短編夢まとめ

 ぱち……と、まだほんの少しだけ眠気が残る重い瞼を開けたら、瞳を閉ざしているレモネードさんの姿が真っ先に視界に入った。

(……わあ、珍しい)

 いつもはレモネードさんの方が先に起きていることが殆どだ。滅多に見ることのできない、レモネードさんの寝顔を……私はじっと見つめてしまう。
 いつもは眉間に皺を寄せていることが多いから、眠っている時のレモネードさんの表情は穏やかに思える。かっこよくて、整ったお顔立ちなのは勿論なのだけれど……どこか幼く見えて、かわいい。私は思わず、レモネードさんの頭を撫でた。彼のツンと逆立った髪は、触れていて楽しい。愛しい気持ちがどんどん溢れてくる。

「……ふふ」

 珍しいレモネードさんのお顔を見ることができて、とっても嬉しくて、笑みが零れてしまう。レモネードさんの、こんなふうに無防備な寝顔を見つめることができて、私は世界で一番の幸せ者だ。心からそう思う。

(……そろそろ起きて、朝ご飯作ろうかな?)

 名残惜しい気持ちを振り払いながら、ニコラシカはもそもそと身を捩り、レモネードから身体を離そうとする。
 だが、それは許されなかった。ニコラシカの腰に回されていたレモネードの腕に、力が込められる。

「わっ……?!」
「……どこいくんだよ……」

 まだ眠そうな、掠れた低い声に呼び止められた。これまた珍しいレモネードの姿に内心どきどきしながら、ニコラシカは「ごめんなさい、起こしちゃいましたよね」と声を掛ける。

「これから朝ご飯作ってこようかなって」
「……まだはえーだろ」
「冷めてもおいしいものご用意致しますから。あと、お風呂も入ってこないと……。だから、」
「……うるせえ」

 ニコラシカが言葉を続ければ続けるほど、レモネードはますます彼女を抱き締める力を強くした。体温が低く、冷たい彼の素肌に、ニコラシカの暖かい体温が移っていく。

「……んなの、全部後にしやがれ。……おれから、はなれようと、すんな……」
「は、はい……!」

 レモネードさんは余程、おねむさんらしい。普段なら、こんなふうに分かりやすく……甘えてきたりしないのに。私の返事を聞いたら、レモネードさんは安心したかのように……また、瞼を閉ざしてしまった。

「……レモネードさん、ずるいですよ……」

 かっこよかったり、可愛かったり。私はこれから先、レモネードさんに何度、どきどきさせられてしまうのだろうか。
 考えても答えなんて出ない。私も……もう一度眠りの世界に入ることにした。
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