フロイド
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今夜踊るのは君かまぼろし
人間の生活は他の人魚の子と比べれば長い方だと思う。小さい頃から珊瑚の海だけではなく世界中で演奏する両親に着いて行って人間となって生活していたこともある。それでもあたしは人魚。人間の生活とほぼ同じくらいであっても遺伝子は人魚。
「で、海が恋しくなった?」
「そういう感じ」って答え人間の足のまま打ち寄せる波に踏み込む。波に濡れて柔らかくうねる砂が指の間に入り込んで不思議な気持ちになる。こんなの人間の足でなければ知ることもできなかった。
「入らねぇの?」
「これくらいでいいわ」
人魚に戻る薬用意していなかったの。彼はふぅんと興味関心のなさそうな声で相槌を打つ。本当に興味がないとどうでもいいんだから。でも、興味を持ってほしいとも思わない。
「だと思って持って来たぁ」
「ひっ」
ピタと頬に冷たいモノが押し付けられて喉から引き攣った声が出た。すぐに距離を取って冷えた頬を抑えて彼を見る。
「フロイド。驚かさないで」
「別にそんなつもりじゃねぇし、ほら」
「ちょっ」
ブンと軽く小瓶をあたしに投げつけて来た。慌ててキャッチするとやっぱりとても冷たかった。薬ってこんなに冷やすかしら。怪訝に小瓶を睨んでいると「飲まねーの?」と少し離れたところから言うフロイド。あたしはじっと見つめてから小瓶の蓋を取った。
キュポという音と共に何とも言い難い薬の匂いが鼻腔を擽る。この薬こんな匂いだったかしら。それでもせっかく用意してくれたんだから飲もう。
ぐいっと飲み干すとドロリとした重くゆっくりとした薬が喉を通り過ぎた。
うげぇと心の中で呻きをひとつ。あたしはすぐに飲み込んで唇を手の甲で拭う。こんなまずいかしら。
「まじぃ~よ。オレもきらぁい」
「……あんたいつの間に飲んだのよ」
ザバッと大きな音に顔を向ける。そこにはいつの間にか人魚の姿に戻ったフロイドがいた。あたしとは違う長い、長い、尾びれを持て余すようにバシャと海面を飛び出させる。
「つか早く入れば? もーすぐ人魚に戻るよ」
戻る。そうか。戻るのよね、あたし。今から元の人魚の姿に。そう考えるといてもたってもいられず海に飛び込む。そして、次に目を開けたらあたしの脚は二本の足ではなく、一本の尾びれに戻っていた。
人間であれば目が開けられない海中も今はバッチリと見える。人間であれば出来ない海中での呼吸もできる。
「戻った……」
「当たり前じゃん」
背後にある熱がない。それでもフロイドの鋭いひれが着いた腕が存外優しく腰に回る。ついでにあの長い、長い、尾びれがあたしの尾びれに絡みつく。普段なら咎めるけれど人魚であることを再確認できたから拒むことはしない。寧ろ、感謝しなければいけないのかもしれない。
「ありがとう、フロイド」
「なにがぁ?」
すっとぼけた声を出すフロイドに笑みを零せば尾びれがキュッと締め付けられた。苦しくはない程よい締め付け。それでもこの状況でお互いの尾びれを締め付ける状況はよろしくない。
「なにしてんのよ」
フロイドの長い尾びれが絡みつく尾びれをブンブン振るけれど一向に解けない。もう、と抗議を含めた声を出すけれどフロイドは気にしない。寧ろ、尾びれをさらに絡みつけるしいつの間にか回った腰に回った腕がギュッと締め付ける。
ハァと溜息をついてあたしはされるがままにしようかと思ったけれどつまらない。長い尾びれが絡みつく自分の尾びれを見て動かしてみる。キュウと自分から絡んでみた。
「……いーの?」
「だめ」
耳元で囁くなと言いたい気持ちを抑えて首を横に振る。何を確認されたのかはわかっている。だから、駄目だと言う。流石にそれは駄目だと。
「ちぇ。まーいっか。時間はあるし」
「そうよ。まったく」
軽口のように答えながら背中をフロイドの身体にくっつける。でも、とあたしはその時間はいつまであるのか不思議だった。本当にあたしとフロイドに時間はあるのだろうか。そういう関係になるまでの時間があるのだろうか。
今この瞬間がまた来るとはあたしに終ぞ思えることはなかった。
お題サイト「天文学」様より
お題『she iz sea』から抜粋
