Clear a Stage

◆ ジャック視点


「んっ」

 ジャックはジェイドと交互にキスをした。そして、五回目のキスのときだった。触れるだけのキスしかしていないのに息が上がって来たときに変化が起きた。

「はっ、ぁ、あれ?」
「どうしました?」

 ジャケットのポケットから出したカードの回数が減っていない。五回になるはずなのにまだ六回のままだ。ジャックは慌ててジェイドにカードを渡す。

「これは……ジャックくん、見てください」
「え?」

 何かに気づいたのかジェイドがカードをこちらに向けながら指を指す。何だとカードを覗き込み指し示されたところを読んで絶句した。本日二度目の絶句だ。

〝目の前の相手と五回深いキスをしなければ出られない〟

 カードに示されていた条件に僅かな変化があった。キスの前に「深い」が挿入されている。さっきまでただのキスだったのに。

「条件が変更したから先ほどのキスでは回数が減らなかったんでしょうね」

 冷静に解説するジェイドを見ることができなかった。
 ただ唇をくっつけるだけのキスだっていっぱい、いっぱいなのだ。それが深いキス。つまり、もっと唇をくっつけるか、舌を入れるようなキスをしなければいけないということだ。
 この魔法の部屋はふざけているのか。いや、ふざけているとしかいえない。

「せんぱい、どうすれば」
「ジャックくん」

 ちょっと泣きそうになりながらチラとジェイドを見れば真剣な顔をしていた。それに少し胸が高鳴る気がしたが気のせいだ。気のせい。だが、ドキドキする心臓を抑えながら見ていれば――。

「するしかないですよ」
「ぁ、やっぱ、そうっすね」
「はい」

 しっかり真面目に頷くジェイドに羞恥地が込み上げた。そして、初めてこの男に対して尊敬の念が生まれた瞬間だった。

「先輩すごいっすね」
「もうここまで来たらやるしかありませんから」

 言ってからジェイドの視線が外れた。どこへ向かったのか視線を辿るとベッドがあった。何故ベッドを見ているのか不思議に思うと。

「そろそろ座りましょう」

 言ってジャックが返事をするより早くベッドに腰を掛けた。何だかベッドに座る彼の姿に得も言えぬ気持ちが込み上げながらジャックもつられるように座る。

「あ、結構いいベッドっすね」
「ですよね」

 座り心地というかいい感じの沈み具合。ちょっと横になりたい気持ちすら湧く。隣のジェイドもそうなのか。少し和やかな雰囲気が流れるがすぐに話は戻る。

「さて、次は僕ですね」
「……はい」

 自分の番だったとしてもり深いキスをする勇気はジャックにはない。申し訳ないが自分の番だったら先輩であるジェイドに任せた。だから、この順番はありがたい。

「深いというのがよく分りませんね。上手くいかなかったらすいません」
「気にしないっす」

 今さら、と付け足せばジェイドの目が細くなる。けど、その双眸の柔らかさにジャックは大分絆されたのだと自覚した。

「ふふ。ありがとうございます」
「じゃ、その、よろしくお願いします」

 ギュッと癖で強く目を瞑った。


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