デフォルト名は「ライラ」になります。
カラスバ(ZA)×固定夢主🪻
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電車が停止した瞬間、胸の奥で小さく脈打つものを感じた。
ミアレシティ──ポケモンと人間の共存を目指し、近年都市開発が進みつつある街だという。
私は思った。もし、その噂が本当ならば。私はその街へ一度は赴くべきなのだろうと。
7年前、プラズマ団として活動していた私は、人間とポケモンは共にいるべきではないと声高に叫び、多くのトレーナーとポケモン達の絆を引き裂いてしまった。
ゲーチスの街頭演説一つに踊らされ、ポケモン達は人間に縛られるべき存在ではないのだと信じてやまなかった自分の考えの浅はかさ。強く思い込んでしまったが故に数多の人間とポケモン達を結果的に傷つけてしまった……自分の罪と向き合う為に。自分の極端過ぎた考えを改める為にも……ミアレシティに足を踏み入れようと決意したのだ。
ポケモンと人間が共生する世界の一端を見てみたかったから。その世界の実現に向かおうとする街を一目でも見て、知ることができれば……私なりの答えを、見つけられそうだと思ったから。
***
人々の喧騒、行き交うポケモン達の鳴き声。今まで多くの見知らぬ街を渡り歩いてきたけれど、ミアレシティが纏う空気感はどことなく自由で、軽やかなもののように思えた。様々な人やポケモン達をありのままに受け入れてくれる……そんな自由さを感じる街だとなんとなく思った。
(ここなら……もしかしたら、本当に……)
半信半疑の願いを胸に、私は予約しておいたホテルへ向かうことにした。
……けれど、その数分後。私の足は、ぴたりと歩みを止めてしまった。
地図を見ても、どこに進めば目的地にたどり着くのかが分からない。ミアレシティはとにかく巨大な街で、方向感覚が狂ってしまったのだ。私の故郷のヒウンシティもかなり大きな街だったと記憶しているけれど、その比じゃない。広いだけならまだしも、施設が豊富にあるし、多くの広場が複雑に繋がっているため、迂闊に動くことができなかったのだ。
人波の勢いに押されて、意図せず路地裏へ紛れ込む。
気がつけば、どちらから来たのかすら分からない地点に立っていた。
「……どうしよう……」
心細さから、思わず独り言をぽつりと漏らしてしまった。こういう時にポケモンがいてくれたら、きっと心強いのだろうなと思うのだけれど。7年前、プラズマ団に属していた時に、手持ちのポケモンを野生へと解放してしまった私に、そんなことに思いを馳せる資格などなかったのだ。
(タクシー……は、どこ……?)
大通りに戻ろうと彷徨ったが、道は入り組み、見える建物はどれも似たような外観。
途方に暮れていたその時だった。
「おねえさん、迷っとるんか?」
低いがよく通る声だった。
振り返ると、距離を置いて立つ男性がひとり。
黒髪を無造作にまとめ、ジャケットを羽織り、どこか都会の匂いをまとった青年だった。
(わっ……!! すごい、カッコいい……!!)
