ジェイド × ジャック
可愛い後輩に恋をした
「ジェイド先輩。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
今日の午後一番の授業は二年E組と一年B組との合同魔法薬学だった。ジェイドはくじ引きの結果、一年のジャック・ハウルとコンビを組むことになった。
イソギンチャクの件、キクラゲ原木の件、化粧品の件などなど地味に彼とは関わりがある。だが、意外にも彼としっかりと話した記憶がない。
「あんたと話すの新鮮だな」
「僕も同じこと考えていたんですよ」
始まるまでまだもう少し時間がある。彼の話に乗ればジャックは興味深そうにこちらを見て来る。それに「何ですか?」と返す。
「いや、何かあんたの気配ってよく分んねぇなって。こうアズール……先輩とか、フロイド……先輩ともなんか違うなって」
「そうですか」
「うす」
薄いのか何かよく分んねぇ、と言われてもこちらも分からない。何せそれは彼の感覚なのだからジェイドが解決できるわけではない。
「それより、アズールとフロイドの後に続く先輩の間は何ですか?」
「うっ、いやだってよ……」
「僕にはすぐ先輩が着くのに不思議ですねぇ」
ふふと笑えばジャックは苦虫を潰した顔で口篭もる。
「アズールも、フロイドもいいところはあるのでよろしくお願いしますね」
「……っす」
これは言われて直すつもりないなと直感した。ここの学園に入学する者は一にも、二にも、癖が強い。彼もここでは常識人に近いがその常識人を被った自意識の馬鹿高い狼の獣人に過ぎない。だが、それを好む者は好む。故に、彼らは年上や真面目な生徒には好かれている。
中々興味深い存在である彼とこれから組んで授業とは楽しみだ。一人ほくそ笑んでいるとちょうど授業の始まりのベルが鳴った。
「ジェイド先輩、すごいっす!」
キラキラ輝く黄金色の瞳、分かりやすく揺れる尻尾に、ぴんぴん動く耳。これでもかと好意が示されるのも悪くはない。
これはなるほど年上好かれるわけですね。
尊敬しています、という眼差しにジェイドも微笑んで返す。
「そこまで褒められると僕も嬉しくなりますね」
「いや! でも、すごいッス! 今回、二年生と組むからって結構難しい薬を作らされましたけど先輩すっげぇ手際よくってなんか俺、足手まといになっちまった」
ぺそっと耳を伏せるのに何か心の片隅を突かれたような気がした。だからだろうか。普段あんまりしないフォローを口にしてしまった。
「いえいえ。ジャックくんも僕の指示にもよくしたがってくれましたし、予習もよくしていましたね」
「ッ! ありがとうございます! でも、次はもっと勉強しておきますんで!」
絶対に次は上手く補助して見せますんで、と張り切る彼にまた心の隅が突かれる。何だかくすぐったい気持ちが続く。持て余す感情を誤魔化すように笑みを浮かべて彼に同意の言葉を返す。
「次に合同授業がありましたら一緒になれるといいですね」
「っす!」
キラキラとした眼差しにくすぐったさは続くが彼のおめがねにかなったようだ。
これはこのまま手懐けて置く方がいいでしょう。
ジャックの能力などを考えれば手綱を是非とも握りたい。ならば彼の中に存在しているヒエラルキーもどうにかしなければ。
雑談をしつつ実験道具の片づけをしていると――。
「ジャック。ジェイドとの実験はどうだったかな?」
「リドル先輩!」
不意にかけられた声にいち早く反応したのはジャックだった。ジェイドも片付けの手を止めてリドルを見る。彼はジャックを見てジェイドを見てもう一度ジャックを見上げた。
「彼と組むって聞いてね。心配だったんだよ」
「おや。リドルさん、それはどういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だよ。でも、上手くいったようだね」
キミたちの作った薬の評価を聞いて安心したよ、と言うとジャックは複雑な顔をした。
