ギーマ夢主の名前変換
ギーマ(BW)×固定夢主💮
🪙夢主の名前
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フランのための菓子は、三日前から用意してあった。
箱を開ければ、コロモリやチョロネコを象ったチョコレートが並んでいる。金色の包み紙にくるまれたコイン型のものも、いくつか忍ばせてある。
彼女がチョコレート菓子を好むことは、もちろん知っている。箱を受け取った時にどんな顔をするかも、ギーマには大体想像がついた。
嬉しそうに、ぱっと花が綻ぶように笑う。本当にあたしに?と確認して、ありがとうと何度も言う。
きっとそのあと、ひとつ食べてもいいですか?と尋ねてくるのだろう。
その顔が見たくて、リーグの催しが終わったら自室へ寄るよう、あらかじめ誘っておいた。
今夜はハロウィンだ。恋人を喜ばせる口実には事欠かない。
ただ、扉を叩く音に応じてみると。そこに立っていたフランが、まだ愛らしい魔法使いの格好をしていたので、予定を少し変えたくなった。
「お、お疲れ様です、ギーマさん」
「ああ。おいで、可愛い魔法使いのお嬢さん」
「……っ!これは、シキミさんやカトレアさんに言われて着ただけで……!」
「よく似合っている。もう少し見せてくれ」
それだけで、フランの頬が赤くなる。こちらのマントに目を留めてからは、さらに視線が落ち着かなくなった。
今日の催しでギーマが纏っていたのは、吸血鬼を模した黒いマントだった。襟元から覗く裏地は、深い赤。
普段と少し違う衣装を、フランが仕事中に何度も目で追っていたことには、とうに気づいている。だから彼女が来るまで脱がないでいた。
「……そちらも、まだ、そのままなんですね」
「きみが、気に入ってくれたようだったからね」
「き、気づいて……」
「ふふ」
彼女は早くも、両手で頬を押さえている。可愛い。このまますぐ菓子を渡すだけでは、少々、惜しい気がした。
***
フランは、ひとまず深呼吸をした。大丈夫。今日はハロウィンである。吸血鬼姿のギーマがこの世のものとは思えないほど美しくて、似合っていても。部屋へ入った途端に腰へ手を添えられても、まずは言うべきことがある。
「え、えっと……トリック・オア・トリート、です」
彼の前に両手を差し出す。ロビーで子どもたちに菓子を配っていた時に、何度も聞いた言葉だ。
自分が言う側になると、妙に照れくさい。
「お菓子をくださらないと、悪戯、しちゃいますよ……?」
最後が疑問形になってしまった。迫力など、どこにもない。
けれどギーマは、ひどく楽しそうに目を細めた。
「それは、困ったね」
彼はテーブルの上の箱へ手を伸ばしかけ、それから、ふと思い直したようにこちらを見る。
「きみはわたしに……どんな悪戯をしてくれるのかな?」
甘く、ゆっくりと。楽しみにしているとでもいうような声で尋ねられて、フランの頭から、用意していた返事が全部消えた。
「ど、どんな……」
「ああ。聞いてから、お菓子を渡すかどうか考えよう」
「考えるんですか?!」
「きみの悪戯が、あまりに魅力的だったら困るだろう」
困るのはこちらである。フランは差し出していた手を胸元へ引っ込め、必死に考えた。
悪戯。相手がちょっと驚いたり、困ったりすること。ただし、ギーマに本当に嫌がられるようなことは絶対にしたくない。
「……ほ、ほっぺを、つねります」
ようやく絞り出した答えに、彼は一瞬目を丸くした。
それから、くすりと笑って身を屈める。
「どうぞ」
「ど、どうぞ?!」
「きみの手なら、そう悪くなさそうだ」
目の前へ差し出された美しい顔に、フランは完全に行き詰まった。こんな美しい顔をつねるなんて、とんでもない。
けれど、言い出したのは自分だ。おそるおそる手を伸ばし、頬をほんの少し、指先で挟む。
「……痛く、ないですか」
