短編夢まとめ
3月14日。俗に言うホワイトデーと呼ばれる日。バレンタインデーにチョコを渡してきた女子に対して、男側がお返しをする日と一般的には言われている。今までのオレには、関係なんざ微塵もないイベントだった筈なのだが……ニコラシカと出逢ってからは、そうもいかなくなった。
オレの好みに合わせて、オレだけの為のチョコレートを捧げてきたアイツに……オレなりのお返しとやらを、くれてやることにしたんだ。
「わあ〜! ここ、ずっと行ってみたいなって思ってたスイーツパラダイスなんです……! どうして分かったんですか?!」
「ケッ、別にたまたまだっつの。……それより、とっとと食いてえやつ取ってきたらどうなんだ? 時間なくなるぜ?」
オレがそう促すと、ニコラシカは「はい! では、お言葉に甘えて……スイーツたくさん取ってきちゃいます!」ときらきらと瞳を輝かせながら、数多のケーキだのパフェだのが並んでいるバイキングへとぱたぱたと向かっていった。……アホ毛をふりふりと嬉しそうに揺らす様は、何度見ても子犬みたいで微笑ましい。分かりやすい奴だなと思うのと同時に……本当に、心の底から喜んでくれているのだと思うと、安堵した。
……たまたまだと言ったが。実のところ、前に一度、ニコラシカがルッコラと共に雑誌を読みながら「ここ、今度行ってみたいですね!」と、スイーツパラダイスの記事を指差して話していた姿を覚えていたのだ。いつか連れて行こうとは思っていたが……まさかホワイトデーのお返しという形で、こういった店に来ることになるとは。
「えへへ、いっぱい取ってきちゃいました!」
水を飲みながらぐるぐると思い返していたら、ニコラシカが皿にたくさんのケーキを乗っけて戻ってきた。色とりどりのケーキは華やかだが、甘いものを好んで食べないオレにとっては、見ているだけで胸焼けがする。
「……相変わらず、すげえ量食うな」
「はい! 今日はここのメニュー、全制覇を目指しちゃいます!」
さらりと凄いことを言っているが、ニコラシカが見た目に反して大食らいなのは既に知っているので驚かない。いただきまーす!と礼儀正しく手を合わせた後、ニコラシカはもぐもぐとケーキを口の中に頬張り始めた。一口一口、ケーキを味わう度に幸せそうに顔を綻ばせる彼女は、ハムスターを想起させる愛らしさがある。
……連れてきてよかったと、素直にそう思った。全くと言っていいほど我儘を言わないニコラシカの望みを、何としてでも汲み取って叶えてやりたいと思っていたから……ホワイトデーと言う日にかこつける形にはなってしまったが、ニコラシカを喜ばせることができたのだと、彼女の幸せそうな笑みを見て確信する。
「えへへ!こんなにいっぱい食べることができて幸せです! あ、このチョコレートケーキ、甘さ控えめで食べやすいですよ! レモネードさんも一口、いかがですか?」
「……お前、オレに食わせるっつったらどうなるか分かって言ってんのかよ?」
屈託のない笑みでケーキを一口分差し出してきたニコラシカに向かって、にやにやと意地の悪い笑みでレモネードは言って退ける。その一言で何かを察したニコラシカは、「あっ……!」と一気に顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに俯かせた。
「ケケケ……。分かったら、てめえで食ってりゃいいんだよ。オレさまは見てるだけで充分だし? 後でめいっぱい楽しませてもらうからよ」
ニコラシカの唇の端に付いていたクリームを指で拭って、わざとらしくそれを舐め取る。甘いものは好まないが、ニコラシカの反応を見ながら感じるこの甘さだけは、特別に好きだと思えた。
「レモネードさんっ! ごちそうさまでした……! あの、すみません……! 奢ってもらってしまって……」
「あぁ? 何謝ってんだタコ。これ、ホワイトデーのお返しってやつだって分かってねえのか?」
オレの一言に、ニコラシカは「え?」と目を丸くしていた。……まさか気づいていなかったのか。鈍いというかなんというか……。
「てめえからのバレンタイン、オレさまが忘れるわけねえだろ」
「……! レモネードさん、ありがとうございます! 受け取ってくださっただけでも、とっても嬉しいのに……! ……私、本当に幸せ者です!」
