デフォルト名は「ライラ」になります。
カラスバ(ZA)×固定夢主🪻
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ミアレシティを訪れて、かれこれ1週間が経過していた。あの親切でイケメンなお兄さんの言葉通りに、私はミアレという街をこれでもかというくらい楽しんでいた。
ワイルドゾーンと呼ばれる、野生のポケモン達が生息する区画があったり、夜間になるとバトルゾーンと呼ばれる領域がランダムに出現して、トレーナー同士が競い合うZAロワイヤルというポケモンバトルの文化があったりと……人間もポケモン達も日夜問わず自由に過ごしている印象を受ける街で、私の目には新鮮に映っていた。
私はつい先日までは手持ちのポケモンを持っていなかったので、ZAロワイヤルには参加していない。……今のところは。
「フシデも元気になったら、ポケモンバトルとかやってみたい?」
「! むい!」
私は両手に抱えていたフシデに問うてみると、フシデはにこっと目を細めて、ふんふんと興奮したように触覚を揺らしていた。言葉は分からないけれど、その仕草はまるでポケモンバトルをやりたいと言っているように思えた。こういう時、ポケモンの言葉を理解して会話をしていたN様のことを思い出して、彼のことを羨ましく思う。
フシデと出逢ったのはつい3日前のことだった。ワイルドゾーンからあぶれてしまったらしいこの子は、どこもかしこも傷だらけで、とても弱っていた。その様子を見てどうしても放っておけなかった私は、この子を抱えてポケモンセンターまで連れて行き、治療してもらったのだ。連れて来るタイミングがもう少し遅かったら、このフシデはこの世界にいなくなっていたかもしれないとジョーイさんから聞いた時、私は心底間に合ってよかったと胸を撫で下ろした。
そんな経緯を経て、私はこのフシデと出逢った。この子が本格的に元気になるまで、私はこの子のお世話をするつもりだ。フシデが野生へと帰る道を選ぶのか、はたまた私の手持ちになるのかは……フシデが本調子に戻った時に考えようと思う。
「今日はね、フシデと一緒に行きたいカフェがあるんだ!」
「むい〜♪」
今日のミアレシティの空はよく晴れ、風は穏やかで、街全体がどこか軽やかに光をまとっていた。
私はフシデとともに、予約していた小さなカフェへ向かう。
ミアレの喧騒から少し離れた場所にある、お客さんの入りも控えめでゆったりと落ち着けると有名なカフェらしい。
席に着くと、フシデは私の膝にちょこんと乗り、満足そうに身体を震わせた。
「ふふ、良かったね。こういう静かなところ、落ち着くよね」
先日まで迷子になっていた自分が嘘のようだ。
さっそくメニューを開き、大好きなチーズケーキとモココーヒーを頼む。
砂糖の香りが広がり、フシデも嬉しそうに身を揺らした。
──その時だった。
「ミアレ観光、楽しんどるか? ライラちゃん」
背筋が凍てつくような錯覚を覚えるほどの冷たい声音を掛けられて、私は恐る恐る振り返る。
「1週間ぶりやな。元気そうでなによりや」
「えっ……? あ、あの……あなた、は……?」
そこにいたのは、毒タイプを思わせる特徴的なデザインが施されている黒基調のスーツに身を包み、金色の鋭い三白眼を宿した、まるでこの街の“裏”を掌握しているかのような気迫を纏っている男性だった。背丈は小柄な部類に入るだろうに、全身から溢れ出ている威圧感が、それを感じさせない。圧倒的な存在感から放たれているプレッシャーに、私は頭の回転が鈍くなる。
ひさしぶり? 1週間ぶりって、なに?
というか、この人……どうして……。
「……え? あ……あ……?」
私の声は震えていた。
私のそんな様子を見たフシデも警戒したように背を丸め、触角を震わせている。
男はゆっくり私のテーブルに近づき、まるで遊ぶような調子で微笑んだ。
「ここ、座ってもええ?」
「ひっ、っ……! は、はい……ど、どうぞ……」
私の意思を一応聞いてくれてはいたけれど。断るのを許されない雰囲気だったから、私はしどろもどろに頷くしかない。
「なに怯えとるん? こないなところで取って食ったりせんのに……びくびくしてておもろいな、ライラちゃんは」
からからと笑っている目の前の男への違和感の正体に気づく。そして、たまらなく怖くて逃げ出したい衝動に駆られていた。
この人、どうして……私の名前を知っているの?
