燃えて消えて、また
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揺らめく灯を二人で守る
姿見に映る自分を見る。
何日も悩んだ服。悩んだ末に選んだ服に似合うアクセサリーと靴。色々試して辿り着いたメイクに、同じく何度も試してようやく決まった髪型と髪飾り。
「これでいい、かな?」
前髪をちょいちょいと直してついでにネイルも確認する。綺麗にできている。剥げていないし、飾りも取れていない。よし、と頷いて選び抜いた鞄を肩にかける。
もうこれ以上自分自身の見ていても意味がない。
大丈夫、大丈夫とドアノブを掴んだ瞬間に過る不安。フロイドの値踏みする視線。
――耐えられる?
考えると頭とか、お腹とか痛くなる錯覚に陥る。あまり考えすぎると本当に痛くなってしまいそう。ええい、ままよ。勢いに任せて扉を開いた。
ゲートを通って出た薔薇の王国の街はイルミネーションで輝いていた。イルミネーションだけではなく楽しそうな音楽も流れている。
珊瑚の海とは違うニューイヤー前の定番の音楽。各国それぞれあって面白くていい。
頭にいいなぁって思う音が流れてつい鼻歌を歌ってしまう。周りもきっとこの特別な空間で聞いていないだろう。
待合せに到着しても頭の中にくるくる回るのが気になる。このままだと集中できないなと思ってスマホに取り出してアプリを立ち上げ、イヤホンを着ける。
思いついた音をそのまま打ち込んでいく。
――なんかいい感じ。家に戻ったらもっと調整しよう。
とりあえず忘れないうちにとタンタンと打ち込み続ける。
一通り打ち込んでアプリを閉じる。パッと映った時間は待ち合わせの時間を少し過ぎていた。
――まだ来てない?
確か麓の街以外の外出届は大変だとか聞いたような。ならまだ来ないかってイヤホンを外して鞄に入れたときだった。
「あ、終わった?」
「ッ!」
急にかけられた声にビクッと大げさに身体と心臓が跳ねた。
ドッドッと逸る心臓を抑えながらゆっくりと顔をあげる。そこには真顔ではないけれどなんとも言えない顔のフロイドがいた。
「い、いたの?」
「うん。いたけど」
いたけど、いたげど、って何なの!
いるなら声をかけてほしいけど、あたしが他のことに集中していて来たフロイドに気づかなかったのがいけないのでは。
というか、初めてのデートでこれはありえないことなのでは。そう。あたしの方が。
「気づかなくてごめん」
「べつに。なんかすっげぇ熱中していたからオレも声かけそびれたし」
気を悪くしている様子もないけれど待たせたのは悪い。あたしが悪い。
最悪の出だしをしてしまったことが確定して気持ちが沈んでいく。さっきまで頭の中に陽気に浮かんでいた音も何だか暗く感じる。
「そっちって私服外出いいの?」
「ぇ、あ、うん」
よく見たらフロイドはナイトレイブンカレッジの制服を着ていた。それに胸の中心に小さな鉛玉ができる。
――そうじゃん……あっちは私服で外出じゃなくて制服だったわ……。
帰省するときも制服だと言うし、私服はルームウェアくらいだって言っていたっけ。
自分の学校が私服外出OKなばかりにすっかり忘れていた。
――これなら制服でくればよかったぁ~~!
制服なら普段よりもちょっと特別にすればいいし。あんなに悩まなかったはず。
ずん、ずん、と自分の失態が重なって行って鉛玉が大きくなっていく。
「いいね。似合ってる。あ、ヴァネッサは行きてぇところあんの?」
「ぇ、ぅ、あっ、あるけどフロイドは?」
「ん? オレ? んー」
沈んでいた気持ちが吹き飛んでほんとに気にした様子がないフロイドがスマホを出した。何か探している様子だけれどそんなことよりも自分自身の耳が
――ぇ、いま似合ってるって言った?