ギーマが笑った。今度は堪えきれなかったように、肩まで小さく揺らして。
「きみは、悪戯の最中まで優しいんだね」
「うう……だって……」
「困ったな。もっとしてほしくなってしまった」
「そ、それでは意味がないです……!」
ぱっと手を離すと、その手を捕まえられた。指先に、軽く唇が触れる。
「ひゃっ……!」
「今のは、可愛い悪戯のお礼だよ」
お礼までされてしまった。フランの敗北である。
***
「さて。こちらは、きみに」
ギーマが、オレンジ色のリボンをかけた箱を差し出した。小さなカードには、流れるような筆跡で『フランへ』と書かれている。
「……あたしに、用意してくださっていたんですか」
「もちろん。きみが喜びそうなものを、選んでおいた」
両手で受け取り、そっと蓋を開ける。
行儀よく並んだチョコレートを見た瞬間、思わず声が弾んだ。
「わあ……!チョロネコちゃんもいる……!」
小さなチョロネコに、羽を広げたコロモリ。金色のコインチョコレートまである。見ているだけでも楽しくて、甘い香りに頬が緩む。
「ありがとうございます、ギーマさん。すごく嬉しいです……!」
「それはよかった」
「あの、今、ひとつ食べてもいいですか?」
ギーマはなぜか、そこでいっそう楽しそうに笑った。
「どうぞ。きみのものだよ」
並んでソファに座り、フランは小さなチョコレートをひとつ口に入れた。甘さがゆっくり広がって、自然と目元が緩む。
「……おいしい」
思わず零した声に、隣のギーマが満足そうに頷いた。自分のために選んでくれたのだと思うと、余計に美味しく感じる。
さっきまでの意地悪も忘れそうになるくらい、嬉しかった。
「もうひとつ、いかがかな」
「はい……!」
「今度は、わたしが食べさせてあげよう」
それはそれで恥ずかしい。けれど恋人に甘やかされる嬉しさには抗えなかった。
フランは少し迷ってから、こくりと頷く。ギーマは薄いコインチョコレートを一枚選び、包み紙を剥いた。そのしなやかな指先を、つい見つめてしまう。
「ハロウィンだからね。少し、変わった渡し方をしようか」
何のことだろう、と顔を上げる。彼はそのチョコレートの端を、そっと自分の唇に挟んだ。
「…………」
フランは、数秒間、何も言えなかった。
「……えっ」
空色の瞳が、愉快そうに細くなる。チョコレートをくわえたまま、ほんの少し顔を近づけられた。
「ぎ、ギーマさん……それ、あの……っ」
どう考えても、口から受け取れということだ。つまり、チョコレートを食べるためには、あの唇に近づかなくてはならない。
あとほんの少しで、キスができてしまう距離まで。フランの顔に、一気に熱が集まった。
「そんな食べ方、心の準備が……!」
ギーマは急かさず、ただ待っている。それがまた、ずるかった。自分がどうするのか、楽しみにされている。
逃げようと思えば、逃げられる。それなのに視線を外せないのは、チョコレートが欲しいからだけではなかった。
フランは膝の上で手を握り、そっと身を寄せた。彼のマントの端を、小さく掴む。
唇に挟まれたチョコレートへ、おそるおそる口をつける。
薄いそれが小さく割れた瞬間、ギーマの手が頬を包んだ。
そして、そのまま。柔らかな温もりが、唇に重なった。
「……っ」
甘い。チョコレートのせいなのか、口づけのせいなのか、もう分からなかった。
ほんの短いキスなのに、胸がいっぱいになる。顔が離れても、フランはしばらく動けなかった。
口の中のチョコレートをようやく味わってから、両手で頬を押さえる。
「……お菓子を食べるだけなのに……!」
「美味しかった?」
「味が、途中から、よく分からなく……」
「それなら、もう一度確かめようか」
「わああ、だ、大丈夫です!美味しいです!すごく!」
必死に答えると、ギーマはひどく楽しそうに笑った。その顔にまで胸が跳ねてしまい、フランはとうとう俯く。
「……あたしばっかり、悪戯されてます」