人間の生活は他の人魚の子と比べれば長い方だと思う。小さい頃から珊瑚の海だけではなく世界中で演奏する両親に着いて行って人間となって生活していたこともある。それでもあたしは人魚。人間の生活とほぼ同じくらいであっても遺伝子は人魚。
「で、海が恋しくなった?」
「そういう感じ」って答え人間の足のまま打ち寄せる波に踏み込む。波に濡れて柔らかくうねる砂が指の間に入り込んで不思議な気持ちになる。こんなの人間の足でなければ知ることもできなかった。
「入らねぇの?」
「これくらいでいいわ」
人魚に戻る薬用意していなかったの。彼はふぅんと興味関心のなさそうな声で相槌を打つ。本当に興味がないとどうでもいいんだから。でも、興味を持ってほしいとも思わない。
「だと思って持って来たぁ」
「ひっ」
ピタと頬に冷たいモノが押し付けられて喉から引き攣った声が出た。すぐに距離を取って冷えた頬を抑えて彼を見る。
「フロイド。驚かさないで」
「別にそんなつもりじゃねぇし、ほら」
「ちょっ」
ブンと軽く小瓶をあたしに投げつけて来た。慌ててキャッチするとやっぱりとても冷たかった。薬ってこんなに冷やすかしら。怪訝に小瓶を睨んでいると「飲まねーの?」と少し離れたところから言うフロイド。あたしはじっと見つめてから小瓶の蓋を取った。
キュポという音と共に何とも言い難い薬の匂いが鼻腔を擽る。この薬こんな匂いだったかしら。それでもせっかく用意してくれたんだから飲もう。
ぐいっと飲み干すとドロリとした重くゆっくりとした薬が喉を通り過ぎた。
うげぇと心の中で呻きをひとつ。あたしはすぐに飲み込んで唇を手の甲で拭う。こんなまずいかしら。
「まじぃ~よ。オレもきらぁい」
「……あんたいつの間に飲んだのよ」
ザバッと大きな音に顔を向ける。そこにはいつの間にか人魚の姿に戻ったフロイドがいた。あたしとは違う長い、長い、尾びれを持て余すようにバシャと海面を飛び出させる。
「つか早く入れば? もーすぐ人魚に戻るよ」
戻る。そうか。戻るのよね、あたし。今から元の人魚の姿に。そう考えるといてもたってもいられず海に飛び込む。そして、次に目を開けたらあたしの脚は二本の足ではなく、一本の尾びれに戻っていた。
人間であれば目が開けられない海中も今はバッチリと見える。人間であれば出来ない海中での呼吸もできる。
「戻った……」
「当たり前じゃん」
背後にある熱がない。それでもフロイドの鋭いひれが着いた腕が存外優しく腰に回る。ついでにあの長い、長い、尾びれがあたしの尾びれに絡みつく。普段なら咎めるけれど人魚であることを再確認できたから拒むことはしない。寧ろ、感謝しなければいけないのかもしれない。
「ありがとう、フロイド」
「なにがぁ?」
すっとぼけた声を出すフロイドに笑みを零せば尾びれがキュッと締め付けられた。苦しくはない程よい締め付け。それでもこの状況でお互いの尾びれを締め付ける状況はよろしくない。
「なにしてんのよ」
フロイドの長い尾びれが絡みつく尾びれをブンブン振るけれど一向に解けない。もう、と抗議を含めた声を出すけれどフロイドは気にしない。寧ろ、尾びれをさらに絡みつけるしいつの間にか回った腰に回った腕がギュッと締め付ける。
ハァと溜息をついてあたしはされるがままにしようかと思ったけれどつまらない。長い尾びれが絡みつく自分の尾びれを見て動かしてみる。キュウと自分から絡んでみた。
「……いーの?」
「だめ」
耳元で囁くなと言いたい気持ちを抑えて首を横に振る。何を確認されたのかはわかっている。だから、駄目だと言う。流石にそれは駄目だと。
「ちぇ。まーいっか。時間はあるし」
「そうよ。まったく」
軽口のように答えながら背中をフロイドの身体にくっつける。でも、とあたしはその時間はいつまであるのか不思議だった。本当にあたしとフロイドに時間はあるのだろうか。そういう関係になるまでの時間があるのだろうか。
今この瞬間がまた来るとはあたしに終ぞ思えることはなかった。
お題サイト「天文学」様より
お題『she iz sea』から抜粋
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