あまりにさらっとしていたから自信がないけれど。でも、フロイドからの誉め言葉は純粋に嬉しかった。
「オレはここ行きたいんだけど」
「んぇ?」
誉め言葉を噛みしめているとフロイドがスマホを見せてきた。ディスプレイ画面に映っていたのは薔薇の王国発祥の靴ブランドだった。
「あ、そこいいわよね。あたしも今度の誕生日に作ってもらおうと思っていたの」
もともとは男性向けブランドだけだったけれど近年は女性向けにも力を入れて作っている。既製品も購入できるけれど、やっぱり老舗だけに職人がよくてオーダーシューズが人気なところ。あたしも次の誕生日ではレティと一緒にパーティードレスに合うパンプスを作ってもらう予定だった。
「フロイドもオーダー?」
「うん。これ、」
長い指がスライドして出した靴はフロイドが好きそうな革靴だった。老遊びが利いている感じから若者向けなのかもしれない。
「カジュアルな服にも似合いそうでいいんじゃない。素敵よ」
「だよなぇ。ま、実際見て気に入ったら作ろうかなぁって」
機嫌のいいフロイドに安心しながらも後で何かお詫びをしようと決める。
今度はあたしが手にしたままのスマホの画面をタップする。ロックを外して、以前から行ってみたかった場所の写真を出す。
「あたしはここに行きたいの」
「ん?」
眉を顰めたと思ったらフロイドがあたしの手ごとスマホを掴み自分の方へと引っ張った。大きいと常々思っていた手はやっぱり大きい。
――ぜ、ぜんぶ。
手の甲にフロイドの手のひらの感触がする。なんか必然的に距離も近くなった気がする。なんかもはやトキメキを通り越して心臓が痛い。
「植物園? それって学校みてぇなやつぅ?」
つまんなくねぇ、と端々に滲ませる声にようやく現実に引き戻される。といっても、まだ心臓はちょっと忙しない。早死にしそうと思いながら慌てて言葉を付け加える。
「植物園だからそうだけれど、あたしが行きたいのはここに隣接されている庭園よ」
「庭?」
「そう」と頷きながら空いている手でもう一度タップする。すると、今度は別の写真が現れる。
「薔薇の王国ってガーデニングが盛んなんですって」
薔薇の王国出身の友だち曰く、大きな都市でも小さな街でも庭園があったりする。またガーデニングが盛んで花屋も多いと。この街は植物園がある通り植物の研究も盛んであり、こうした大きくて庭園がある。
「ここの植物園もそうだけれど庭園も薔薇の王国では有名なの」
「へぇ」というフロイドの返事は興味が薄いように思える。これは行けないかなと思った。
――ま、期待してなったからいいけど。
今日はフロイドの行きたいところに連れ回される気配がする。それも自分では中々いかないところだったりするから楽しいから別に構わない。けれど、フロイドが自分ばっかり提案しているとならないようにしないと。
「一番近いのはフロイドの行きたいところね。行きましょ」
「ん」
「ッ、」
フロイドの手が離れる瞬間、長い指が手の甲を掠めた。肌を撫でるような感触に息を飲んだ。他意はないと思う、たぶん、と思いながらそろりとフロイドを盗み見すると――。
意地悪く微笑むフロイドがいた。これはどうやらワザとらしい。他意があったらしい。
何か言ってやりたいのにさっきの感触を思い出して声が出ない。代わりに睨みつければ笑われる。
「あは♪ 真っ赤!」
「く、ぅっ」
「そんな顔で睨まれても怖くねぇしぃ~」
この野郎と、思いながらスマホを鞄にしまう。それからフロイドを無視して歩き出す。
「あ、待てよ」
すぐに長い足でフロイドが追い付く。隣を歩くフロイドを下から睨み上げる。当のフロイドはちょっと楽しそうにあたしを見下ろして――。
「オレのこと待たせた仕返し♪」
さっきまでお詫び云々考えていた自分がバカらしくなった。同時にこれから何かあったらこうして小さな仕返しをされるとたまらない気持ちになった。
* * *
「夢中だったねぇ」
「ぐっ」
紅茶が口から零れそうになるのを何とか耐える。
フロイドは目の前でニヤニヤしながらピンクとイエローのチェック柄が可愛いケーキをつつく。その姿を見るに機嫌を損ねた様子はない。むしろ、何だか機嫌がいい。
「……イヤじゃないの?」
「ん? 別に」
なんで、と言いたげなフロイドに不思議な気持ちが込み上げる。今までのフロイドだったらと考えても今の今まで二人きりで出かけたことがなかったから分からない。
自分が今まで見て来たフロイドと目の前にいるフロイドがブレて重ならない。
――新しい一面と言っていいのか?
