お前には一切関係ない
お前には一切関係ない・1
「なぁ。ジャック、一緒にメシにいかなねぇか?」
「いかねぇ」
身体を寄せて来る男を一瞥することなくジャックははっきりと断り返り支度する。着替えは男が来る前に住ませているから後はスマホやら入れるくらいだが。男もそれが分かっているのかジャックが無視をするのにも関わらず話しかけて来る。
鬱陶しいと思いながら慣れてしまったことに奥歯を噛む。
この男はジャックが勤める警備会社の支社の別の支社の所属だ。ただ、今度男の支社とジャックの支社で大掛かりな警備があるため出向している。不運なことにジャックはその男に気に入られてしまったのだ――恋愛方面というよりも性的な方面で。
男は魔法士としての腕はいい。バディとして組まされるようになった当初はその腕に惚れ惚れした。だが、一ヶ月過ぎた頃に男に告白されてから地獄しかなかった。男はその告白を境にジャックを口説いて来るのだ。こちらは恋人がいると言っているのに諦める気配がない。寧ろ、恋人がいることが燃え上がらせているようだ。なぜ。
幸い仕事のときは口説くこともせず真面目なため助かっている。それでもオフになった瞬間口説くモードにはいるから困っている。
今日も今日とて、一緒に食事をしようと誘ってくるがジャックは断わっている。
「じゃ、失礼します」
「あ、おい!」
男の身体を押しのけて更衣室を出る。すぐ後に男が出て来るが無視だ。足早に廊下を歩きながらエレベーターの前に止まる。だが、他に誰も居ず舌打ちを打つ。ジャックはすぐに追いつく男を無視するためにスマホの画面を着けると――。
「あ、終わったのか」
メッセージ一件入っていた。アプリを立ち上げて見ればやはり想像していた通りの人からのメッセージだった。ジャックが思わず頬を緩ませると男が「なに恋人から?」と低い声で尋ねて来た。
ジャックは瞬時に笑みを消して「そうっすけど」と返す。男は流石に覗き込むつもりはないのか「へぇ」と低い声を零した。何、嫉妬しているんだが。
心の中で悪態を尽きながらジャックは来たエレベーターに乗り込む。もちろん男も乗り込む。すると、二人きりになった。このときの空間が本当にイヤでジャックは返信メッセージを作るのに集中する。
――俺も終わった。今、エレベーターだからもうすぐだ。
それだけ返すとすぐに既読のマークがついて可愛らしいタコの了解スタンプが送られて来た。ジャックの恋人は見た目に寄らず可愛いスタンプや面白いスタンプを使ってくる。兄弟にプレゼントされたとはいえ結構本人も気に入っていると思っている。
「お前の恋人ってさ、男?」
「いきなりなんすか?」
不躾な質問にジャックは思わず睨む。男は相変らず爽やかな顔で「いや確認」って言った。何が確認だと思わず唸ると男が両手を挙げた。
「おいおい。別に俺は偏見ねぇぞ? 実際お前のこと好きで口説いてるくらいだしな」
「なら、何の確認だ」
「や。もしかして靡かねぇのはストレートからと思ったから。でも、やっぱりちげぇし……お前の恋人ってよっぽどいいの?」
この俺より、と言いたげな言葉にジャックは呆れる。自意識過剰もここまで来るとたいしたものだ。だが、こんな答えも決まっている。
「当たり前じゃないっすか。俺が選んだ人だ」
出会い頭は最悪な印象だったけれど今はジャックの生涯を捧げるに相応しい人だ。かけがえない大切な番い。
ジャックは睨むと男は「そうかい」と肩をすくめた。それから壁によりかかって黙った。この人黙れるのかと思いながらスマホをジャケットの内側に仕舞う。
エレベーターがロビーに到着するまで男は不気味な程口を閉じたままだった。しゃべらないのならしゃべらないのでいい。だが、普段のおしゃべりさを考えると不気味であることは間違いない。