「あれは殆どジェイド先輩が作ったようなもんすよ。俺は今回足手まといになりました」
「キミがかい? あれほど頑張って予習したじゃないか」
「っす。リドル先輩にも見てもらったのに」
しょんもりするジャックにリドルが意外だという表情を見せる。しかし、ジェイドは他に気になるところがあった。
「……リドルさんに予習を見てもらったのですか?」
「見たというか図書室で何回か会ってね。そのときに、随分と苦戦していたから僕が勝手に助言したまでだよ」
「でも、すごく助かったっす! だっていうのに俺は……」
再びしょんもりと今回随分と落ち込んでいた理由が何となく分かった。だが、分かったからといってジェイドに関係はない。いや、なくはないのだが。
先ほどのくすぐったい気持ちとは別に刺々しい痛みを感じていると。
「ジェイド。ボクらは次、体力育成だ。ぼやぼやしていると遅刻するよ」
「え、」
はっとして時計を見れば次の授業まで時間が迫っていた。リドルは先に行くとジャックに挨拶をすると教科書を片手に教室を出て行った。自分もさっさと片づけなければとマジカルペンを出すが――。
「先輩。俺がやっておきます。先輩は次の授業に行ってください」
「それは貴方も同じでしょう」
普段であれば言い包めて相手に押し付けるが何故か彼に出来なかった。口が滑ったと思わなくもないが自分もやると暗に込めると彼は首を横に振った。
「いいんすよ。今日の俺は役立たずだったんでこれくらいいいくらでもやります!」
ほら行ってください、と背中を押す彼に苦笑が零れる。
「では、お願いします。ああ。ただし、この貸しはしっかり返させてもらいますよ」
「いや、だから」
「いいですね」
念を押すように笑みを深めて言えばジャックも何も言わなかった。それに先ほどまでの心の引っかかりも薄れた。
「僕は行きますが貴方も遅れないように」
最後にマジカルペンを一振りして彼が作業しやすいように実験道具を動かして置く。それに感謝の言葉を述べられて笑みだけを返して教室を出た。
運動着に着替えて運動場に行くと合同授業相手の二年C組が居た。アズール、ジャミル、リドルの塊に近づくと「ジャック」という単語が聞こえて来た。
「おや。ここでもジャックくんの話題ですか?」
「ああ。主にこの二人がな」
俺は面識がないから、と言うジャミルからアズール、リドルに視線を向ける。
「ふむ。ジャックさんがジェイドの助手として力不足だったとは僕を頼ってくださればもっとうまくいったかもしれませんねぇ」
「へぇ。それは遠回しにボクが役立たずだったって言いたいのかい?」
「まさか! そんなこと言ったつもりはないんですがねぇ」
「はっ。キミが言ったところで彼が素直に教えを乞うとは思わないけどねぇ」
「おやおや? それこそどういう意味でしょうか?」
何だか白熱とした火花が散っている。
「あの二人が気に入っているなんてよっぽどだな」
「まぁ、年上に好かれそうな性格ではあるかもしれませんね」
「へぇ。このナイトレイブンカレッジでは役得な性格だなぁ」
目を見開いた彼は顎に手を置いて蛇のような目をする。
「噂の人物がいるクラスは一年B組だよな。今度俺たちC組も合同授業があるんだ」
楽しみだ、と笑う彼にやはり心がざわつく。
「ふふ。貴方のおめがねに叶うといいですね」
「……ふっ。そんな顔には見えないがな」
意地悪く目を眇めるジャミルに言い返そうと口を開くが――。
「ジェイド! いいところに来ました!」
「ジェイド! キミのところの寮長だがなねぇ!」
「お呼びだぞ」
言い返すことも出来ずにプンプン怒る二人に呼ばれてしまった。小さく溜息をついてギャイギャイ叫ぶ二人のところに向かったのだった。
◆ ◆ ◆
それから一週間後、ジェイドは少し落ち着かない気分であった。今日、ジャックのクラスは錬金術の授業でアズールとジャミルと合同授業を行う。アズールが何だかんだいいつつジャックを気に入っているは知っている。だが、面識の薄いジャミルは今回でどうなるだろうか。