そんな簡単な言葉で片づけていいものなのか。思わずじっと見ているとパスタを飲み込んだフロイドが首を傾げる。
「さっきからなんだよ……あ、コレ気になんの?」
ちょいちょい、とフォークでケーキを指す。ケーキは食べやすいように薄く切られていているけれど、マジパンで包まれているという点から多分あたしの胃には重い。想像しただけで苦しくて眉を顰める。
「無理……」
「これくらいならいけんじゃねぇの?」
「だって、それ周りマジパンでしょ……たぶん無理」
「マジ? 相変わらずちっせぇ胃袋」
フロイドはその可愛らしいケーキを切りながら口に運ぶ。ガバっていきそうなのに意外に上品だった。食べ続けるフロイドの様子をぼんやりと見つめる。すると、ケーキを食べる手をいったん止めたフロイドの視線があしたに向けられる。
「なんか言いたいことあんじゃねぇの?」
左右色の異なる瞳は責める色もなく、探る色もない。それさえも何だか不思議な心地にさせて何だか肩の力が抜けて――。
「フロイドがフロイドじゃないみたいだなって」
「は?」
ポカンと間抜けに口が開く。ウツボの人魚らしくギザギザと鋭く尖った歯が見える。あれで口の中を噛んだら一発で口内炎になりそう。なんてくだらないことを考えていると開いた口が閉じて意外と薄い唇から「ハァ」と呆れたため息が洩れた。
「んだよ。それ」
フロイドが目を据わらせ肘をつく。じっとり、という感じで少しだけ背中に汗が滲む。
「悪い意味で言っているわけじゃないんだけど」
「じゃあ、どういう意味だよ」
「なんか……あたしと一緒にいても飽きないっていうか機嫌悪くならないんだっていう」
素直な感想ともとれることを告げれば、坐っていた目が丸くなって瞬く。目じりが下がっているからそういう仕草は何だか少しだけ幼く見えるというか年相応に見える。
「待ち合わせとか、さっきのお店とかもあたしが待たせても飽きずに待ってくれて、機嫌もいいなって思ったの」
「ぁ、あ~なるほど」
合点がいったのか一度置いたフォークを持ってまたケーキを食べていく。咀嚼するフロイドを見てあたしもカップを持ってぬるくなった紅茶を口に運ぶ。
舌に触れると少しの酸味と甘みがやって来る。さっきよりも紅茶の味が分かるようになった気がする。ようやく緊張が抜けて来たのかもしれない。
「ヴァネッサ。お前自身が思っているより、オレから見たらおもしれぇーし、見ていて飽きねぇから」
「んぐぅ、」
紅茶の味が楽しめると思った瞬間にフロイドから言葉の隕石がやって来た。咽そうになるのを何とか耐えてフロイドを見る。
フロイドは唇を閉じて綺麗に微笑んでいる。だのに左右色の違う瞳は捕食者のようで恐ろしい。背中の汗がさらに滲んだ。
「あはっ♪ 別に今は取って食おうなんてつもりねぇし」
「いま、今って、あんた」
「うん。〝今〟は、」
ギラギラとした双眸と唇から覗く鋭い歯がこれほど恐ろしいとは。ふると震える身体にあたしは紅茶に安らぎを求めた。
* * *
先ほどの会話が怖くてカフェから出たら少し距離を取るつもりが出来なかった。
「はい」
「ぇ?」
カフェを出るとフロイドが大きな手を差し出してきた。
何と思わず「なに」と首を傾げて訊ねれば盛大なため息をつかれる。
「なによ……」
「お前、デートしたことねぇの?」
「……ないけど」
フロイドのことを好きになる前も、後も、告白されることはあったけれど受け入れたことはない。二人きりにさせられたときはさっさと帰ったからデートはしたことがない。
「ならしかたねぇか。ほら」
「ぇ、あ、ちょ」
するりと無防備な手が取られてあっという間に指を絡めとられてしまった。ぴったりとくっつく手のひらに汗をかきそうになる。
そんなあたしの緊張も知らずにフロイドが手を引いて歩き出す。身長もあって足も長いフロイドの歩調はあたしに合わせてくれているようだった。
本当に慣れている。こんなに慣れているってことはフロイドにもしかしてフロイドは初めてのデートではないのでは? それに気づくとフロイドのスマート加減に納得がいく。いくけれどモヤモヤはする。これは紛れもない嫉妬だ。
「フロイドは何だか慣れているけど、初めてじゃないの?」
モヤモヤが思わず口から零れ出る。すぐ口から出てしまうのがイヤになるし、束縛などを嫌うフロイドもこんなあたしの言葉はイヤに違いない。
自己嫌悪に陥り始めているとぐいっとあらぬ方向に手を引かれる。「ぇ」と顔を上げると大通りから外れていて人気がなかった。
辺りを見回している間にフロイドがしっかりとした足取りでズンズン進んでいく。どんどん人の気配もなくなっていく。
完全に裏路に入ったと思われるところでフロイドの足が止まる。急に止まったフロイドにぶつかりそうになったのを寸で堪える。
いつの間にか上がった息を整えているとにゅっと目の前にフロイドの顔が現れる。
「ねぇ。キス、していい?」
息の乱れもないフロイドの超ド直球の言葉に息を止まりそうになる。けれど、息が上がったあたしでは止まることはない。ただ、心臓がより忙しくなった気はする。
「はっ、はぁ、いま、いま、言うっていうか、ぇ、なに、いき、なッ」
何があった。分からず息を整えながら距離を取ろうとする。けれど、繋がったままの手を引かれてそれは叶わず、むしろ距離が縮まってしまった。それでもなんとか離れようとしたけれどそれを見越したように腰を抱かれてしまう。