「おや。きみも、わたしの頬をつねっただろう」
「全然、効いてなかったじゃないですか……」
「ああ。嬉しかったよ」
悪戯とは。ハロウィンとは。フランは真剣に考えたくなった。
「もう……ハロウィン、心臓に悪いです……」
フランが頬を膨らませながら呟くと、ギーマの腕が優しく背中へ回ってくる。彼は恋人の髪へ頬を寄せた。
「わたしは、とても気に入ったよ」
「それは、ギーマさんは、楽しいでしょうけど……」
「きみは、楽しくなかった?」
ずるい質問だ。答えなんて、分かっているくせに。
フランは少し黙ってから、彼のマントをきゅっと掴んだ。
「……嬉しかった、です」
用意してくれた菓子も。自分のために、まだ着ていてくれた衣装も。からかう声も、そのあとに必ず触れてくれる優しい手も。
「恥ずかしいですけど……ギーマさんと、こうしていられるのは、嬉しいです」
頭上で、小さく息をつく音がした。抱きしめる腕が、少しだけ強くなる。
「……フラン」
呼ばれて顔を上げると、今度は額へ口づけられた。からかいのない、ひどく大切そうな触れ方だった。
「来年も、その次も。きみのお菓子は、わたしが用意しておこう」
「……はい」
「悪戯の方も、楽しみにしているよ」
「そ、そこは忘れてください……!」
彼が笑う。つられてフランも笑い、もう一度、その肩へ寄りかかった。
お菓子の箱には、まだ、たくさんのチョコレートが残っている。ギーマはそれを横目に見てから、腕の中の恋人へ視線を戻した。
喜ぶ顔が見たくて、用意したはずだった。けれど、真っ赤になる顔も、悪戯を考えて真剣になる顔も、最後に素直に甘えてくれる顔も。どれも可愛くて、次が見たくなる。
「フラン。もうひとつ食べるかい」
彼女が顔を上げ、少しだけ警戒するように見つめてくる。
「……普通に、ですか?」
ギーマは微笑んだ。答える代わりに、彼女の頬へそっと触れる。
「きみは、どちらがいい?」
フランが、また真っ赤になった。それでも今度は、彼のマントを掴む指が、離れなかった。
箱を開ければ、コロモリやチョロネコを象ったチョコレートが並んでいる。金色の包み紙にくるまれたコイン型のものも、いくつか忍ばせてある。
彼女がチョコレート菓子を好むことは、もちろん知っている。箱を受け取った時にどんな顔をするかも、ギーマには大体想像がついた。
嬉しそうに、ぱっと花が綻ぶように笑う。本当にあたしに?と確認して、ありがとうと何度も言う。
きっとそのあと、ひとつ食べてもいいですか?と尋ねてくるのだろう。
その顔が見たくて、リーグの催しが終わったら自室へ寄るよう、あらかじめ誘っておいた。
今夜はハロウィンだ。恋人を喜ばせる口実には事欠かない。
ただ、扉を叩く音に応じてみると。そこに立っていたフランが、まだ愛らしい魔法使いの格好をしていたので、予定を少し変えたくなった。
「お、お疲れ様です、ギーマさん」
「ああ。おいで、可愛い魔法使いのお嬢さん」
「……っ!これは、シキミさんやカトレアさんに言われて着ただけで……!」
「よく似合っている。もう少し見せてくれ」
それだけで、フランの頬が赤くなる。こちらのマントに目を留めてからは、さらに視線が落ち着かなくなった。
今日の催しでギーマが纏っていたのは、吸血鬼を模した黒いマントだった。襟元から覗く裏地は、深い赤。
普段と少し違う衣装を、フランが仕事中に何度も目で追っていたことには、とうに気づいている。だから彼女が来るまで脱がないでいた。
「……そちらも、まだ、そのままなんですね」
「きみが、気に入ってくれたようだったからね」
「き、気づいて……」
「ふふ」
彼女は早くも、両手で頬を押さえている。可愛い。このまますぐ菓子を渡すだけでは、少々、惜しい気がした。
***
フランは、ひとまず深呼吸をした。大丈夫。今日はハロウィンである。吸血鬼姿のギーマがこの世のものとは思えないほど美しくて、似合っていても。部屋へ入った途端に腰へ手を添えられても、まずは言うべきことがある。
