完全無欠の包囲網

◆ ジェイド視点



 あの後、いたく気に入ったのか何杯かグラスを空けたジャック。そのジャックは高濃度のアルコールを飲んだのにも関わらずしっかりとした足取りで帰って行った。
 随分と逞しく大きくなった背中を見送ったジェイドは一人空気を換えて悠然と笑む。その笑みは先ほどまでジャックに見せていたどの笑みとも異なり深海の冷ややかさを纏っていた。

「オーナー。フロイドさんからです」
「分かりました」

 声に振り返ると後片付けを終えたバーテンダーがアンティークの電話を片手にしていた。見た目はアンティークであるが現代的に改良された傍受対策もバッチリの電話だ。受話器をバーテンダーから受け取るとすぐさま愉しげな声が聞こえた。それにクスと笑いながら「代わりました」と答える。

『あ、ジェイド? ウニちゃんとのデートは終わったの?』
「ええ。先ほどお見送りいたしました」

 デートとは言うけれど実際そんな甘ったるい雰囲気もない。寧ろ殺伐としていた再会でもある。だが、ジェイドからすれば約十年ぶりの〝想い人〟との再会はデートのようなものだった。

『で、次も会う予定あるの?』
「ええ。たぶんすぐに会えると思います」
『へぇ、よかったじゃん』

 『待ったかいあったね』というフロイドにジェイドは心の底からの「はい」という返事を返した。それに向こう側のフロイドが『あはっ、マジで嬉しそうじゃん』と笑いを含んだ声をした。それはそうだ。学生の頃に失敗をしてから今の今まで会えなかったのだ。想いは募るばかりだ。

『今回はうまくいくといーね』
「はい。成功させるつもりです」

 「絶対に、」そう付け足しながらジェイドは牙を覗かせて笑った。


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