「だめ?」
耳元で囁かれた甘ったるい声に身体が熱くなる。けれど、ずっと、もうずっとフロイドには負けっぱなし。最後というのもおかしな話だけれど少しは、抵抗したい。
しっかりと腰を抱かれてしまったから上手く動けない。それでも何とか動いてフロイドの顔を見る。じっと、見下ろすフロイドの瞳はさっきのカフェでの瞳に似ていて背筋に汗が流れる。
「いま、じゃないとダメ?」
「うん。いま」
「……どうして?」
ようやく整った息で問いかける。フロイドはギラギラした目のまま少し目尻を緩ませる。
なんて器用ななんて思いながら見ていると不意に近づいて来る。また前みたいに不意打ちにキスしてくるのかと身構えている。
「まだしねぇーよ」
近くにまで顔を寄せたけれどフロイドは途中で止まった。その様子に安堵しながらも「する気はあるのね」と言えば「うん」と返された。
「したいからここまで連れ込んだんだし」
「連れ込んだ自覚はあるの……」
「あっけど? で、あー、なんでしたいんだっけ?」
フロイドが珍しく本題に戻しながら眉を顰める。何だか難しい顔に何だか汗が滲むけれど手を繋いでいることを思い出して頑張って平静になる。
「さっき、嫉妬しただろ?」
「ぇ」
さっき、ってデートが初めてじゃないって言ったこと。確かにあのモヤモヤは見ず知らずヒトへの嫉妬であることは間違いない。間違いないけれど――。
「あんた、嫉妬されるのイヤでしょ」
例の小エビちゃんのこともあるんだからあたしが嫉妬深いのはフロイドだって気づいているはず。でも、嫉妬ってやっぱり自分勝手な感情だと思う。さっきの八つ当たりのような言葉もイヤだったし。
「ごめん」
「は、いきなりなに?」
愉しそうだったのが一転困惑気味なフロイドに小さな声で「嫉妬、して……」と告げる。それにフロイドは視線を一度外してまたあたしに戻した。
「お前の嫉妬はキライじゃねぇよ」
「ぇ、う、ウソでしょ」
「こんなんでウソついてもいみねぇーだろ」
「まぁ、落ち着けよって思うけど」それにはそうだけれど。信じられない気持ちで目の前のフロイドを見る。フロイドがあたしの視線を受け止めてか眉を顰める。
「だって、お前のはさ……」
言ってフロイドの視線が斜めに向けられたと思うと一転して面倒くさそうな顔になった。
「ぁ゛~~もうめんどい」
「ぇ、ここで投げる! ちょ、ちょっと!」
ぎゅっとあたしを抱きしめてくるフロイド。あたしは気になるところを説明されずやきもきするけれど――。
「ハァ。もういいわ。イヤじゃないなら」
「そ! イヤじゃねぇーから!」
パッと明るい顔になるフロイドに気が抜ける。
「これからもあんたに嫌われないような嫉妬をしていくわ」
はぁ、とため息をつくとギュッと腰を強く抱かれる。なに、とフロイドを見るとまたギラギラした目が復活していた。それに今の自分の状況を思い出す。
「もう、いい?」
はっきりとした答えは見つからなかったけれど、ここまで付き合ってくれたのだからもういいか。それでも自分から承諾するというのは中々恥ずかしく頷くことしかできなかった。
「かぁいーね」
何がといいたかったけれど唇は緊張で引き結んで動かない。くすくす笑う声が近づいて――唇が触れた。
触れた唇の感触が以前よりもはっきりと分かる。以前の喰われるような突然のキスよりもただ触れるキスだけの方がなんか、なんか。
「よかった?」
「ッ」
僅かに離れて囁かれた声に現実に引き戻される。離れていくフロイドを見ればニヤニヤとしている。いっぱい、いっぱいのあたしとは大違い。
ずるい、とじっとり睨んでいると――。
――あれ? 赤い?
フロイドの耳が薄っすらと赤いような気がする。どっちだろうとまじまじ見ていると「なに?」と聞かれる。
「耳、赤いけど大丈夫?」
別の理由かなと思って訊ねるとフロイドの目が見開きバッと勢いよく耳を隠した。それからフロイドの白い頬が薄っすらと赤みを増した。
「あら、意外」
「んだよ」
珍しくばつの悪そうなフロイドに面白くなるけれど茶化さないでおく。その方が今後のためになるし。
「フロイド、次は植物園でいい?」
「いいけど……」
恥ずかしさを誤魔化すように顔を腕で隠すフロイドが可愛い。そんなことも今は言わないけれどいつか言えたらいいな。
フロイドの空いている手が目に入ってあたしは自然に手が伸びて、大きな手に触れる。一瞬、ビクッと跳ねた手に少し笑って今度はあたしから指を絡めた。
「大丈夫?」
「ん、」
少し拗ねたような声でもしっかりと手を握り返してくれる。そして、またゆっくりと歩き始めてくれた。
2025.03.30
姿見に映る自分を見る。
何日も悩んだ服。悩んだ末に選んだ服に似合うアクセサリーと靴。色々試して辿り着いたメイクに、同じく何度も試してようやく決まった髪型と髪飾り。
「これでいい、かな?」
前髪をちょいちょいと直してついでにネイルも確認する。綺麗にできている。剥げていないし、飾りも取れていない。よし、と頷いて選び抜いた鞄を肩にかける。
もうこれ以上自分自身の見ていても意味がない。
大丈夫、大丈夫とドアノブを掴んだ瞬間に過る不安。フロイドの値踏みする視線。
――耐えられる?
