短編夢まとめ
バイクを走らせる度に冷たい風が全身を吹き抜けていく。自分の腰に腕を回し、しがみついている少女は寒さで震えてはいないだろうか等を考えながら……レモネードは目的地までひたすらにバイクを飛ばしていた。
「すごーい! 海が綺麗です……!」
風切り音の中でも、ニコラシカの声だけははっきりと聞こえる。どうやら彼女の口振りからして、目に映った海岸の景色に夢中になっているようだった。運転に集中せねばならないので仕方ないが、瞳を輝かせて胸を弾ませている様子のニコラシカの表情が見れないことをレモネードは胸中で残念に思う。決して口には出さないが。
「もうすぐ着くぜ。最後まできっちりオレさまにしがみついてろ」
「はーい!」
海の景色に夢中になってるニコラシカにそう声を掛けると、腰に回された腕の力がほんの少し強められる。今向かっている場所は、初日の出とやらを誰にも邪魔されずに……二人きりで眺められる、謂わば穴場スポットだ。他のBB7のメンバー達がアジトで各々の年越しを楽しんでいる間に、レモネードはニコラシカを連れ出してバイクを走らせたのである。
レモネード個人としては年越しだとか正月だとかは割とどうだっていいイベント行事の一つだ。ただ過ぎ去っていく毎日を必死に生き抜いてきた自分にとって、一年の締め括りだとか始まりだとかに構う暇などなかったし、あまりピンと来てもいない。
けれど、ニコラシカがそれらに憧れているのであれば話は別なのである。正月に何をしたらいいのかなんて分からないが……二人で初日の出を見るくらいは、叶えてやれると思ったから。
「……着いたぜ、ここだ」
「わあ……!すごい、太陽が……!」
港にバイクを止めて、ニコラシカを初日の出がよく見えるであろう海岸まで連れて歩き出す。時間帯のタイミングも間に合ったらしく、空がオレンジ色に染まっていた。太陽の光を反射して海はきらきらと眩しい輝きを放ち、ニコラシカはその光景を食い入るように見つめ続けている。
「……満足したかよ?」
見惚れて声も出ない様子のニコラシカに話し掛ける。そこでようやくニコラシカはハッと我に返ったらしく、レモネードの方へと振り向いて……崩れるように微笑んだ。
「はいっ……! こんなに美しい景色を……見せてくださりありがとうございます! 一年の始まりを、レモネードさんと過ごせるだけでも幸せなのに……私、こんなに贅沢をしてしまって……いいのでしょうか……?!」
「ケッ、こんなの贅沢のうちに入らねえだろ。新年早々大袈裟な奴だな、てめえは」
嬉しそうに笑い、喜ぶニコラシカの姿が愛おしい。一年の始まりなんて、今までの自分ならばどうだってよかったこのイベントも……ニコラシカと共に迎えるのならば、特別だと思える。これからも彼女と共に何度も……この日を迎えたいと思えるのだ。
「あけましておめでとうございます、レモネードさん! 今年も一年……どうぞ宜しくお願い致します!」
「……ああ、」
ほんの少し冷たくなっているニコラシカの手を握り締めて、レモネードはぶっきらぼうに応えた。
「すごーい! 海が綺麗です……!」
風切り音の中でも、ニコラシカの声だけははっきりと聞こえる。どうやら彼女の口振りからして、目に映った海岸の景色に夢中になっているようだった。運転に集中せねばならないので仕方ないが、瞳を輝かせて胸を弾ませている様子のニコラシカの表情が見れないことをレモネードは胸中で残念に思う。決して口には出さないが。
「もうすぐ着くぜ。最後まできっちりオレさまにしがみついてろ」
「はーい!」
海の景色に夢中になってるニコラシカにそう声を掛けると、腰に回された腕の力がほんの少し強められる。今向かっている場所は、初日の出とやらを誰にも邪魔されずに……二人きりで眺められる、謂わば穴場スポットだ。他のBB7のメンバー達がアジトで各々の年越しを楽しんでいる間に、レモネードはニコラシカを連れ出してバイクを走らせたのである。
レモネード個人としては年越しだとか正月だとかは割とどうだっていいイベント行事の一つだ。ただ過ぎ去っていく毎日を必死に生き抜いてきた自分にとって、一年の締め括りだとか始まりだとかに構う暇などなかったし、あまりピンと来てもいない。
けれど、ニコラシカがそれらに憧れているのであれば話は別なのである。正月に何をしたらいいのかなんて分からないが……二人で初日の出を見るくらいは、叶えてやれると思ったから。
「……着いたぜ、ここだ」
「わあ……!すごい、太陽が……!」
港にバイクを止めて、ニコラシカを初日の出がよく見えるであろう海岸まで連れて歩き出す。時間帯のタイミングも間に合ったらしく、空がオレンジ色に染まっていた。太陽の光を反射して海はきらきらと眩しい輝きを放ち、ニコラシカはその光景を食い入るように見つめ続けている。
「……満足したかよ?」
見惚れて声も出ない様子のニコラシカに話し掛ける。そこでようやくニコラシカはハッと我に返ったらしく、レモネードの方へと振り向いて……崩れるように微笑んだ。
「はいっ……! こんなに美しい景色を……見せてくださりありがとうございます! 一年の始まりを、レモネードさんと過ごせるだけでも幸せなのに……私、こんなに贅沢をしてしまって……いいのでしょうか……?!」
「ケッ、こんなの贅沢のうちに入らねえだろ。新年早々大袈裟な奴だな、てめえは」
嬉しそうに笑い、喜ぶニコラシカの姿が愛おしい。一年の始まりなんて、今までの自分ならばどうだってよかったこのイベントも……ニコラシカと共に迎えるのならば、特別だと思える。これからも彼女と共に何度も……この日を迎えたいと思えるのだ。
「あけましておめでとうございます、レモネードさん! 今年も一年……どうぞ宜しくお願い致します!」
「……ああ、」
ほんの少し冷たくなっているニコラシカの手を握り締めて、レモネードはぶっきらぼうに応えた。