探りを入れなければいけませんね。
何故、そう思うのかは今考えない。考えたらそちらに思考が取られるのは一週間で実感している。故に、深く考えずジャックがジャミルをどう思ったか、ジャミルがジャックを気に入ったかだけに集中しよう。
それでも今日一日は心ここにあらずで、その様子はアズールからも、フロイドからも指摘されるほどだった。そんな時間で過ごす一日は酷く長くようやく放課後になったと感じながら教室を出て足早に植物園に向かった。
今日のジャックくんは部活がお休みですからサボテンの世話をしに行っているはず。
植物園に入って以前自分がキクラゲの原木を育てていた場所に向かう。そこには想像していた通りのふさふさの尻尾を持った狼の獣人がいた。
目的の人物がいたことに胸を撫で下ろしながら彼の真後ろに立とうとしたが――。
「あ、ジェイド先輩。ちわッス」
「……こんにちは」
先にあちらが気付いて振り返った。それに嬉しいような惜しいような気分になる。
「何か俺に用とか?」
「ええ。まぁ。たいしたことじゃないんですけどね」
コツコツと靴を鳴らして彼の横に立つ。ジャックの手には如雨露があり、前にはサボテンがある。そのサボテンには小さな花の蕾がひとつあった。
「もうすぐ咲きそうなんですか?」
「ああ……前は咲かなかったんスだけど今回は上手くいきそうなんです!」
目尻を下げ、にぃっと笑って犬歯が見えて幼さの見える笑みに落ちた。心の隅をつついていた彼を可愛いと思う感情が違う方に振りきった。どうやら自分は彼に対する好意を恋情に自分は変えてしまったようだ。
まぁ、それも面白そうですしいいでしょう。
いつの間にかサボテンに目を向けたジャックを横目に歯をむき出しに笑う。さてさて、この人懐っこい仔犬をどのように自分のテリトリーに招き入れようか。手の入れたことのときを考えながら微笑ましい横顔を見つめたのだった。
2025.02.02 文章修正
「ジェイド先輩。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
今日の午後一番の授業は二年E組と一年B組との合同魔法薬学だった。ジェイドはくじ引きの結果、一年のジャック・ハウルとコンビを組むことになった。
イソギンチャクの件、キクラゲ原木の件、化粧品の件などなど地味に彼とは関わりがある。だが、意外にも彼としっかりと話した記憶がない。
「あんたと話すの新鮮だな」
「僕も同じこと考えていたんですよ」
始まるまでまだもう少し時間がある。彼の話に乗ればジャックは興味深そうにこちらを見て来る。それに「何ですか?」と返す。
「いや、何かあんたの気配ってよく分んねぇなって。こうアズール……先輩とか、フロイド……先輩ともなんか違うなって」
「そうですか」
「うす」
薄いのか何かよく分んねぇ、と言われてもこちらも分からない。何せそれは彼の感覚なのだからジェイドが解決できるわけではない。
「それより、アズールとフロイドの後に続く先輩の間は何ですか?」
「うっ、いやだってよ……」
「僕にはすぐ先輩が着くのに不思議ですねぇ」
ふふと笑えばジャックは苦虫を潰した顔で口篭もる。
「アズールも、フロイドもいいところはあるのでよろしくお願いしますね」
「……っす」
これは言われて直すつもりないなと直感した。ここの学園に入学する者は一にも、二にも、癖が強い。彼もここでは常識人に近いがその常識人を被った自意識の馬鹿高い狼の獣人に過ぎない。だが、それを好む者は好む。故に、彼らは年上や真面目な生徒には好かれている。
中々興味深い存在である彼とこれから組んで授業とは楽しみだ。一人ほくそ笑んでいるとちょうど授業の始まりのベルが鳴った。
「ジェイド先輩、すごいっす!」
キラキラ輝く黄金色の瞳、分かりやすく揺れる尻尾に、ぴんぴん動く耳。これでもかと好意が示されるのも悪くはない。
これはなるほど年上好かれるわけですね。