「う、えと……あの……」
目の前に座る得体の知れない男の顔をまともに見ることができない。恐怖で言葉をうまく紡げず、私は挙動不審に目をきょろきょろと泳がす。
「さっきから随分他人行儀で寂しいやん。もしかして、オレのこと忘れとる? あ、この眼鏡掛けとるからか」
一向に私が男に視線を合わせようとしないことに痺れを切らしたのか、男はわざとらしく茶化したように言うと、おもむろに毒々しいデザインの眼鏡をかちゃりと外した。すると、険しい顔つきの印象だった男の顔が、幾分か穏やかな顔つきの印象へと変わる。……その素顔は、一週間前、私がミアレで迷子になっていたところを助けてくれた、優しくてカッコいいお兄さんと同じものだった。
「あっ……!? あの時の、人……?」
「嬉しいわあ。やっと気づいてくれたんやな」
にこっと男は嬉しそうに口元に弧を描いているが、私の心はざわついてやまなかった。
一週間前の“優しい案内人”が、まるで別人だ。
「……あの、どうして……私の名前を?」
意を決して問い掛けると、男は口角を上げる。
「なんでって……そら知っとるからに決まっとるやろ。一週間前楽しゅうお喋りした仲やん」
「……教えてません……けど……」
私の記憶が正しければ、彼とは確かにそこそこの時間会話を交わしたけれど、自己紹介までした覚えなんてない。現に、私は目の前にいる男の名前など知らないのだ。それなのに、どうしてこの人は一方的に私の名前を知っているの?
とてつもなく怖かったけれど、そこは流してはいけないと思って……私はその疑問を男にぶつける。
「おー。そういうトコは頭回るんかいな」
軽く指先でテーブルを叩きながら、男は楽しそうに笑った。その笑みは冷たく、余裕があり、そして──どこか私を、すでに読み終えたような目つきだった。
「せやけど、警戒心発揮するのはちょーっと遅かったな?」
「……え?」
「オマエがイッシュ地方でプラズマ団の団員やっとったこと。ゲーチスとかいう胡散臭い男の街頭演説に共感して、結果的に家族ごと足洗われへんようになったこと。逃げるみたいに旅し続けて、このミアレまで来たこと。ぜーんぶ知っとるさかい」
「ひっ……!!」
心臓を鷲掴みにされたような痛み。
椅子の脚がわずかに軋み、私は恐怖から体を震わせてしまう。
その反応すら、彼には“想定内”のようだった。
「隠し事しようとしても無駄やで?」
「な、なんで……そんな……どうして……」
「調べたらすぐや。オレ、そういうん調べさせるの得意なんや。……ライラ、オマエのこと、なーんでも知っとるで?」
どうして。
一週間前会ったばかりの相手に、なんでここまで深く知られているの。
恐怖と困惑、理解が追いつかないという混乱で頭がぐるぐると巡った。男は私の動揺をまるごと愉しむように見つめ、静かに告げてくる。
「オマエみたいな女、ミアレに来るの珍しい思てな。興味湧いてしもたんや。……気になった女のこと知りたい思うんは、悪いことやないやろ?」
「……っ……!」
背筋に冷たい刃を滑らされたような感覚。
この街で見つかると思っていた“答え”が、違う形で牙を剝き始めていた。
ゆっくりと、じわじわと。
私の日常へ、彼の毒が染み込んでくる気がした。
「ライラはもうミアレ来て一週間は経つから、噂で聞いとるかもしれんけど……オレ、サビ組のボスやらせてもろてるカラスバって言うねん。改めて……これからよろしゅうな、ライラ」
カラスバと名乗った男は、震える私の手を取って……どうしてか愛おしげな面持ちで、指先に恭しく口付けてきた。すっかり冷え切ってしまった指先から、男の唇の熱がじわじわと伝わってくる。
まるで、逃げられないように、確実に囲われていく。
そんな予感が、不気味なほど鮮明になった。
