完全無欠の包囲網

◆ ジェイド視点



 救出されたジェイドは毛布を羽織ながらひっそりと影に佇んでいた。業火に燃え盛る会場でジャックは何か言いたげであったが何も口にすることはなかった。
 きっと後で追及されるだろう。その時の場所は自分が用意しようか。ならそれはどこがいいかと考えているとドンに何かぶつかり身体に衝撃が走る。傷に響く衝撃に「ぐっ」と呻きながらジェイドは影から出て来た兄弟を呼ぶ。

「フロイド、傷に響きます」
「そんなにいてぇの?」

 恨めしげに見ればフロイドもまた頬に大きなガーゼを着けている。他にも所々焼け焦げているような痕がある。
 その意外に無事な姿に心の中で安堵の溜息を零す。にしても、とジェイドは頭であったあの女の用意周到さに舌を巻いた。まさか、魔法工学を利用した爆弾を用意していたとは。

「で、ジャケットを貸してあげたのにどうしたんです」
「あ、あれ? なんかすげぇの来たから盾にした」

 「めっちゃ使えたぁ」というフロイドに溜息が零れる。あれは値段云々よりもジャックを意識して作ったオーダーメイドスーツのジャケットだ。預けたのは自分だし兄弟があの状況でダメにするなと言えない。

「お前が無事でよかった、それくらいしか言えません」
「オレもジェイドがあの状況で逃げ出せてよかったぁ……で、ウニちゃんは?」

 ニヤッと口角を上げるフロイドにジェイドはにこりと唇を閉じて口角を上げ返す。途端にフロイドは「あはっ」と笑って身体を離す。すぐに「いてぇ」と言うけれどやはりその顔は酷く楽しげだった。兄弟が楽しいのはいいのだけれど自分がネタにされるのは少々不愉快であった。

「あ、オレそろそろ行くから」

 途端に笑みを消したフロイドはマジカルペンを振って〝痕跡〟を消す。

「じゃ、また」
「ええ。お気をつけて」

 消えていくフロイドを尻目にジェイドは人混みを掻き分けてくる男を見た。怒りの形相とも言い難いような狼にジェイドは小さく笑んだ。

「あともう少し、フフッ」



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