てめえはどんだけ幸せのハードルが低いんだよ、と言いながらも。はにかむニコラシカの姿を見つめるレモネードの視線は……愛しさと優しさが込められていた。
オレの好みに合わせて、オレだけの為のチョコレートを捧げてきたアイツに……オレなりのお返しとやらを、くれてやることにしたんだ。
「わあ〜! ここ、ずっと行ってみたいなって思ってたスイーツパラダイスなんです……! どうして分かったんですか?!」
「ケッ、別にたまたまだっつの。……それより、とっとと食いてえやつ取ってきたらどうなんだ? 時間なくなるぜ?」
オレがそう促すと、ニコラシカは「はい! では、お言葉に甘えて……スイーツたくさん取ってきちゃいます!」ときらきらと瞳を輝かせながら、数多のケーキだのパフェだのが並んでいるバイキングへとぱたぱたと向かっていった。……アホ毛をふりふりと嬉しそうに揺らす様は、何度見ても子犬みたいで微笑ましい。分かりやすい奴だなと思うのと同時に……本当に、心の底から喜んでくれているのだと思うと、安堵した。
……たまたまだと言ったが。実のところ、前に一度、ニコラシカがルッコラと共に雑誌を読みながら「ここ、今度行ってみたいですね!」と、スイーツパラダイスの記事を指差して話していた姿を覚えていたのだ。いつか連れて行こうとは思っていたが……まさかホワイトデーのお返しという形で、こういった店に来ることになるとは。
「えへへ、いっぱい取ってきちゃいました!」
水を飲みながらぐるぐると思い返していたら、ニコラシカが皿にたくさんのケーキを乗っけて戻ってきた。色とりどりのケーキは華やかだが、甘いものを好んで食べないオレにとっては、見ているだけで胸焼けがする。
「……相変わらず、すげえ量食うな」
「はい! 今日はここのメニュー、全制覇を目指しちゃいます!」
さらりと凄いことを言っているが、ニコラシカが見た目に反して大食らいなのは既に知っているので驚かない。いただきまーす!と礼儀正しく手を合わせた後、ニコラシカはもぐもぐとケーキを口の中に頬張り始めた。一口一口、ケーキを味わう度に幸せそうに顔を綻ばせる彼女は、ハムスターを想起させる愛らしさがある。
……連れてきてよかったと、素直にそう思った。全くと言っていいほど我儘を言わないニコラシカの望みを、何としてでも汲み取って叶えてやりたいと思っていたから……ホワイトデーと言う日にかこつける形にはなってしまったが、ニコラシカを喜ばせることができたのだと、彼女の幸せそうな笑みを見て確信する。
「えへへ!こんなにいっぱい食べることができて幸せです! あ、このチョコレートケーキ、甘さ控えめで食べやすいですよ! レモネードさんも一口、いかがですか?」
「……お前、オレに食わせるっつったらどうなるか分かって言ってんのかよ?」
屈託のない笑みでケーキを一口分差し出してきたニコラシカに向かって、にやにやと意地の悪い笑みでレモネードは言って退ける。その一言で何かを察したニコラシカは、「あっ……!」と一気に顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに俯かせた。
「ケケケ……。分かったら、てめえで食ってりゃいいんだよ。オレさまは見てるだけで充分だし? 後でめいっぱい楽しませてもらうからよ」
ニコラシカの唇の端に付いていたクリームを指で拭って、わざとらしくそれを舐め取る。甘いものは好まないが、ニコラシカの反応を見ながら感じるこの甘さだけは、特別に好きだと思えた。
「レモネードさんっ! ごちそうさまでした……! あの、すみません……! 奢ってもらってしまって……」
「あぁ? 何謝ってんだタコ。これ、ホワイトデーのお返しってやつだって分かってねえのか?」
オレの一言に、ニコラシカは「え?」と目を丸くしていた。……まさか気づいていなかったのか。鈍いというかなんというか……。
「てめえからのバレンタイン、オレさまが忘れるわけねえだろ」
「……! レモネードさん、ありがとうございます! 受け取ってくださっただけでも、とっても嬉しいのに……! ……私、本当に幸せ者です!」
てめえはどんだけ幸せのハードルが低いんだよ、と言いながらも。はにかむニコラシカの姿を見つめるレモネードの視線は……愛しさと優しさが込められていた。