「じゃ、お疲れっす」
「うん。お疲れ」
ロビーを出るとジャックは男と反対側に向かって歩き出すために一歩踏み出す。とはいえ、やっぱり同僚警戒しながらも別れる前に一応挨拶をする。男はやはり不気味なまま挨拶を返して手を振って背を向けた。何だか調子が狂うと思いながらも待ち人がいる場所に向かってジャックも歩き出した。
雑踏を器用にすり抜けながらジャックは一瞬の違和感を覚えて足を止めて振り返る。目を眇めて見るが何もない。
「なんだ」
イヤな感じだ。ジャックは用心深く前を向きながら警戒心を持ちながら駅に向かう。度々背後を気にしながらようやく待ち合わせの駅に辿り着く。
「えっと、待ち合わせの入り口は」
ジャックの努める警備会社の最寄り駅は輝石の国の首都でも大きなターミナルだ。周囲には超高層のオフィスビルがあり、商業施設も溢れ、さらに大学キャンパスもある。東西南北に出入り口ができるほど大きなターミナルになるのも分かる。
「今日は南口……あ、ちげ。新しく設置された南口か」
はぁと溜息を尽きながら南口に方へと行こうとした瞬間また視線を感じる。振り返るとやはり誰も居ない。
「魔法の気配もしねぇ」
姿消しの魔法かと考えるもなにもない。いや、こういう首都部には魔法工学を利用した広告が多くあるため魔法の気配が辿りにくい。獣人属の敏感な鼻も人混みではちょっと役に立たない。
「遠回りすっか……」
巻いていくか。ジャックはもう一度スマホを取り出して遅れる旨だけを送って遠回りをすることを選んだ。だが、それでも相手を巻くことができなかった。
「くっそ。なんだよ」
ジャックは東口の待ち合わせで人だかりの出来ている柱に隠れながら電話をする。もちろん相手は待ち人である。電話はすぐに出てくれた。
『ジャックくん、どうしました?』
「すんません。先に帰ってもらっていいっすか」
思わず切羽詰まった声が出ると相手が『仕事ですか?』と訊ねて来る。ジャックは一瞬不審者のことを言おうとしたが口を噤んで「はい」と答え。これが一番いい。
「だから、先に帰って待っていてくれ」
『わかりました。では、気を付けてくださいね』
「っす。じゃ」
ジャックは電話を切ると辺りを用心深く探す。やはり気配が多くて探れない。
「とりあえず遠回して電車も乗るか」
仕事が終わったのに何故家から遠ざかっていかなければいけないのか。何よりも、せっかくできた恋人との時間を潰されたことが何よりも辛かった。
「くっそ。犯人が分かったら絶対にぶっ飛ばす」
ガルルと周りが唸り声で周りが怯えるのを気にすることなく改札を通った。
「ジャック。今日は恋人と待ち合わせしないのか?」
まさか犯人が自分から言い出すとは思わなかった。ジャックは青筋を浮かべながら拳に力を入れる。
「殴っていいっすよね?」
「え。なんで」
「俺の苛立ちがピークなんで」
「え、ま」
「待たねぇ!」
拳を振り上げた瞬間男が魔法で防壁を張る。結局ジャックの拳は男に届くことはなかった。無駄に魔法を使うな。
「だって、ジャックの恋人見たかったんだもん」
「もんだと! 俺の苦労返しやがれ!」
結局、巻くために色々回って帰りの時間がほぼ就寝時間になってしまった。先に帰っていた恋人のジェイドさえ心配するくらい疲れた顔をしていたらしいし。恋人との時間が全然取れなかった。だというのに、この男は自分勝手も甚だしい。
「くっそ。もう着けんなよ」
「え。じゃあ、会せてよ」
無視して男を通り過ぎるとすぐに道を塞がれる。それからジャックとほぼ同じ目線で「会わせろよ」と言う。何故ここまで気にする毛を逆立ててガルル唸りながら「会せねぇ!」と叫び押しのけジャックはドスドスとスケジュールを確認しに行った。
