Clear a Stage

◇ ジェイド視点


「条件がまた変わったんすね」

 カードをピンと弾きながらジャックが笑う。その笑い方の苦しさにジェイドは違和感を覚える。何がそんな苦しいのか。寧ろ、その顔をするのは自分のはずだ。
 もしや、と期待が込み上げる。この数時間の間に絆されてくれたのか。チョロ過ぎるとは思ったけれどこんなあっさり落ちてくれるものか。
 これはなんて行幸だ。そして、噂は本当だったのだ。この部屋は閉じ込められた二人は恋人になる。なんてことだ。
 嬉しさに頬が緩みそうになるのを堪えて甘く優しい先輩の仮面をかぶる。

「どうしたんですか、ジャックくん」

 汗で濡れた前髪を払いながら苦しげな彼に問いかける。まるで恋人のようなやりとり。彼もそう思ったのか凛々しい眉がギュッと真ん中に寄った。

「どうしたって、あんたは何も思わねぇのか」

 もしかしてジャックは自分だけ想っている。その想いが拒否されると思っているのか。案外臆病者なのか。それにしてもこの展開は舞い上がる気持ちが抑えられない。

「なに笑ってんだよ」
「いえ。だって、ねぇ。ジャックくん、僕」

 もう隠せない。ジェイドは訝しげなジャックを見下ろしながら告げる。

「あなたのことが好きなんですよ」

 みるみる見開いていく金色の双眸とポカンと口を間抜けに開く。なんて間抜けな顔。それすらも愛おしくてジェイドはそのまま勢いに任せてキスをする。

「むっ!」

 突然のキスにジャックは目を閉じる暇がなかった。初めてキスをしながら目が合う。きゅぅと丸くなっていく瞳孔がよく分る。でも、その瞳ももうジェイドのものと思うと食べたくなる。

「はっ、」

 いつかその美味しそうな瞳も食べようと決めながら衝動的なキスを止めて見下ろす。まだ驚愕したまま戻って来ないジャックの名前を呼ぶ。すると大きくて可愛い耳がピコピコ動いて――。

「な、う、ぇ、なん」
「ふっ、ふふ。そんな驚きますか?」
「だって」

 信じられないというほど見開いた目にジェイドはジャックが弾いたカードをシーツから拾う。そして、カードに書かれている内容に笑みを浮かべる。

「ほら、見てください」

 カードには「条件クリア」とあった。それをジャックに見せつけると言葉にもならないのか口をパクパクとさせた。なんて反応を見ながら上体を起こして横を見れば先ほどまでなかった扉が現れていた。どうやらあの扉が学園に通じらしい。
 帰れることを確認しながらもジェイドはまだジャックの上から退くつもりはない。

「さて、ジャックくん。お返事を聞かせてください」

 もう彼の感情はお見通しだ。だけれど直接聞きたい。ジェイドが吸いに吸ったその唇を開いて。

「あなたの答えは?」


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