陽だまりの恋を追いかけて

「オレの為ならなんでもできるだとか、そんな寝惚けたこと二度と言えなくしてやるよ……!」
「きゃ……っ!」

 強く腕を掴まれたかと思えば、そのまま乱暴にベッドの上に放られる。起き上がろうとしたのも束の間、レモネードさんはそのまま私の上に覆いかぶさって……手首をシーツに縫い付けるかのように抑えつけてきた。私を見下ろすアイスブルーの三白眼は、氷のような鋭い冷たさを宿していて、息が詰まりそうになる。

「ケッ、なに怖じ気付いてやがる。……オレの役に立ちてえんだろ?」
「レモネード、さん……!」

 私を嘲笑うレモネードさんの声と、言葉。表情全てが、私の身体と心を強張らせる。これから自分が何をされるのか、それが分からないほど……私は子どもではないつもりだ。

「嫌なら抵抗してみれば?…… できるもんならな」
「あ、……!」

 レモネードさんの手が、私の衣服に掛かる。スカーフは乱暴に剥ぎ取られて、素肌が外気に晒されていく。するり、とわざとらしく脚を撫で上げられる感覚に、身体がびくりと跳ねてしまう。

「ケケケ……なあ、こんなことされても、まだオレのことが好きだなんて寝惚けたことが言えんのかよ、なあ」
「……っ! は、い……! わたしは、レモネードさんが望むのならば……なにも、なにも惜しくなんてありません、から……!」

 怖い。頭の中に浮かんだその感情を……私は必死に振り払う。ぎゅ、と瞳を固く閉ざして、抵抗の言葉を飲み下す。

(レモネードさんが望むのならば……私はただ、受け入れるって決めたんだから……!)

 心が伴わない行為が、悲しくないといえば嘘になる。いくら好きな人が相手だとしてもこんな形では嫌だと叫ぶ自分の心を、私は必死に押し殺した。だって、私はそれ以上に……レモネードさんから離れたくなかった。レモネードさんを拒絶したくなかった。……逃げたくなんて、なかったんだ。

「……チッ、」

 機嫌悪そうに、舌打ちをする音。それと共に、私の手首を強く掴んでいた、レモネードさんの手が離れていく感覚があった。

「え……? レモネードさん……?」
「……やめた。だいたい、てめえみてえなガキ相手にするほど、オレは飢えてねえ」

 レモネードさんはそう言って、私の上から退く。

「……今日はやめてやる。だが、またオレに必要以上に構うってんなら……次は容赦しねえ。それが嫌なら、二度と関わろうとすんな」

 吐き捨てるように言われた台詞。私が何かを返す暇もなく、レモネードさんは足早に部屋から出てしまった。

「……レモネードさん、ごめんなさい。それでも、私は……貴方のそばにいたいんです」

 怖くても、どれほどの痛い目を見て、傷つくことになったとしても……私にとっては、レモネードさんのそばにいられないことの方が、ずっとずっと、辛いから。
 レモネードの手によって乱された服を整える。零れ落ちそうになる涙を、ニコラシカは必死に拭い続けた。
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