「なぁ。ジャック、一緒にメシにいかなねぇか?」
「いかねぇ」
身体を寄せて来る男を一瞥することなくジャックははっきりと断り返り支度する。着替えは男が来る前に住ませているから後はスマホやら入れるくらいだが。男もそれが分かっているのかジャックが無視をするのにも関わらず話しかけて来る。
鬱陶しいと思いながら慣れてしまったことに奥歯を噛む。
この男はジャックが勤める警備会社の支社の別の支社の所属だ。ただ、今度男の支社とジャックの支社で大掛かりな警備があるため出向している。不運なことにジャックはその男に気に入られてしまったのだ――恋愛方面というよりも性的な方面で。
男は魔法士としての腕はいい。バディとして組まされるようになった当初はその腕に惚れ惚れした。だが、一ヶ月過ぎた頃に男に告白されてから地獄しかなかった。男はその告白を境にジャックを口説いて来るのだ。こちらは恋人がいると言っているのに諦める気配がない。寧ろ、恋人がいることが燃え上がらせているようだ。なぜ。
幸い仕事のときは口説くこともせず真面目なため助かっている。それでもオフになった瞬間口説くモードにはいるから困っている。
今日も今日とて、一緒に食事をしようと誘ってくるがジャックは断わっている。
「じゃ、失礼します」
「あ、おい!」
男の身体を押しのけて更衣室を出る。すぐ後に男が出て来るが無視だ。足早に廊下を歩きながらエレベーターの前に止まる。だが、他に誰も居ず舌打ちを打つ。ジャックはすぐに追いつく男を無視するためにスマホの画面を着けると――。
「あ、終わったのか」
メッセージ一件入っていた。アプリを立ち上げて見ればやはり想像していた通りの人からのメッセージだった。ジャックが思わず頬を緩ませると男が「なに恋人から?」と低い声で尋ねて来た。
ジャックは瞬時に笑みを消して「そうっすけど」と返す。男は流石に覗き込むつもりはないのか「へぇ」と低い声を零した。何、嫉妬しているんだが。
心の中で悪態を尽きながらジャックは来たエレベーターに乗り込む。もちろん男も乗り込む。すると、二人きりになった。このときの空間が本当にイヤでジャックは返信メッセージを作るのに集中する。
――俺も終わった。今、エレベーターだからもうすぐだ。
それだけ返すとすぐに既読のマークがついて可愛らしいタコの了解スタンプが送られて来た。ジャックの恋人は見た目に寄らず可愛いスタンプや面白いスタンプを使ってくる。兄弟にプレゼントされたとはいえ結構本人も気に入っていると思っている。
「お前の恋人ってさ、男?」
「いきなりなんすか?」
不躾な質問にジャックは思わず睨む。男は相変らず爽やかな顔で「いや確認」って言った。何が確認だと思わず唸ると男が両手を挙げた。
「おいおい。別に俺は偏見ねぇぞ? 実際お前のこと好きで口説いてるくらいだしな」
「なら、何の確認だ」
「や。もしかして靡かねぇのはストレートからと思ったから。でも、やっぱりちげぇし……お前の恋人ってよっぽどいいの?」
この俺より、と言いたげな言葉にジャックは呆れる。自意識過剰もここまで来るとたいしたものだ。だが、こんな答えも決まっている。
「当たり前じゃないっすか。俺が選んだ人だ」
出会い頭は最悪な印象だったけれど今はジャックの生涯を捧げるに相応しい人だ。かけがえない大切な番い。
ジャックは睨むと男は「そうかい」と肩をすくめた。それから壁によりかかって黙った。この人黙れるのかと思いながらスマホをジャケットの内側に仕舞う。
エレベーターがロビーに到着するまで男は不気味な程口を閉じたままだった。しゃべらないのならしゃべらないのでいい。だが、普段のおしゃべりさを考えると不気味であることは間違いない。
