陽だまりの恋を追いかけて

 好きだとか、愛しているとかふざけてんのか。何度暴言を吐いても、どれだけ突き放しても、女の酷く澄んだ深紅の瞳は翳ることなく。オレをまっすぐに見つめ続けているのが、苛ついて仕方がない。
 そんな綺麗事がいつまで吐けるというのか。オレの為ならば何でもできると宣うこの女も、一度とことん痛い目を見れば……いいこちゃんぶっていられない筈だ。

「ケッ、なに怖じ気付いてやがる。……オレの役に立ちてえんだろ?」

 オレに手酷く組み敷かれた女は、分かりやすく怯えていた。いつも柔らかな笑みを讃えている表情は強張り、身体は恐怖で小刻みに震えている。
 嫌なら抵抗してみろとだけ吐いて、オレは女の衣服を乱す。素肌を晒し、わざとらしく身体をなぞってやる度に、女の赤い瞳にじわりじわりと涙が溜まっていくのが分かった。
 ……それなのに。女は抵抗する気配を一向に見せない。いやだとかやめての一言も漏らすことなく、ただただじっと、これから自分の身に降りかかるであろう陵辱を……受け止めようとしていやがった。

「わたしは、レモネードさんが望むのならば……なにも、なにも惜しくなんてありません、から……!」

 涙を零すまいと。恐怖を押し殺そうと強く瞳を閉ざしながら……女はオレにそう言ったのだ。この期に及んで、オレのすることを赦し、受け入れようとするその姿に……気づけばオレの手は、止まっていた。
 ……もし。女が少しでも抵抗する素振りを見せたり、オレを拒絶したのであれば……とことん辱めて、存分に痛い目を見せていただろう。もう二度と、オレという存在に関わろうだなんて思えなくするほどの、屈辱を味合わせてやっていただろう。
 ……だが、そうはならなかった。ならなかったのだ。

(うぜえ。何も考えたくねえ……!)

 女の覚悟を嘲笑ってやるかのように、手酷く犯してやることがどうしてできなかったのか。
 確実に、オレはあの女……ニコラシカと関わってから、何かがおかしくなっている。あいつのまっすぐさに、苛立って、腹が立って仕方がない筈だったのに……。
 ぎり、とレモネードは奥歯を強く噛み締める。心の奥底で芽生え始めている……もやもやとした形を成さない感情に蓋をするかのように。
 思考したくないのに、脳裏に、ニコラシカの姿が浮かんでは、離れてくれなかった。
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