「え、えっと……トリック・オア・トリート、です」
彼の前に両手を差し出す。ロビーで子どもたちに菓子を配っていた時に、何度も聞いた言葉だ。
自分が言う側になると、妙に照れくさい。
「お菓子をくださらないと、悪戯、しちゃいますよ……?」
最後が疑問形になってしまった。迫力など、どこにもない。
けれどギーマは、ひどく楽しそうに目を細めた。
「それは、困ったね」
彼はテーブルの上の箱へ手を伸ばしかけ、それから、ふと思い直したようにこちらを見る。
「きみはわたしに……どんな悪戯をしてくれるのかな?」
甘く、ゆっくりと。楽しみにしているとでもいうような声で尋ねられて、フランの頭から、用意していた返事が全部消えた。
「ど、どんな……」
「ああ。聞いてから、お菓子を渡すかどうか考えよう」
「考えるんですか?!」
「きみの悪戯が、あまりに魅力的だったら困るだろう」
困るのはこちらである。フランは差し出していた手を胸元へ引っ込め、必死に考えた。
悪戯。相手がちょっと驚いたり、困ったりすること。ただし、ギーマに本当に嫌がられるようなことは絶対にしたくない。
「……ほ、ほっぺを、つねります」
ようやく絞り出した答えに、彼は一瞬目を丸くした。
それから、くすりと笑って身を屈める。
「どうぞ」
「ど、どうぞ?!」
「きみの手なら、そう悪くなさそうだ」
目の前へ差し出された美しい顔に、フランは完全に行き詰まった。こんな美しい顔をつねるなんて、とんでもない。
けれど、言い出したのは自分だ。おそるおそる手を伸ばし、頬をほんの少し、指先で挟む。
「……痛く、ないですか」
ギーマが笑った。今度は堪えきれなかったように、肩まで小さく揺らして。
「きみは、悪戯の最中まで優しいんだね」
「うう……だって……」
「困ったな。もっとしてほしくなってしまった」
「そ、それでは意味がないです……!」
ぱっと手を離すと、その手を捕まえられた。指先に、軽く唇が触れる。
「ひゃっ……!」
「今のは、可愛い悪戯のお礼だよ」
お礼までされてしまった。フランの敗北である。
***
「さて。こちらは、きみに」
ギーマが、オレンジ色のリボンをかけた箱を差し出した。小さなカードには、流れるような筆跡で『フランへ』と書かれている。
「……あたしに、用意してくださっていたんですか」
「もちろん。きみが喜びそうなものを、選んでおいた」
両手で受け取り、そっと蓋を開ける。
行儀よく並んだチョコレートを見た瞬間、思わず声が弾んだ。
「わあ……!チョロネコちゃんもいる……!」
小さなチョロネコに、羽を広げたコロモリ。金色のコインチョコレートまである。見ているだけでも楽しくて、甘い香りに頬が緩む。
「ありがとうございます、ギーマさん。すごく嬉しいです……!」
「それはよかった」
「あの、今、ひとつ食べてもいいですか?」
ギーマはなぜか、そこでいっそう楽しそうに笑った。
「どうぞ。きみのものだよ」
並んでソファに座り、フランは小さなチョコレートをひとつ口に入れた。甘さがゆっくり広がって、自然と目元が緩む。
「……おいしい」
思わず零した声に、隣のギーマが満足そうに頷いた。自分のために選んでくれたのだと思うと、余計に美味しく感じる。
さっきまでの意地悪も忘れそうになるくらい、嬉しかった。
「もうひとつ、いかがかな」
「はい……!」
「今度は、わたしが食べさせてあげよう」
それはそれで恥ずかしい。けれど恋人に甘やかされる嬉しさには抗えなかった。
フランは少し迷ってから、こくりと頷く。ギーマは薄いコインチョコレートを一枚選び、包み紙を剥いた。そのしなやかな指先を、つい見つめてしまう。
「ハロウィンだからね。少し、変わった渡し方をしようか」
何のことだろう、と顔を上げる。彼はそのチョコレートの端を、そっと自分の唇に挟んだ。