考えると頭とか、お腹とか痛くなる錯覚に陥る。あまり考えすぎると本当に痛くなってしまいそう。ええい、ままよ。勢いに任せて扉を開いた。
ゲートを通って出た薔薇の王国の街はイルミネーションで輝いていた。イルミネーションだけではなく楽しそうな音楽も流れている。
珊瑚の海とは違うニューイヤー前の定番の音楽。各国それぞれあって面白くていい。
頭にいいなぁって思う音が流れてつい鼻歌を歌ってしまう。周りもきっとこの特別な空間で聞いていないだろう。
待合せに到着しても頭の中にくるくる回るのが気になる。このままだと集中できないなと思ってスマホに取り出してアプリを立ち上げ、イヤホンを着ける。
思いついた音をそのまま打ち込んでいく。
――なんかいい感じ。家に戻ったらもっと調整しよう。
とりあえず忘れないうちにとタンタンと打ち込み続ける。
一通り打ち込んでアプリを閉じる。パッと映った時間は待ち合わせの時間を少し過ぎていた。
――まだ来てない?
確か麓の街以外の外出届は大変だとか聞いたような。ならまだ来ないかってイヤホンを外して鞄に入れたときだった。
「あ、終わった?」
「ッ!」
急にかけられた声にビクッと大げさに身体と心臓が跳ねた。
ドッドッと逸る心臓を抑えながらゆっくりと顔をあげる。そこには真顔ではないけれどなんとも言えない顔のフロイドがいた。
「い、いたの?」
「うん。いたけど」
いたけど、いたげど、って何なの!
いるなら声をかけてほしいけど、あたしが他のことに集中していて来たフロイドに気づかなかったのがいけないのでは。
というか、初めてのデートでこれはありえないことなのでは。そう。あたしの方が。
「気づかなくてごめん」
「べつに。なんかすっげぇ熱中していたからオレも声かけそびれたし」
気を悪くしている様子もないけれど待たせたのは悪い。あたしが悪い。
最悪の出だしをしてしまったことが確定して気持ちが沈んでいく。さっきまで頭の中に陽気に浮かんでいた音も何だか暗く感じる。
「そっちって私服外出いいの?」
「ぇ、あ、うん」
よく見たらフロイドはナイトレイブンカレッジの制服を着ていた。それに胸の中心に小さな鉛玉ができる。
――そうじゃん……あっちは私服で外出じゃなくて制服だったわ……。
帰省するときも制服だと言うし、私服はルームウェアくらいだって言っていたっけ。
自分の学校が私服外出OKなばかりにすっかり忘れていた。
――これなら制服でくればよかったぁ~~!
制服なら普段よりもちょっと特別にすればいいし。あんなに悩まなかったはず。
ずん、ずん、と自分の失態が重なって行って鉛玉が大きくなっていく。
「いいね。似合ってる。あ、ヴァネッサは行きてぇところあんの?」
「ぇ、ぅ、あっ、あるけどフロイドは?」
「ん? オレ? んー」
沈んでいた気持ちが吹き飛んでほんとに気にした様子がないフロイドがスマホを出した。何か探している様子だけれどそんなことよりも自分自身の耳が
――ぇ、いま似合ってるって言った?