「じゃ、お疲れっす」
「うん。お疲れ」
ロビーを出るとジャックは男と反対側に向かって歩き出すために一歩踏み出す。とはいえ、やっぱり同僚警戒しながらも別れる前に一応挨拶をする。男はやはり不気味なまま挨拶を返して手を振って背を向けた。何だか調子が狂うと思いながらも待ち人がいる場所に向かってジャックも歩き出した。
雑踏を器用にすり抜けながらジャックは一瞬の違和感を覚えて足を止めて振り返る。目を眇めて見るが何もない。
「なんだ」
イヤな感じだ。ジャックは用心深く前を向きながら警戒心を持ちながら駅に向かう。度々背後を気にしながらようやく待ち合わせの駅に辿り着く。
「えっと、待ち合わせの入り口は」
ジャックの努める警備会社の最寄り駅は輝石の国の首都でも大きなターミナルだ。周囲には超高層のオフィスビルがあり、商業施設も溢れ、さらに大学キャンパスもある。東西南北に出入り口ができるほど大きなターミナルになるのも分かる。
「今日は南口……あ、ちげ。新しく設置された南口か」
はぁと溜息を尽きながら南口に方へと行こうとした瞬間また視線を感じる。振り返るとやはり誰も居ない。
「魔法の気配もしねぇ」
姿消しの魔法かと考えるもなにもない。いや、こういう首都部には魔法工学を利用した広告が多くあるため魔法の気配が辿りにくい。獣人属の敏感な鼻も人混みではちょっと役に立たない。
「遠回りすっか……」
巻いていくか。ジャックはもう一度スマホを取り出して遅れる旨だけを送って遠回りをすることを選んだ。だが、それでも相手を巻くことができなかった。
「くっそ。なんだよ」
ジャックは東口の待ち合わせで人だかりの出来ている柱に隠れながら電話をする。もちろん相手は待ち人である。電話はすぐに出てくれた。
『ジャックくん、どうしました?』
「すんません。先に帰ってもらっていいっすか」
思わず切羽詰まった声が出ると相手が『仕事ですか?』と訊ねて来る。ジャックは一瞬不審者のことを言おうとしたが口を噤んで「はい」と答え。これが一番いい。
「だから、先に帰って待っていてくれ」
『わかりました。では、気を付けてくださいね』
「っす。じゃ」
ジャックは電話を切ると辺りを用心深く探す。やはり気配が多くて探れない。
「とりあえず遠回して電車も乗るか」
仕事が終わったのに何故家から遠ざかっていかなければいけないのか。何よりも、せっかくできた恋人との時間を潰されたことが何よりも辛かった。
「くっそ。犯人が分かったら絶対にぶっ飛ばす」
ガルルと周りが唸り声で周りが怯えるのを気にすることなく改札を通った。
「ジャック。今日は恋人と待ち合わせしないのか?」
まさか犯人が自分から言い出すとは思わなかった。ジャックは青筋を浮かべながら拳に力を入れる。
「殴っていいっすよね?」
「え。なんで」
「俺の苛立ちがピークなんで」
「え、ま」
「待たねぇ!」
拳を振り上げた瞬間男が魔法で防壁を張る。結局ジャックの拳は男に届くことはなかった。無駄に魔法を使うな。
「だって、ジャックの恋人見たかったんだもん」
「もんだと! 俺の苦労返しやがれ!」
結局、巻くために色々回って帰りの時間がほぼ就寝時間になってしまった。先に帰っていた恋人のジェイドさえ心配するくらい疲れた顔をしていたらしいし。恋人との時間が全然取れなかった。だというのに、この男は自分勝手も甚だしい。
「くっそ。もう着けんなよ」
「え。じゃあ、会せてよ」
無視して男を通り過ぎるとすぐに道を塞がれる。それからジャックとほぼ同じ目線で「会わせろよ」と言う。何故ここまで気にする毛を逆立ててガルル唸りながら「会せねぇ!」と叫び押しのけジャックはドスドスとスケジュールを確認しに行った。