「…………」
フランは、数秒間、何も言えなかった。
「……えっ」
空色の瞳が、愉快そうに細くなる。チョコレートをくわえたまま、ほんの少し顔を近づけられた。
「ぎ、ギーマさん……それ、あの……っ」
どう考えても、口から受け取れということだ。つまり、チョコレートを食べるためには、あの唇に近づかなくてはならない。
あとほんの少しで、キスができてしまう距離まで。フランの顔に、一気に熱が集まった。
「そんな食べ方、心の準備が……!」
ギーマは急かさず、ただ待っている。それがまた、ずるかった。自分がどうするのか、楽しみにされている。
逃げようと思えば、逃げられる。それなのに視線を外せないのは、チョコレートが欲しいからだけではなかった。
フランは膝の上で手を握り、そっと身を寄せた。彼のマントの端を、小さく掴む。
唇に挟まれたチョコレートへ、おそるおそる口をつける。
薄いそれが小さく割れた瞬間、ギーマの手が頬を包んだ。
そして、そのまま。柔らかな温もりが、唇に重なった。
「……っ」
甘い。チョコレートのせいなのか、口づけのせいなのか、もう分からなかった。
ほんの短いキスなのに、胸がいっぱいになる。顔が離れても、フランはしばらく動けなかった。
口の中のチョコレートをようやく味わってから、両手で頬を押さえる。
「……お菓子を食べるだけなのに……!」
「美味しかった?」
「味が、途中から、よく分からなく……」
「それなら、もう一度確かめようか」
「わああ、だ、大丈夫です!美味しいです!すごく!」
必死に答えると、ギーマはひどく楽しそうに笑った。その顔にまで胸が跳ねてしまい、フランはとうとう俯く。
「……あたしばっかり、悪戯されてます」
「おや。きみも、わたしの頬をつねっただろう」
「全然、効いてなかったじゃないですか……」
「ああ。嬉しかったよ」
悪戯とは。ハロウィンとは。フランは真剣に考えたくなった。
「もう……ハロウィン、心臓に悪いです……」
フランが頬を膨らませながら呟くと、ギーマの腕が優しく背中へ回ってくる。彼は恋人の髪へ頬を寄せた。
「わたしは、とても気に入ったよ」
「それは、ギーマさんは、楽しいでしょうけど……」
「きみは、楽しくなかった?」
ずるい質問だ。答えなんて、分かっているくせに。
フランは少し黙ってから、彼のマントをきゅっと掴んだ。
「……嬉しかった、です」
用意してくれた菓子も。自分のために、まだ着ていてくれた衣装も。からかう声も、そのあとに必ず触れてくれる優しい手も。
「恥ずかしいですけど……ギーマさんと、こうしていられるのは、嬉しいです」
頭上で、小さく息をつく音がした。抱きしめる腕が、少しだけ強くなる。
「……フラン」
呼ばれて顔を上げると、今度は額へ口づけられた。からかいのない、ひどく大切そうな触れ方だった。
「来年も、その次も。きみのお菓子は、わたしが用意しておこう」
「……はい」
「悪戯の方も、楽しみにしているよ」
「そ、そこは忘れてください……!」
彼が笑う。つられてフランも笑い、もう一度、その肩へ寄りかかった。
お菓子の箱には、まだ、たくさんのチョコレートが残っている。ギーマはそれを横目に見てから、腕の中の恋人へ視線を戻した。
喜ぶ顔が見たくて、用意したはずだった。けれど、真っ赤になる顔も、悪戯を考えて真剣になる顔も、最後に素直に甘えてくれる顔も。どれも可愛くて、次が見たくなる。
「フラン。もうひとつ食べるかい」
彼女が顔を上げ、少しだけ警戒するように見つめてくる。
「……普通に、ですか?」
ギーマは微笑んだ。答える代わりに、彼女の頬へそっと触れる。
「きみは、どちらがいい?」
フランが、また真っ赤になった。それでも今度は、彼のマントを掴む指が、離れなかった。
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