ジェイド × ジャック
惚れた弱みとはこういうことか
放課後の一瞬の出来事だった。気を抜いていたわけではない。けれど、学園で一日中気を張っているわけでもない。でも、頭の中で明日の休みに何をするか計画を立てていたから気は抜いていたかもしれない。
いきなり開いた扉に引っ張りこまれた。あまりの力に踏ん張りも聞かずに引っ張り込まれ教室の床に無様に倒れ伏すことになった。
これほどの力となれば同じ獣人属かとすぐに体勢を立て直そうとしたけれど出来なかった。ジャックは強制的に床に押し付けられた。
魔法を使われたようだ。すぐにマジカルペンで対応したいが腕が床に貼りついたように動かせない。ぐわっと怒りが湧き起こる。一体、こんな卑怯な真似をするのは誰だ、と動く首で上を向いて目を瞠った。
「じぇい――」
「すいませんね。ジャックくん」
「ふっむぅ」
ジャックを魔法まで使って床に押し付けたのは二年生の先輩ジェイド・リーチだった。名前を呼ぼうとしたジャックだが呼ぶ前に口を謝罪とほぼ同時に塞がれてしまった。
ぴったりと合わさった唇にジャックは声を上げて抗議する。しかし、それは虚しくジェイドの唇の中に消えてしまう。
肩を押したいけれど魔法で床に貼りついているし、今ではジェイドに指を絡めて縫い付けられている。魔法が切れても彼の腕力で抑え込められてしまう。
一見細身のジェイドでも結構力がある。組手ならばどうにもやり返せるがこういう状況のときのジャックはどうにも彼と、彼の片割れには勝てない。
ならば舌を突っ込まれる前に唇に噛みつこうとしてももう遅い。
「ふぁ」
にゅるりと挿しこまれた細長い薄い舌が悪戯に上顎を擽る。それから尖った舌先で歯列をなぞられて擽ったさに身体が震える。
それから散々口の中を荒らされ続けた。こちらの舌は痺れて緩慢になっているのにジェイドの舌は活きがいい魚のように動き続ける。本人がウツボの人魚だから活きがいいのかもしれないとよく分らない考えに陥ったときにようやくそれが終わった。
にゅるりと入って来たときと同じように細長い薄い舌がジャックの口から出て行った。瞬間、ジャックは顔を横にして盛大に噎せる。本当は身体を丸めたいところだがジェイドが馬乗りかつ腕を押さえつけているからできない。
ゼェゼェと息を整えながら涙目になった目で襲って来た男を睨む。
「ジェッ、なんっ、す、かっ」
「おやおや。まだ息が整っていないのなら無理して喋らない方がいいですよ」
唇を濡らしたまま薄らと微笑むジェイドにジャックは俄かに恐怖を覚えて耳を伏せる。息切れ一つしていない男の左右で異なる瞳が妖しくゆらゆら揺れている。
「な、なんすか」
「それはこちらの質問です。何をそんな怯えているんですか」
くすくす笑うジェイドの唇の隙間から滅多に見えないギザギザの歯が見えた。眉は困っているように下がっているのに唇は愉しげに弧を描いている。
「ジェイド先輩……なんで機嫌悪いんだ」
指摘すれば愉しげに弧を描いていた唇がひん曲がった。こういう表情はフロイドはよくするが彼がするのは珍しい。
その珍しい表情のままジェイドがジャックの上に倒れ込んで来た。チャリっといつもなら当たらない彼のピアスが当る。
「ピアス危ないだろ。起きろ」
「嫌です」
子どものような返事に溜息が零れる。もう息はすっかりと整ったし、魔法の拘束も解けて退かすことも出来るけれど出来ない。
「なんかあったのかよ」
「別に何でも」
そういう声じゃない。一体何なんのだ。フロイドたちに絡まずに直接ジャックに来たなら自分に不満があるときだ。
「おい。はっきり言えよ、ジェイドせ――ッ」
首筋に生暖かい柔らかなモノが這った。その正体は先ほど自分の口を蹂躙したモノと同じに違いない。
「先輩!」
ぐいっと両肩を掴んで無理矢理引き離す。
べッと舌を出していた彼はそれを仕舞い込み毒を孕んだ笑みを唇に描いた。それからジャックの手を両肩から外して再び指を絡めてそこに口づけた。
「フロイドと愉しんだでしょう。なら、今度は僕の番です。ねぇ、そうでしょう」
ジャックくん、という声に自分は面倒くさい双子に惚れてしまったのか。
「あ~。はいはい。いいっすよ」
もう今日は好きにさせてやろう。そういう態度にジェイドは半分満足と、半分不満という複雑な表情だ。
「はぁ。今日はジェイド先輩のしたいことたくさんしましょう」
「で、何したいんだ」と訊ねればようやく満足げに目尻を下げたジェイドがいた。
本当に面倒くさい人魚たちだな。
でも、そこが何故か可愛いと思ってしまうのだからしょうがない。
