陽だまりの恋を追いかけて
「悪いねえ。わざわざ見ず知らずのあたしを助けてくれるなんて……あんた良い子だねえ」
「いえいえ! 途中まで行き先が一緒のようでしたので……ついでに、というやつです! お気になさらないでください!」
レモネードがいるピザの斜塔へと向かう道中。ニコラシカは、大荷物を両手いっぱいに抱えた老婆と出会った。よたよたと覚束なく歩いている様子を見て、ニコラシカは「お荷物、お持ち致します! どこまで運べばよろしいでしょうか?」と駆け寄り、老婆の手伝いを申し出たのだ。困っている人を見掛けて、自分の力で助けられるのであれば助けるのが、ニコラシカという少女の性格なのだ。
「……その胸のマーク、あんたはもしかしてバンカーなのかい?」
「あっ、はい! まだまだ修行中の身ではありますが……バンカーとして旅をしているんです! 大好きな人の、お役に立ちたくて……えへへ」
「へえ〜! 好きな人を追い掛けてバンカーになったってやつかい? ドラマみたいだねえ」
あたしもそんな青春を、若い時は送ったもんだよ!と、老婆はからからと笑いながら話す。一頻り笑った後、老婆はジッ……とニコラシカを見つめた。
「? どうかしましたか?」
「いや……あんた、バンカーとしてもっと強くなりたいかい?」
「うーん……そう、ですね。確かに、もっと強くなれたら……お役に立てることが、もっと増えるんだろうなあとは思います!」
「なら、あたしのとこでちょいと修行してかないかい?」
「……え?」
老婆はぴたり、と足を止めて。とある看板を指差す。その看板には、『信頼と実績のオコゲ道場! 強さ今の10倍に』と記されている。
「実はね、あたしがこの道場の師範の……オコゲなんだよ。……どうだい? あたしに付いてくれば、あんたのこと10倍強くしてあげるよ!」
老婆、もといオコゲは眼鏡をきらりと光らせながら、ニコラシカを捉える。
「……うーん」
数秒の間、ニコラシカは考えて。それから困ったように笑った。
「……とても魅力的だと思いますが、今は、他にやりたいことがありますので……! またの機会があったら、その時はよろしくお願いします!」
「そうかい。そりゃあ残念だねえ……いつでもおいで。あんたみたいな子が来てくれるなら、あたしゃいつでも歓迎だよ!」
ニコラシカから荷物を受け取りながら、オコゲは惜しそうに彼女を見つめる。
……素直で、気遣いと気配りがよくできるタイプのこの少女ならば、自分の身の回りの世話を任せられると思っていたのだが……どうやら先約がいるらしい。残念でならないが、仕方がない。
(そのうち、ちょうど良さそうな小間使いが来るのを待つかねえ)
オコゲの密かなこの野望は、後日割とすぐに叶うこととなるのだった。
「いえいえ! 途中まで行き先が一緒のようでしたので……ついでに、というやつです! お気になさらないでください!」
レモネードがいるピザの斜塔へと向かう道中。ニコラシカは、大荷物を両手いっぱいに抱えた老婆と出会った。よたよたと覚束なく歩いている様子を見て、ニコラシカは「お荷物、お持ち致します! どこまで運べばよろしいでしょうか?」と駆け寄り、老婆の手伝いを申し出たのだ。困っている人を見掛けて、自分の力で助けられるのであれば助けるのが、ニコラシカという少女の性格なのだ。
「……その胸のマーク、あんたはもしかしてバンカーなのかい?」
「あっ、はい! まだまだ修行中の身ではありますが……バンカーとして旅をしているんです! 大好きな人の、お役に立ちたくて……えへへ」
「へえ〜! 好きな人を追い掛けてバンカーになったってやつかい? ドラマみたいだねえ」
あたしもそんな青春を、若い時は送ったもんだよ!と、老婆はからからと笑いながら話す。一頻り笑った後、老婆はジッ……とニコラシカを見つめた。
「? どうかしましたか?」
「いや……あんた、バンカーとしてもっと強くなりたいかい?」
「うーん……そう、ですね。確かに、もっと強くなれたら……お役に立てることが、もっと増えるんだろうなあとは思います!」
「なら、あたしのとこでちょいと修行してかないかい?」
「……え?」
老婆はぴたり、と足を止めて。とある看板を指差す。その看板には、『信頼と実績のオコゲ道場! 強さ今の10倍に』と記されている。
「実はね、あたしがこの道場の師範の……オコゲなんだよ。……どうだい? あたしに付いてくれば、あんたのこと10倍強くしてあげるよ!」
老婆、もといオコゲは眼鏡をきらりと光らせながら、ニコラシカを捉える。
「……うーん」
数秒の間、ニコラシカは考えて。それから困ったように笑った。
「……とても魅力的だと思いますが、今は、他にやりたいことがありますので……! またの機会があったら、その時はよろしくお願いします!」
「そうかい。そりゃあ残念だねえ……いつでもおいで。あんたみたいな子が来てくれるなら、あたしゃいつでも歓迎だよ!」
ニコラシカから荷物を受け取りながら、オコゲは惜しそうに彼女を見つめる。
……素直で、気遣いと気配りがよくできるタイプのこの少女ならば、自分の身の回りの世話を任せられると思っていたのだが……どうやら先約がいるらしい。残念でならないが、仕方がない。
(そのうち、ちょうど良さそうな小間使いが来るのを待つかねえ)
オコゲの密かなこの野望は、後日割とすぐに叶うこととなるのだった。