思わず息が止まるほど、整っている鋭い顔立ち。
切れ長の瞳が、静かな光を宿して私をまっすぐに見据えていた。
初対面のはずなのに、不思議と“ただ者ではない”という印象を受ける。けれど、その口調は意外にも柔らかかった。
「ミアレ、初めてか?」
「は……はい。えっと……迷子になってしまって……」
恥ずかしいほど情けない声が出てしまう。
彼は喉の奥でクスッと笑い、少し顎をしゃくった。
「観光客ってとこか。ホテル向かっとったんやろ? どこ泊まるん?」
「この……ホテルなのですが、行き方が分からなくて……」
「ここか。ならすぐやで。案内したるわ」
「あ、いえ……そこまでしていただかなくても……」
「ミアレは広いし複雑や。迷子のまま歩き回るほうが危ないで?」
軽く肩を竦める仕草に、妙な説得力があって。断る理由が見つけられなかった。
「ほな行こか。安心し? ちゃんと送ったる」
「は、はい! あ、ありがとうございます……!」
私は彼の厚意に甘えることにした。彼と並んで歩き始めると、ほんの短い道のりの間に、いくつか会話が生まれた。
「おねえさん、ポケモンは?」
「えっ、えっと……実はいないんです。昔、いろいろあって……その……」
「ふーん? 一匹も連れとらんの、意外やな。よう旅してたんやろ?」
「……あ、はい」
誤魔化すように笑ったが、胸の奥がちくちくとうずく。
私のこの旅が、逃避であり、贖罪であり……「自分が何をしたいのか」を探す為の旅であったことを、改めて突きつけられた気がしたから。
彼はそれ以上深く聞かず、代わりに道すがらミアレの店の話や、最近の流行を軽く語ってくれた。
それが妙に自然で、空気のように軽やかで……久しく忘れていた普通の会話だった。
「着いたで」
気づけば、ホテルのすぐ前だった。
ほんの数十分――なのに、ずいぶん心が軽くなっていた。
「あ、ありがとうございました。本当に……助かりました」
「ええよ。ミアレ、めっちゃええ街やから。楽しんでいき」
微笑む彼の表情は、都会のネオンよりも鮮やかで。
一瞬、見惚れてしまうほどに整っていた。
(こんな親切な人がいるなんて……)
その夜、ホテルの部屋で私はほのぼのと振り返っていた。
「いい人に……しかも好みのイケメンに助けてもらえて……ほんと、ラッキーな一日だったなあ」
胸がほくほくと温かくて、幸せな気分に包まれていた。
明日もこの街を歩けば、もしかしたら何か見つかるかもしれない。
希望が、久しぶりに灯っていた。
──その時の私はまだ知らなかった。
今日出会ったあの青年が、後に私の運命を狂わせる「サビ組」と呼ばれる組織のボス──カラスバであることを。
自分のこの時の呑気さを、本気で呪うことになることを。
ミアレシティ──ポケモンと人間の共存を目指し、近年都市開発が進みつつある街だという。
私は思った。もし、その噂が本当ならば。私はその街へ一度は赴くべきなのだろうと。
7年前、プラズマ団として活動していた私は、人間とポケモンは共にいるべきではないと声高に叫び、多くのトレーナーとポケモン達の絆を引き裂いてしまった。
ゲーチスの街頭演説一つに踊らされ、ポケモン達は人間に縛られるべき存在ではないのだと信じてやまなかった自分の考えの浅はかさ。強く思い込んでしまったが故に数多の人間とポケモン達を結果的に傷つけてしまった……自分の罪と向き合う為に。自分の極端過ぎた考えを改める為にも……ミアレシティに足を踏み入れようと決意したのだ。
ポケモンと人間が共生する世界の一端を見てみたかったから。その世界の実現に向かおうとする街を一目でも見て、知ることができれば……私なりの答えを、見つけられそうだと思ったから。
***
人々の喧騒、行き交うポケモン達の鳴き声。今まで多くの見知らぬ街を渡り歩いてきたけれど、ミアレシティが纏う空気感はどことなく自由で、軽やかなもののように思えた。様々な人やポケモン達をありのままに受け入れてくれる……そんな自由さを感じる街だとなんとなく思った。
(ここなら……もしかしたら、本当に……)
半信半疑の願いを胸に、私は予約しておいたホテルへ向かうことにした。
……けれど、その数分後。私の足は、ぴたりと歩みを止めてしまった。
地図を見ても、どこに進めば目的地にたどり着くのかが分からない。ミアレシティはとにかく巨大な街で、方向感覚が狂ってしまったのだ。私の故郷のヒウンシティもかなり大きな街だったと記憶しているけれど、その比じゃない。広いだけならまだしも、施設が豊富にあるし、多くの広場が複雑に繋がっているため、迂闊に動くことができなかったのだ。
人波の勢いに押されて、意図せず路地裏へ紛れ込む。
気がつけば、どちらから来たのかすら分からない地点に立っていた。
「……どうしよう……」
心細さから、思わず独り言をぽつりと漏らしてしまった。こういう時にポケモンがいてくれたら、きっと心強いのだろうなと思うのだけれど。7年前、プラズマ団に属していた時に、手持ちのポケモンを野生へと解放してしまった私に、そんなことに思いを馳せる資格などなかったのだ。
(タクシー……は、どこ……?)
