動物みたいな女が現れるようになったんだ。
 最初こそは、レモネードさんは彼女を「うぜえ」と言って……適当にあしらっていたみたいだったのに。ある日を境に、レモネードさんの彼女に対する態度が……明らかに優しくなったというか……甘くなったんだ。彼女を見る目が、今まで見掛けたことなんてなかったくらいに暖かいというか……なんか……もう!!うわああああ!!!!
 だめだ。考えただけで具合が悪くなってきた……。俺達のレモネードさんは、「女なんて興味ねえ」って感じで……戦いに生きるストイックなヤンキーのイメージだったのに……。あの子犬系女子に、憧れのレモネードさんを奪われたような気持ちになってしまって……俺は悔しさから、心の血涙を日々流していた。
 あのレモネードさんに認められて、ほぼ毎日そばにいるだなんてどういうことだ? そんなことが可能なのか? ずるい……羨ましすぎるんだが……?! キーッ!
 思わず手に持っていたハンカチを噛みながら……俺は二人の様子を眺める。
 あの黄色い少女が……どんな経緯を経て、レモネードさんの心を射止めたのか……その理由の一端が分かるのは、そう遠くない未来なのだと。この時の俺は知る由もなかった。
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