Clear a Stage

◇ ジェイド視点


 自分から触れた唇が今度はあっちからやって来た。恐る恐るといった気配が目を閉じていても分かり心の中で小さく笑う。これであと残り九回、いや八回できるのか。やっぱりジェイドからした方がいいかもしれない。でも、ジャックからの初々しいキスも捨てがたい。
 色々考えていたら唇が触れた。震える唇はすぐにパッと離れた。あまりにも触れるだけのキスにカウントされるのだろうか。
 パチと目を開くと耳を伏せて赤面している狼がいた。苦笑しながらジェイドは「カード見ました?」と訊ねる。
 ジャックは我に返ってジャケットに入れていたカードを取り出す。

「ぁ、減ってます」

 安心気味に言うジャックがこちらにカードを渡して来た。それを受け取って見ればちゃんとは回数が減って八回になっていた。
 ほんの触れるだけキスでいいのか。あれでいいのか。あれで。もやっと不満に思いながらジャケットのポケットにカードを仕舞う。

「今度は僕からしましょう」
「ぇ、あ、っすね」

 「お願いしやすッ!」と強気に返してくる。気合の入り方を微笑ましく重いながらジャックに向き合うとビクとまた身体が跳ねてふさふさの尻尾が足の間に納まっていた。それを指摘するのもいいが臍を曲げられるのが見えているため今回は言わない。今回は。

「さ、ジャックくん、早く終わらせましょう」
「なんかあんた少し楽しそうだな」
「ふふ。まぁ、ここの魔法の部屋は中々興味深いですから」
「でも早く出ようとしてくれているんだな」

 おや、とジェイドはジャックの中で勝手に自分の好感度が上がっている気配がした。やっぱり、この魔法の部屋は吊り橋効果的なものがあるらしい。でも、これはこれでしっかり有効活用すべくジャックに好印象を与えるように努めることにしたが難しい。

「一人だったら気が済むまで調べます。それで再現できるならば……ねぇ」

 意味深長気に含ませた言い方をすればジャックが半眼する。上がった好感度が下がったような気がする。やっぱり恋愛って難しい。

「ジャックくん。また目瞑りますか?」
「……っす」

 ギュッとまた強く瞑り唇が一文字になっている。そこまで力を入れなくても。それにそこまで唇に力が入っているとキスがやり辛い。

「唇、少し力を抜いて」
「ッ、すんませっ」
「謝らないでいいですよ」

 一文字に引かれた唇の力が緩んで薄らと開く。このまま深くキスをしたい衝動に駆られるが嫌われたくない。ジェイドはお利口な仔犬が怖がらない優しく唇を重ねた。

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