大通りに戻ろうと彷徨ったが、道は入り組み、見える建物はどれも似たような外観。
途方に暮れていたその時だった。
「おねえさん、迷っとるんか?」
低いがよく通る声だった。
振り返ると、距離を置いて立つ男性がひとり。
黒髪を無造作にまとめ、ジャケットを羽織り、どこか都会の匂いをまとった青年だった。
(わっ……!! すごい、カッコいい……!!)
思わず息が止まるほど、整っている鋭い顔立ち。
切れ長の瞳が、静かな光を宿して私をまっすぐに見据えていた。
初対面のはずなのに、不思議と“ただ者ではない”という印象を受ける。けれど、その口調は意外にも柔らかかった。
「ミアレ、初めてか?」
「は……はい。えっと……迷子になってしまって……」
恥ずかしいほど情けない声が出てしまう。
彼は喉の奥でクスッと笑い、少し顎をしゃくった。
「観光客ってとこか。ホテル向かっとったんやろ? どこ泊まるん?」
「この……ホテルなのですが、行き方が分からなくて……」
「ここか。ならすぐやで。案内したるわ」
「あ、いえ……そこまでしていただかなくても……」
「ミアレは広いし複雑や。迷子のまま歩き回るほうが危ないで?」
軽く肩を竦める仕草に、妙な説得力があって。断る理由が見つけられなかった。
「ほな行こか。安心し? ちゃんと送ったる」
「は、はい! あ、ありがとうございます……!」
私は彼の厚意に甘えることにした。彼と並んで歩き始めると、ほんの短い道のりの間に、いくつか会話が生まれた。
「おねえさん、ポケモンは?」
「えっ、えっと……実はいないんです。昔、いろいろあって……その……」
「ふーん? 一匹も連れとらんの、意外やな。よう旅してたんやろ?」
「……あ、はい」
誤魔化すように笑ったが、胸の奥がちくちくとうずく。
私のこの旅が、逃避であり、贖罪であり……「自分が何をしたいのか」を探す為の旅であったことを、改めて突きつけられた気がしたから。
彼はそれ以上深く聞かず、代わりに道すがらミアレの店の話や、最近の流行を軽く語ってくれた。
それが妙に自然で、空気のように軽やかで……久しく忘れていた普通の会話だった。
「着いたで」
気づけば、ホテルのすぐ前だった。
ほんの数十分――なのに、ずいぶん心が軽くなっていた。
「あ、ありがとうございました。本当に……助かりました」
「ええよ。ミアレ、めっちゃええ街やから。楽しんでいき」
微笑む彼の表情は、都会のネオンよりも鮮やかで。
一瞬、見惚れてしまうほどに整っていた。
(こんな親切な人がいるなんて……)
その夜、ホテルの部屋で私はほのぼのと振り返っていた。
「いい人に……しかも好みのイケメンに助けてもらえて……ほんと、ラッキーな一日だったなあ」
胸がほくほくと温かくて、幸せな気分に包まれていた。
明日もこの街を歩けば、もしかしたら何か見つかるかもしれない。
希望が、久しぶりに灯っていた。
──その時の私はまだ知らなかった。
今日出会ったあの青年が、後に私の運命を狂わせる「サビ組」と呼ばれる組織のボス──カラスバであることを。
自分のこの時の呑気さを、本気で呪うことになることを。
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