あまりにさらっとしていたから自信がないけれど。でも、フロイドからの誉め言葉は純粋に嬉しかった。
「オレはここ行きたいんだけど」
「んぇ?」
誉め言葉を噛みしめているとフロイドがスマホを見せてきた。ディスプレイ画面に映っていたのは薔薇の王国発祥の靴ブランドだった。
「あ、そこいいわよね。あたしも今度の誕生日に作ってもらおうと思っていたの」
もともとは男性向けブランドだけだったけれど近年は女性向けにも力を入れて作っている。既製品も購入できるけれど、やっぱり老舗だけに職人がよくてオーダーシューズが人気なところ。あたしも次の誕生日ではレティと一緒にパーティードレスに合うパンプスを作ってもらう予定だった。
「フロイドもオーダー?」
「うん。これ、」
長い指がスライドして出した靴はフロイドが好きそうな革靴だった。老遊びが利いている感じから若者向けなのかもしれない。
「カジュアルな服にも似合いそうでいいんじゃない。素敵よ」
「だよなぇ。ま、実際見て気に入ったら作ろうかなぁって」
機嫌のいいフロイドに安心しながらも後で何かお詫びをしようと決める。
今度はあたしが手にしたままのスマホの画面をタップする。ロックを外して、以前から行ってみたかった場所の写真を出す。
「あたしはここに行きたいの」
「ん?」
眉を顰めたと思ったらフロイドがあたしの手ごとスマホを掴み自分の方へと引っ張った。大きいと常々思っていた手はやっぱり大きい。
――ぜ、ぜんぶ。
手の甲にフロイドの手のひらの感触がする。なんか必然的に距離も近くなった気がする。なんかもはやトキメキを通り越して心臓が痛い。
「植物園? それって学校みてぇなやつぅ?」
つまんなくねぇ、と端々に滲ませる声にようやく現実に引き戻される。といっても、まだ心臓はちょっと忙しない。早死にしそうと思いながら慌てて言葉を付け加える。
「植物園だからそうだけれど、あたしが行きたいのはここに隣接されている庭園よ」
「庭?」
「そう」と頷きながら空いている手でもう一度タップする。すると、今度は別の写真が現れる。
「薔薇の王国ってガーデニングが盛んなんですって」
薔薇の王国出身の友だち曰く、大きな都市でも小さな街でも庭園があったりする。またガーデニングが盛んで花屋も多いと。この街は植物園がある通り植物の研究も盛んであり、こうした大きくて庭園がある。
「ここの植物園もそうだけれど庭園も薔薇の王国では有名なの」
「へぇ」というフロイドの返事は興味が薄いように思える。これは行けないかなと思った。
――ま、期待してなったからいいけど。
今日はフロイドの行きたいところに連れ回される気配がする。それも自分では中々いかないところだったりするから楽しいから別に構わない。けれど、フロイドが自分ばっかり提案しているとならないようにしないと。
「一番近いのはフロイドの行きたいところね。行きましょ」
「ん」
「ッ、」
フロイドの手が離れる瞬間、長い指が手の甲を掠めた。肌を撫でるような感触に息を飲んだ。他意はないと思う、たぶん、と思いながらそろりとフロイドを盗み見すると――。
意地悪く微笑むフロイドがいた。これはどうやらワザとらしい。他意があったらしい。
何か言ってやりたいのにさっきの感触を思い出して声が出ない。代わりに睨みつければ笑われる。
「あは♪ 真っ赤!」
「く、ぅっ」
「そんな顔で睨まれても怖くねぇしぃ~」
この野郎と、思いながらスマホを鞄にしまう。それからフロイドを無視して歩き出す。
「あ、待てよ」
すぐに長い足でフロイドが追い付く。隣を歩くフロイドを下から睨み上げる。当のフロイドはちょっと楽しそうにあたしを見下ろして――。
「オレのこと待たせた仕返し♪」
さっきまでお詫び云々考えていた自分がバカらしくなった。同時にこれから何かあったらこうして小さな仕返しをされるとたまらない気持ちになった。
* * *
「夢中だったねぇ」
「ぐっ」
紅茶が口から零れそうになるのを何とか耐える。
フロイドは目の前でニヤニヤしながらピンクとイエローのチェック柄が可愛いケーキをつつく。その姿を見るに機嫌を損ねた様子はない。むしろ、何だか機嫌がいい。
「……イヤじゃないの?」
「ん? 別に」
なんで、と言いたげなフロイドに不思議な気持ちが込み上げる。今までのフロイドだったらと考えても今の今まで二人きりで出かけたことがなかったから分からない。
自分が今まで見て来たフロイドと目の前にいるフロイドがブレて重ならない。
――新しい一面と言っていいのか?
