陽だまりの恋を追いかけて

 固く閉ざされた瞳。いつもは穏やかで、あどけない寝顔を晒すニコラシカの表情に、違和感を覚えたのは決して気のせいではない。
 眉間に皺が寄り、険しい顔つきになっている。唇から漏れ出る、悲しみに満ちた声音に……彼女は今、悪夢に魘されているのだろうということが分かった。手を差し出すと、ニコラシカの小さな手が、縋るように強く、レモネードの手を握り締めた。

「わ、たし……まじょ、じゃ……な……」

 途切れ途切れに紡がれる言葉。レモネードは昔、彼女と初めて出逢った時のことを薄らぼんやりと思い出す。曖昧で、埋没しかけていた記憶だが……確か彼女は、多くの人間から「魔女」だと忌み嫌われて迫害されていた。
 普段から天真爛漫で、明るいニコラシカを見ていると忘れてしまいそうになるが……思えば彼女は、自分と同じ立ち位置にいた少女なのだ。孤独で、誰も寄り添ってくれない。他人から嘲笑われ続けて、辛くて寂しい人生を送ってきたのは……彼女もまた、同じで。昔、彼女を「魔女」と罵った人間達の言葉は今もこうして、彼女を苦しめ続けているのだろう。

「……てめえが魔女だろうがなんだろうが、関係ねえ」

 ぎゅ、と彼女の手を強く握り返す。レモネードにとって、ニコラシカが魔女か人間かなんて、どうだっていいことだった。ニコラシカはニコラシカだ。それ以外の何者でもない。天真爛漫で、ばかみたいに素直で……放っておけないこの少女は、誰に何と言われようが絶対に手放さない。もし、また彼女を「魔女」だと断じて、裁こうとする人間が現れたとしたならば。自分から、この愛しき存在を奪おうとするならば……絶対に、手出しなんかさせない。守り抜いてみせるし、誰にも奪わせやしない。

「……てめえは、オレの為にその槍振り回してりゃいいし、オレの傍に黙っていればいいんだよ」

 泣き晴らした少女の頬に手を添える。ニコラシカが自由に、幸せそうに笑っていられる為ならば……何度だって、レモネードは彼女の手を取り、救い上げるのだろう。
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