ワイルドゾーンと呼ばれる、野生のポケモン達が生息する区画があったり、夜間になるとバトルゾーンと呼ばれる領域がランダムに出現して、トレーナー同士が競い合うZAロワイヤルというポケモンバトルの文化があったりと……人間もポケモン達も日夜問わず自由に過ごしている印象を受ける街で、私の目には新鮮に映っていた。
私はつい先日までは手持ちのポケモンを持っていなかったので、ZAロワイヤルには参加していない。……今のところは。
「フシデも元気になったら、ポケモンバトルとかやってみたい?」
「! むい!」
私は両手に抱えていたフシデに問うてみると、フシデはにこっと目を細めて、ふんふんと興奮したように触覚を揺らしていた。言葉は分からないけれど、その仕草はまるでポケモンバトルをやりたいと言っているように思えた。こういう時、ポケモンの言葉を理解して会話をしていたN様のことを思い出して、彼のことを羨ましく思う。
フシデと出逢ったのはつい3日前のことだった。ワイルドゾーンからあぶれてしまったらしいこの子は、どこもかしこも傷だらけで、とても弱っていた。その様子を見てどうしても放っておけなかった私は、この子を抱えてポケモンセンターまで連れて行き、治療してもらったのだ。連れて来るタイミングがもう少し遅かったら、このフシデはこの世界にいなくなっていたかもしれないとジョーイさんから聞いた時、私は心底間に合ってよかったと胸を撫で下ろした。
そんな経緯を経て、私はこのフシデと出逢った。この子が本格的に元気になるまで、私はこの子のお世話をするつもりだ。フシデが野生へと帰る道を選ぶのか、はたまた私の手持ちになるのかは……フシデが本調子に戻った時に考えようと思う。
「今日はね、フシデと一緒に行きたいカフェがあるんだ!」
「むい〜♪」
今日のミアレシティの空はよく晴れ、風は穏やかで、街全体がどこか軽やかに光をまとっていた。
私はフシデとともに、予約していた小さなカフェへ向かう。
ミアレの喧騒から少し離れた場所にある、お客さんの入りも控えめでゆったりと落ち着けると有名なカフェらしい。
席に着くと、フシデは私の膝にちょこんと乗り、満足そうに身体を震わせた。
「ふふ、良かったね。こういう静かなところ、落ち着くよね」
先日まで迷子になっていた自分が嘘のようだ。
さっそくメニューを開き、大好きなチーズケーキとモココーヒーを頼む。
砂糖の香りが広がり、フシデも嬉しそうに身を揺らした。
──その時だった。
「ミアレ観光、楽しんどるか? ライラちゃん」
背筋が凍てつくような錯覚を覚えるほどの冷たい声音を掛けられて、私は恐る恐る振り返る。
「1週間ぶりやな。元気そうでなによりや」
「えっ……? あ、あの……あなた、は……?」
そこにいたのは、毒タイプを思わせる特徴的なデザインが施されている黒基調のスーツに身を包み、金色の鋭い三白眼を宿した、まるでこの街の“裏”を掌握しているかのような気迫を纏っている男性だった。背丈は小柄な部類に入るだろうに、全身から溢れ出ている威圧感が、それを感じさせない。圧倒的な存在感から放たれているプレッシャーに、私は頭の回転が鈍くなる。
ひさしぶり? 1週間ぶりって、なに?
というか、この人……どうして……。
「……え? あ……あ……?」
私の声は震えていた。
私のそんな様子を見たフシデも警戒したように背を丸め、触角を震わせている。
男はゆっくり私のテーブルに近づき、まるで遊ぶような調子で微笑んだ。
「ここ、座ってもええ?」
「ひっ、っ……! は、はい……ど、どうぞ……」
私の意思を一応聞いてくれてはいたけれど。断るのを許されない雰囲気だったから、私はしどろもどろに頷くしかない。
「なに怯えとるん? こないなところで取って食ったりせんのに……びくびくしてておもろいな、ライラちゃんは」
からからと笑っている目の前の男への違和感の正体に気づく。そして、たまらなく怖くて逃げ出したい衝動に駆られていた。
この人、どうして……私の名前を知っているの?