尊敬しています、という眼差しにジェイドも微笑んで返す。
「そこまで褒められると僕も嬉しくなりますね」
「いや! でも、すごいッス! 今回、二年生と組むからって結構難しい薬を作らされましたけど先輩すっげぇ手際よくってなんか俺、足手まといになっちまった」
ぺそっと耳を伏せるのに何か心の片隅を突かれたような気がした。だからだろうか。普段あんまりしないフォローを口にしてしまった。
「いえいえ。ジャックくんも僕の指示にもよくしたがってくれましたし、予習もよくしていましたね」
「ッ! ありがとうございます! でも、次はもっと勉強しておきますんで!」
絶対に次は上手く補助して見せますんで、と張り切る彼にまた心の隅が突かれる。何だかくすぐったい気持ちが続く。持て余す感情を誤魔化すように笑みを浮かべて彼に同意の言葉を返す。
「次に合同授業がありましたら一緒になれるといいですね」
「っす!」
キラキラとした眼差しにくすぐったさは続くが彼のおめがねにかなったようだ。
これはこのまま手懐けて置く方がいいでしょう。
ジャックの能力などを考えれば手綱を是非とも握りたい。ならば彼の中に存在しているヒエラルキーもどうにかしなければ。
雑談をしつつ実験道具の片づけをしていると――。
「ジャック。ジェイドとの実験はどうだったかな?」
「リドル先輩!」
不意にかけられた声にいち早く反応したのはジャックだった。ジェイドも片付けの手を止めてリドルを見る。彼はジャックを見てジェイドを見てもう一度ジャックを見上げた。
「彼と組むって聞いてね。心配だったんだよ」
「おや。リドルさん、それはどういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だよ。でも、上手くいったようだね」
キミたちの作った薬の評価を聞いて安心したよ、と言うとジャックは複雑な顔をした。
「あれは殆どジェイド先輩が作ったようなもんすよ。俺は今回足手まといになりました」
「キミがかい? あれほど頑張って予習したじゃないか」
「っす。リドル先輩にも見てもらったのに」
しょんもりするジャックにリドルが意外だという表情を見せる。しかし、ジェイドは他に気になるところがあった。
「……リドルさんに予習を見てもらったのですか?」
「見たというか図書室で何回か会ってね。そのときに、随分と苦戦していたから僕が勝手に助言したまでだよ」
「でも、すごく助かったっす! だっていうのに俺は……」
再びしょんもりと今回随分と落ち込んでいた理由が何となく分かった。だが、分かったからといってジェイドに関係はない。いや、なくはないのだが。
先ほどのくすぐったい気持ちとは別に刺々しい痛みを感じていると。
「ジェイド。ボクらは次、体力育成だ。ぼやぼやしていると遅刻するよ」
「え、」
はっとして時計を見れば次の授業まで時間が迫っていた。リドルは先に行くとジャックに挨拶をすると教科書を片手に教室を出て行った。自分もさっさと片づけなければとマジカルペンを出すが――。
「先輩。俺がやっておきます。先輩は次の授業に行ってください」
「それは貴方も同じでしょう」
普段であれば言い包めて相手に押し付けるが何故か彼に出来なかった。口が滑ったと思わなくもないが自分もやると暗に込めると彼は首を横に振った。
「いいんすよ。今日の俺は役立たずだったんでこれくらいいいくらでもやります!」
ほら行ってください、と背中を押す彼に苦笑が零れる。
「では、お願いします。ああ。ただし、この貸しはしっかり返させてもらいますよ」
「いや、だから」
「いいですね」
念を押すように笑みを深めて言えばジャックも何も言わなかった。それに先ほどまでの心の引っかかりも薄れた。
「僕は行きますが貴方も遅れないように」
最後にマジカルペンを一振りして彼が作業しやすいように実験道具を動かして置く。それに感謝の言葉を述べられて笑みだけを返して教室を出た。