そんな簡単な言葉で片づけていいものなのか。思わずじっと見ているとパスタを飲み込んだフロイドが首を傾げる。
「さっきからなんだよ……あ、コレ気になんの?」
ちょいちょい、とフォークでケーキを指す。ケーキは食べやすいように薄く切られていているけれど、マジパンで包まれているという点から多分あたしの胃には重い。想像しただけで苦しくて眉を顰める。
「無理……」
「これくらいならいけんじゃねぇの?」
「だって、それ周りマジパンでしょ……たぶん無理」
「マジ? 相変わらずちっせぇ胃袋」
フロイドはその可愛らしいケーキを切りながら口に運ぶ。ガバっていきそうなのに意外に上品だった。食べ続けるフロイドの様子をぼんやりと見つめる。すると、ケーキを食べる手をいったん止めたフロイドの視線があしたに向けられる。
「なんか言いたいことあんじゃねぇの?」
左右色の異なる瞳は責める色もなく、探る色もない。それさえも何だか不思議な心地にさせて何だか肩の力が抜けて――。
「フロイドがフロイドじゃないみたいだなって」
「は?」
ポカンと間抜けに口が開く。ウツボの人魚らしくギザギザと鋭く尖った歯が見える。あれで口の中を噛んだら一発で口内炎になりそう。なんてくだらないことを考えていると開いた口が閉じて意外と薄い唇から「ハァ」と呆れたため息が洩れた。
「んだよ。それ」
フロイドが目を据わらせ肘をつく。じっとり、という感じで少しだけ背中に汗が滲む。
「悪い意味で言っているわけじゃないんだけど」
「じゃあ、どういう意味だよ」
「なんか……あたしと一緒にいても飽きないっていうか機嫌悪くならないんだっていう」
素直な感想ともとれることを告げれば、坐っていた目が丸くなって瞬く。目じりが下がっているからそういう仕草は何だか少しだけ幼く見えるというか年相応に見える。
「待ち合わせとか、さっきのお店とかもあたしが待たせても飽きずに待ってくれて、機嫌もいいなって思ったの」
「ぁ、あ~なるほど」
合点がいったのか一度置いたフォークを持ってまたケーキを食べていく。咀嚼するフロイドを見てあたしもカップを持ってぬるくなった紅茶を口に運ぶ。
舌に触れると少しの酸味と甘みがやって来る。さっきよりも紅茶の味が分かるようになった気がする。ようやく緊張が抜けて来たのかもしれない。
「ヴァネッサ。お前自身が思っているより、オレから見たらおもしれぇーし、見ていて飽きねぇから」
「んぐぅ、」
紅茶の味が楽しめると思った瞬間にフロイドから言葉の隕石がやって来た。咽そうになるのを何とか耐えてフロイドを見る。
フロイドは唇を閉じて綺麗に微笑んでいる。だのに左右色の違う瞳は捕食者のようで恐ろしい。背中の汗がさらに滲んだ。
「あはっ♪ 別に今は取って食おうなんてつもりねぇし」
「いま、今って、あんた」
「うん。〝今〟は、」
ギラギラとした双眸と唇から覗く鋭い歯がこれほど恐ろしいとは。ふると震える身体にあたしは紅茶に安らぎを求めた。
* * *
先ほどの会話が怖くてカフェから出たら少し距離を取るつもりが出来なかった。
「はい」
「ぇ?」
カフェを出るとフロイドが大きな手を差し出してきた。
何と思わず「なに」と首を傾げて訊ねれば盛大なため息をつかれる。
「なによ……」
「お前、デートしたことねぇの?」
「……ないけど」
フロイドのことを好きになる前も、後も、告白されることはあったけれど受け入れたことはない。二人きりにさせられたときはさっさと帰ったからデートはしたことがない。
「ならしかたねぇか。ほら」
「ぇ、あ、ちょ」
するりと無防備な手が取られてあっという間に指を絡めとられてしまった。ぴったりとくっつく手のひらに汗をかきそうになる。
そんなあたしの緊張も知らずにフロイドが手を引いて歩き出す。身長もあって足も長いフロイドの歩調はあたしに合わせてくれているようだった。
本当に慣れている。こんなに慣れているってことはフロイドにもしかしてフロイドは初めてのデートではないのでは? それに気づくとフロイドのスマート加減に納得がいく。いくけれどモヤモヤはする。これは紛れもない嫉妬だ。
「フロイドは何だか慣れているけど、初めてじゃないの?」
モヤモヤが思わず口から零れ出る。すぐ口から出てしまうのがイヤになるし、束縛などを嫌うフロイドもこんなあたしの言葉はイヤに違いない。
自己嫌悪に陥り始めているとぐいっとあらぬ方向に手を引かれる。「ぇ」と顔を上げると大通りから外れていて人気がなかった。
辺りを見回している間にフロイドがしっかりとした足取りでズンズン進んでいく。どんどん人の気配もなくなっていく。
完全に裏路に入ったと思われるところでフロイドの足が止まる。急に止まったフロイドにぶつかりそうになったのを寸で堪える。
いつの間にか上がった息を整えているとにゅっと目の前にフロイドの顔が現れる。
「ねぇ。キス、していい?」
息の乱れもないフロイドの超ド直球の言葉に息を止まりそうになる。けれど、息が上がったあたしでは止まることはない。ただ、心臓がより忙しくなった気はする。