放課後の一瞬の出来事だった。気を抜いていたわけではない。けれど、学園で一日中気を張っているわけでもない。でも、頭の中で明日の休みに何をするか計画を立てていたから気は抜いていたかもしれない。
いきなり開いた扉に引っ張りこまれた。あまりの力に踏ん張りも聞かずに引っ張り込まれ教室の床に無様に倒れ伏すことになった。
これほどの力となれば同じ獣人属かとすぐに体勢を立て直そうとしたけれど出来なかった。ジャックは強制的に床に押し付けられた。
魔法を使われたようだ。すぐにマジカルペンで対応したいが腕が床に貼りついたように動かせない。ぐわっと怒りが湧き起こる。一体、こんな卑怯な真似をするのは誰だ、と動く首で上を向いて目を瞠った。
「じぇい――」
「すいませんね。ジャックくん」
「ふっむぅ」
ジャックを魔法まで使って床に押し付けたのは二年生の先輩ジェイド・リーチだった。名前を呼ぼうとしたジャックだが呼ぶ前に口を謝罪とほぼ同時に塞がれてしまった。
ぴったりと合わさった唇にジャックは声を上げて抗議する。しかし、それは虚しくジェイドの唇の中に消えてしまう。
肩を押したいけれど魔法で床に貼りついているし、今ではジェイドに指を絡めて縫い付けられている。魔法が切れても彼の腕力で抑え込められてしまう。
一見細身のジェイドでも結構力がある。組手ならばどうにもやり返せるがこういう状況のときのジャックはどうにも彼と、彼の片割れには勝てない。
ならば舌を突っ込まれる前に唇に噛みつこうとしてももう遅い。
「ふぁ」
にゅるりと挿しこまれた細長い薄い舌が悪戯に上顎を擽る。それから尖った舌先で歯列をなぞられて擽ったさに身体が震える。
それから散々口の中を荒らされ続けた。こちらの舌は痺れて緩慢になっているのにジェイドの舌は活きがいい魚のように動き続ける。本人がウツボの人魚だから活きがいいのかもしれないとよく分らない考えに陥ったときにようやくそれが終わった。
にゅるりと入って来たときと同じように細長い薄い舌がジャックの口から出て行った。瞬間、ジャックは顔を横にして盛大に噎せる。本当は身体を丸めたいところだがジェイドが馬乗りかつ腕を押さえつけているからできない。
ゼェゼェと息を整えながら涙目になった目で襲って来た男を睨む。
「ジェッ、なんっ、す、かっ」
「おやおや。まだ息が整っていないのなら無理して喋らない方がいいですよ」
唇を濡らしたまま薄らと微笑むジェイドにジャックは俄かに恐怖を覚えて耳を伏せる。息切れ一つしていない男の左右で異なる瞳が妖しくゆらゆら揺れている。
「な、なんすか」
「それはこちらの質問です。何をそんな怯えているんですか」
くすくす笑うジェイドの唇の隙間から滅多に見えないギザギザの歯が見えた。眉は困っているように下がっているのに唇は愉しげに弧を描いている。
「ジェイド先輩……なんで機嫌悪いんだ」
指摘すれば愉しげに弧を描いていた唇がひん曲がった。こういう表情はフロイドはよくするが彼がするのは珍しい。
その珍しい表情のままジェイドがジャックの上に倒れ込んで来た。チャリっといつもなら当たらない彼のピアスが当る。
「ピアス危ないだろ。起きろ」
「嫌です」
子どものような返事に溜息が零れる。もう息はすっかりと整ったし、魔法の拘束も解けて退かすことも出来るけれど出来ない。
「なんかあったのかよ」
「別に何でも」
そういう声じゃない。一体何なんのだ。フロイドたちに絡まずに直接ジャックに来たなら自分に不満があるときだ。
「おい。はっきり言えよ、ジェイドせ――ッ」
首筋に生暖かい柔らかなモノが這った。その正体は先ほど自分の口を蹂躙したモノと同じに違いない。
「先輩!」
ぐいっと両肩を掴んで無理矢理引き離す。
べッと舌を出していた彼はそれを仕舞い込み毒を孕んだ笑みを唇に描いた。それからジャックの手を両肩から外して再び指を絡めてそこに口づけた。
「フロイドと愉しんだでしょう。なら、今度は僕の番です。ねぇ、そうでしょう」
ジャックくん、という声に自分は面倒くさい双子に惚れてしまったのか。
「あ~。はいはい。いいっすよ」
もう今日は好きにさせてやろう。そういう態度にジェイドは半分満足と、半分不満という複雑な表情だ。
「はぁ。今日はジェイド先輩のしたいことたくさんしましょう」
「で、何したいんだ」と訊ねればようやく満足げに目尻を下げたジェイドがいた。
本当に面倒くさい人魚たちだな。
でも、そこが何故か可愛いと思ってしまうのだからしょうがない。
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