運動着に着替えて運動場に行くと合同授業相手の二年C組が居た。アズール、ジャミル、リドルの塊に近づくと「ジャック」という単語が聞こえて来た。
「おや。ここでもジャックくんの話題ですか?」
「ああ。主にこの二人がな」
俺は面識がないから、と言うジャミルからアズール、リドルに視線を向ける。
「ふむ。ジャックさんがジェイドの助手として力不足だったとは僕を頼ってくださればもっとうまくいったかもしれませんねぇ」
「へぇ。それは遠回しにボクが役立たずだったって言いたいのかい?」
「まさか! そんなこと言ったつもりはないんですがねぇ」
「はっ。キミが言ったところで彼が素直に教えを乞うとは思わないけどねぇ」
「おやおや? それこそどういう意味でしょうか?」
何だか白熱とした火花が散っている。
「あの二人が気に入っているなんてよっぽどだな」
「まぁ、年上に好かれそうな性格ではあるかもしれませんね」
「へぇ。このナイトレイブンカレッジでは役得な性格だなぁ」
目を見開いた彼は顎に手を置いて蛇のような目をする。
「噂の人物がいるクラスは一年B組だよな。今度俺たちC組も合同授業があるんだ」
楽しみだ、と笑う彼にやはり心がざわつく。
「ふふ。貴方のおめがねに叶うといいですね」
「……ふっ。そんな顔には見えないがな」
意地悪く目を眇めるジャミルに言い返そうと口を開くが――。
「ジェイド! いいところに来ました!」
「ジェイド! キミのところの寮長だがなねぇ!」
「お呼びだぞ」
言い返すことも出来ずにプンプン怒る二人に呼ばれてしまった。小さく溜息をついてギャイギャイ叫ぶ二人のところに向かったのだった。
◆ ◆ ◆
それから一週間後、ジェイドは少し落ち着かない気分であった。今日、ジャックのクラスは錬金術の授業でアズールとジャミルと合同授業を行う。アズールが何だかんだいいつつジャックを気に入っているは知っている。だが、面識の薄いジャミルは今回でどうなるだろうか。
探りを入れなければいけませんね。
何故、そう思うのかは今考えない。考えたらそちらに思考が取られるのは一週間で実感している。故に、深く考えずジャックがジャミルをどう思ったか、ジャミルがジャックを気に入ったかだけに集中しよう。
それでも今日一日は心ここにあらずで、その様子はアズールからも、フロイドからも指摘されるほどだった。そんな時間で過ごす一日は酷く長くようやく放課後になったと感じながら教室を出て足早に植物園に向かった。
今日のジャックくんは部活がお休みですからサボテンの世話をしに行っているはず。
植物園に入って以前自分がキクラゲの原木を育てていた場所に向かう。そこには想像していた通りのふさふさの尻尾を持った狼の獣人がいた。
目的の人物がいたことに胸を撫で下ろしながら彼の真後ろに立とうとしたが――。
「あ、ジェイド先輩。ちわッス」
「……こんにちは」
先にあちらが気付いて振り返った。それに嬉しいような惜しいような気分になる。
「何か俺に用とか?」
「ええ。まぁ。たいしたことじゃないんですけどね」
コツコツと靴を鳴らして彼の横に立つ。ジャックの手には如雨露があり、前にはサボテンがある。そのサボテンには小さな花の蕾がひとつあった。
「もうすぐ咲きそうなんですか?」
「ああ……前は咲かなかったんスだけど今回は上手くいきそうなんです!」
目尻を下げ、にぃっと笑って犬歯が見えて幼さの見える笑みに落ちた。心の隅をつついていた彼を可愛いと思う感情が違う方に振りきった。どうやら自分は彼に対する好意を恋情に自分は変えてしまったようだ。
まぁ、それも面白そうですしいいでしょう。
いつの間にかサボテンに目を向けたジャックを横目に歯をむき出しに笑う。さてさて、この人懐っこい仔犬をどのように自分のテリトリーに招き入れようか。手の入れたことのときを考えながら微笑ましい横顔を見つめたのだった。
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