「う、えと……あの……」
目の前に座る得体の知れない男の顔をまともに見ることができない。恐怖で言葉をうまく紡げず、私は挙動不審に目をきょろきょろと泳がす。
「さっきから随分他人行儀で寂しいやん。もしかして、オレのこと忘れとる? あ、この眼鏡掛けとるからか」
一向に私が男に視線を合わせようとしないことに痺れを切らしたのか、男はわざとらしく茶化したように言うと、おもむろに毒々しいデザインの眼鏡をかちゃりと外した。すると、険しい顔つきの印象だった男の顔が、幾分か穏やかな顔つきの印象へと変わる。……その素顔は、一週間前、私がミアレで迷子になっていたところを助けてくれた、優しくてカッコいいお兄さんと同じものだった。
「あっ……!? あの時の、人……?」
「嬉しいわあ。やっと気づいてくれたんやな」
にこっと男は嬉しそうに口元に弧を描いているが、私の心はざわついてやまなかった。
一週間前の“優しい案内人”が、まるで別人だ。
「……あの、どうして……私の名前を?」
意を決して問い掛けると、男は口角を上げる。
「なんでって……そら知っとるからに決まっとるやろ。一週間前楽しゅうお喋りした仲やん」
「……教えてません……けど……」
私の記憶が正しければ、彼とは確かにそこそこの時間会話を交わしたけれど、自己紹介までした覚えなんてない。現に、私は目の前にいる男の名前など知らないのだ。それなのに、どうしてこの人は一方的に私の名前を知っているの?
とてつもなく怖かったけれど、そこは流してはいけないと思って……私はその疑問を男にぶつける。
「おー。そういうトコは頭回るんかいな」
軽く指先でテーブルを叩きながら、男は楽しそうに笑った。その笑みは冷たく、余裕があり、そして──どこか私を、すでに読み終えたような目つきだった。
「せやけど、警戒心発揮するのはちょーっと遅かったな?」
「……え?」
「オマエがイッシュ地方でプラズマ団の団員やっとったこと。ゲーチスとかいう胡散臭い男の街頭演説に共感して、結果的に家族ごと足洗われへんようになったこと。逃げるみたいに旅し続けて、このミアレまで来たこと。ぜーんぶ知っとるさかい」
「ひっ……!!」
心臓を鷲掴みにされたような痛み。
椅子の脚がわずかに軋み、私は恐怖から体を震わせてしまう。
その反応すら、彼には“想定内”のようだった。
「隠し事しようとしても無駄やで?」
「な、なんで……そんな……どうして……」
「調べたらすぐや。オレ、そういうん調べさせるの得意なんや。……ライラ、オマエのこと、なーんでも知っとるで?」
どうして。
一週間前会ったばかりの相手に、なんでここまで深く知られているの。
恐怖と困惑、理解が追いつかないという混乱で頭がぐるぐると巡った。男は私の動揺をまるごと愉しむように見つめ、静かに告げてくる。
「オマエみたいな女、ミアレに来るの珍しい思てな。興味湧いてしもたんや。……気になった女のこと知りたい思うんは、悪いことやないやろ?」
「……っ……!」
背筋に冷たい刃を滑らされたような感覚。
この街で見つかると思っていた“答え”が、違う形で牙を剝き始めていた。
ゆっくりと、じわじわと。
私の日常へ、彼の毒が染み込んでくる気がした。
「ライラはもうミアレ来て一週間は経つから、噂で聞いとるかもしれんけど……オレ、サビ組のボスやらせてもろてるカラスバって言うねん。改めて……これからよろしゅうな、ライラ」
カラスバと名乗った男は、震える私の手を取って……どうしてか愛おしげな面持ちで、指先に恭しく口付けてきた。すっかり冷え切ってしまった指先から、男の唇の熱がじわじわと伝わってくる。
まるで、逃げられないように、確実に囲われていく。
そんな予感が、不気味なほど鮮明になった。