「はっ、はぁ、いま、いま、言うっていうか、ぇ、なに、いき、なッ」
何があった。分からず息を整えながら距離を取ろうとする。けれど、繋がったままの手を引かれてそれは叶わず、むしろ距離が縮まってしまった。それでもなんとか離れようとしたけれどそれを見越したように腰を抱かれてしまう。
「だめ?」
耳元で囁かれた甘ったるい声に身体が熱くなる。けれど、ずっと、もうずっとフロイドには負けっぱなし。最後というのもおかしな話だけれど少しは、抵抗したい。
しっかりと腰を抱かれてしまったから上手く動けない。それでも何とか動いてフロイドの顔を見る。じっと、見下ろすフロイドの瞳はさっきのカフェでの瞳に似ていて背筋に汗が流れる。
「いま、じゃないとダメ?」
「うん。いま」
「……どうして?」
ようやく整った息で問いかける。フロイドはギラギラした目のまま少し目尻を緩ませる。
なんて器用ななんて思いながら見ていると不意に近づいて来る。また前みたいに不意打ちにキスしてくるのかと身構えている。
「まだしねぇーよ」
近くにまで顔を寄せたけれどフロイドは途中で止まった。その様子に安堵しながらも「する気はあるのね」と言えば「うん」と返された。
「したいからここまで連れ込んだんだし」
「連れ込んだ自覚はあるの……」
「あっけど? で、あー、なんでしたいんだっけ?」
フロイドが珍しく本題に戻しながら眉を顰める。何だか難しい顔に何だか汗が滲むけれど手を繋いでいることを思い出して頑張って平静になる。
「さっき、嫉妬しただろ?」
「ぇ」
さっき、ってデートが初めてじゃないって言ったこと。確かにあのモヤモヤは見ず知らずヒトへの嫉妬であることは間違いない。間違いないけれど――。
「あんた、嫉妬されるのイヤでしょ」
例の小エビちゃんのこともあるんだからあたしが嫉妬深いのはフロイドだって気づいているはず。でも、嫉妬ってやっぱり自分勝手な感情だと思う。さっきの八つ当たりのような言葉もイヤだったし。
「ごめん」
「は、いきなりなに?」
愉しそうだったのが一転困惑気味なフロイドに小さな声で「嫉妬、して……」と告げる。それにフロイドは視線を一度外してまたあたしに戻した。
「お前の嫉妬はキライじゃねぇよ」
「ぇ、う、ウソでしょ」
「こんなんでウソついてもいみねぇーだろ」
「まぁ、落ち着けよって思うけど」それにはそうだけれど。信じられない気持ちで目の前のフロイドを見る。フロイドがあたしの視線を受け止めてか眉を顰める。
「だって、お前のはさ……」
言ってフロイドの視線が斜めに向けられたと思うと一転して面倒くさそうな顔になった。
「ぁ゛~~もうめんどい」
「ぇ、ここで投げる! ちょ、ちょっと!」
ぎゅっとあたしを抱きしめてくるフロイド。あたしは気になるところを説明されずやきもきするけれど――。
「ハァ。もういいわ。イヤじゃないなら」
「そ! イヤじゃねぇーから!」
パッと明るい顔になるフロイドに気が抜ける。
「これからもあんたに嫌われないような嫉妬をしていくわ」
はぁ、とため息をつくとギュッと腰を強く抱かれる。なに、とフロイドを見るとまたギラギラした目が復活していた。それに今の自分の状況を思い出す。
「もう、いい?」
はっきりとした答えは見つからなかったけれど、ここまで付き合ってくれたのだからもういいか。それでも自分から承諾するというのは中々恥ずかしく頷くことしかできなかった。
「かぁいーね」
何がといいたかったけれど唇は緊張で引き結んで動かない。くすくす笑う声が近づいて――唇が触れた。
触れた唇の感触が以前よりもはっきりと分かる。以前の喰われるような突然のキスよりもただ触れるキスだけの方がなんか、なんか。
「よかった?」
「ッ」
僅かに離れて囁かれた声に現実に引き戻される。離れていくフロイドを見ればニヤニヤとしている。いっぱい、いっぱいのあたしとは大違い。
ずるい、とじっとり睨んでいると――。
――あれ? 赤い?
フロイドの耳が薄っすらと赤いような気がする。どっちだろうとまじまじ見ていると「なに?」と聞かれる。
「耳、赤いけど大丈夫?」
別の理由かなと思って訊ねるとフロイドの目が見開きバッと勢いよく耳を隠した。それからフロイドの白い頬が薄っすらと赤みを増した。
「あら、意外」
「んだよ」
珍しくばつの悪そうなフロイドに面白くなるけれど茶化さないでおく。その方が今後のためになるし。
「フロイド、次は植物園でいい?」
「いいけど……」
恥ずかしさを誤魔化すように顔を腕で隠すフロイドが可愛い。そんなことも今は言わないけれどいつか言えたらいいな。
フロイドの空いている手が目に入ってあたしは自然に手が伸びて、大きな手に触れる。一瞬、ビクッと跳ねた手に少し笑って今度はあたしから指を絡めた。
「大丈夫?」
「ん、」
少し拗ねたような声でもしっかりと手を握り返してくれる。そして、またゆっくりと歩き始めてくれた。
2025.03.30
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