救われた掌

「レモネードさん?! 大丈夫ですか……?!」

 随分と長い夢を見ていたような心地だった。オレの身を案ずる……ニコラシカの声で、ハッと目が覚める。

「ニコ、ラシカ……?」

 頭にはなにやら柔らかい感触。オレはどうやらこいつに……いわゆる、膝枕とやらをされた状態で介抱されていたらしい。

「よかった……! よかったです! レモネードさん、突然倒れてしまわれて……! どこか、痛いところはございませんか……?」

 オレの意識が戻ったことに安心したのか、ニコラシカは、泣き笑いのような表情を浮かべる。……その表情が、先程まで接していた……「あの」ニコラシカと重なってしまった。

(……オレは、夢でも見てたってのか?)

 オレと出逢うことのなかった世界のニコラシカ。多くの人間達の悪意に晒されて、蔑まれ続けたまま育ってきた、か弱い女。
 ……ただの夢だったと、言われてしまえばそれまでだ。だが……。

「? レモネードさ……きゃっ?!」

 身体を起こし、オレは、ニコラシカを強く抱き締める。暖かい体温に、優しく甘い香り。……ニコラシカは、ちゃんと、オレの傍で生きているのだと確かめられる。

「ど、どうしたのですか……っ?! もしかして、悪い夢でも見ちゃいました……?」
「……別に、そういうわけじゃねえ。ただ……今は、黙ってオレに抱かれてろ」

 オレの腕の中で、顔を赤らめながらわたわたと慌てるニコラシカがどうしようもなく愛しい。オレの身を……オレ自身よりも案じて、自分の命ある限り愛そうとする……この女の存在を。絶対に手放してやるものかと改めて思う。

 幼い頃。偶然だったとはいえ……こいつを、ニコラシカを助けてやることができてよかったと。らしくもないが……心の底からそう思った。
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