Clear a Stage

◆ ジャック視点


 ジャケットを脱いでいてよかった。火照る身体にジャックは息を乱しながらカードを確認する男を見上げる。
 こちらの視線に気づいたジェイドが色白の頬を赤く上気させながらカードを見せてくれた。そのカードを見ながらまだ整わない息をしながらしゃべる。

「へっ、た、」

 回数がやっと残り一回となった。終わる。やっと終わるのか。はぁと熱い息を零す自分が嫌になる。それでも深いキスもとい舌を絡め合うキスは慣れていないためか体力を消耗する。

「はぁっ、はっ、あと、いっかい」
「はい。がんばってください」

 それは先輩もだろ、と思いながらも口に出来ない。額に滲む汗を手の甲で拭う。すると、耳にギシギシと軋む音を拾う。ぐっとまた顔の横のマットレスが沈む。あの白くて綺麗な手が置かれたのだろう。
 ぼんやり考えているけれどジャックの視界は先ほどからジェイドしかいない。彼はこの体勢になってから一度も視界から消えない。

 ――きれいなひとだ。

 ジャックの周りには綺麗な人が多い。自寮の寮長も綺麗な人、同郷のあの人も綺麗な人。他にも様々な綺麗な人がいるがまさかジェイドを綺麗だと思う日が来るとは思わなかった。心境の変化に驚きながらも納得する自分にまた驚く。

「ジャックくん?」

 大丈夫ですか、と意味合いを含む呼び方に「っす」と軽く返事をする。そういえばあれだけ乱れていた呼吸も落ち着いていた。
 これで最後なのかと途端に寂しさみたいなものが心を過る。瞬間、ジャックは自分がジェイドを好きになってことに気づく。だから、終わってほしくないと思うらしい。でも、相手は早く出るために努力してくれたのだ。この気持ちはとりあえず静めておかないといけない。

 ――ここから出てからが勝負だ。

 まずこのふざけた魔法の部屋を出る。その後にどんなことがあってもジェイドに告白しよう。だから、早くこの状況を終わらそう。

「先輩、平気っす」
「そうですか……あと一回です」

 「がんばりましょうね」と言うジェイドの残念そうに見えた一瞬の表情に何か言うより前に唇が塞がれた。

「ふっ、ンむぅ、ん」

 にゅるりと舌が挿しこまれたと同時に自分からも舌を伸ばして触れる。
 お互いの舌が触れた後はゆっくりと舌を舐め合うように絡めていく。最初はびっくりしたが今になってとても気持ちよく感じる。これは相手が好きな人と認定したからなのか。

「はっ、ン、ふぅ、ぁ」

 気持ちいい。頭の芯が痺れる感じがする。これは感じ過ぎではないか。ここまで感じたら身体が変に反応してしまいそうで怖い。でも、頑張ってするしかない。
 深いキスの合格ラインは舌を絡ませること、片方だけが頑張るのも駄目でお互い頑張らなければいけない。そして、最低でも一分以上しなけrばいけない。何回もキスをしてようやく判明した合格ラインに目指してジェイドにしがみつきながら必死にキスに応える。
 舌を舐め合って絡め合って吸い合ってお互いの舌を舐めて探る。必死に呼吸をしてそれでも耐えられなくなったときにキスが終わる。

「ハッ、はっ、はぁ、んはっ」

 にゅるりとウツボのように抜けていった舌。唾液で濡れた唇を拭いながら濡れた目でジェイドを見上げる。あっちも同じくらい息が乱れて顔を赤くしている。同じだということが嬉しくなって見つめ続ける。その間にもジェイドはカードを取り出す。
 そうだ。もう終わったんだ。終わったなら扉が出現するはず。起き上がれるように息を整えているとか細い声で「え」と聞こえた。
 なんだ、と見ればジェイドが目を見開いて驚いていた。

「どうしたんすか、ジェイドせんぱい」
「……みてください」

 カードを受け取って見て目を見開いた。なるほど驚くはずだ。

〝相手に想いを告げてキスをしなければ出られない〟

 二回目の条件変更だった。

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