大好きがいっぱい

大好きがいっぱい・3


「お姫様からのお見舞いだぜ」
「……忌々しいイルカですか」

 ズビと鼻を啜りながらイルカを睨むジェイドにジャックはハァと溜息をつく。ジェイドは可愛い一人娘がイルカのぬいぐるみを気に入っていることを快く思っていない。さすがに娘に言わないけれどことあるごとにウツボを押している。その度に「イルカさん」と抱きしめる娘に複雑な感情を抱いているのだからやめたらいいのに。

「いい加減にしろよ」

 言って枕元に置くけれどジェイドは親の仇のような目をイルカに向ける。たかがぬいぐるみ如きでと思うけれどジェイドはアズールやフロイドにはそういった感情を向けないのにジャックや娘にはそういう独占欲めいた感情を向ける。
 パートナーとして嬉しいやら、一人の親として複雑やら。とはいっても、ジャックの前以外では見せないので彼も努力しているのだろう。

「枕。変えるぞ」
「おねがいします」

 うぅと呻きながら身体を動かすジェイド。この間ジャックの預かり知らぬところでずぶ濡れになって仕事をしていたらしい。その内容は知らないが。
 枕も入れ替えてもう一度イルカを整える。

「そのイルカはジャックくんにも構われるのですか」
「はぁ。ただ撫でただけだろう」

 何を拗ねている。ジャックは汗でしっとりとしたジェイドの前髪を払う。でも、それだけじゃ足りないというようにじっと見つめるので目を眇めて返す。


「しねぇ。風邪移んだろ」
「看病しますよ」

 にっこり笑むのでジャックは鼻を鳴らして返す。全く素直に甘えられないことか。いや、大分素直になっているけれど。
 出そうになる溜息を飲み込んで顔を真っ赤にさせるジェイドを見下ろす。

「治ってからたくさん出来るだろ」

 今の一回より絶対にいい。そうだろ、と聞けばジェイドは熱で潤んだ目を丸くさせて笑った。

「ふふっ。たしかに、そーですね」
「だろ。だから、さっさと寝て食って治せよ」
「はい」

 言って目を瞑るジェイドの顔を見てジャックはひとつ息をついた。

「早く治せよ」


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