燃えて消えて、また
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燃え続けている火
面白いとはかけ離れた人魚だと思ってた。
アズールとツルむようになってから紹介された幼馴染だという三姉妹の人魚。三人揃ってじぃっとオレとジェイドを値踏みするように見て来た。いや、ちゃんと表面上は取り繕っていたけれど。
で、どうやらアズールの〝トモダチ〟というのに合格したらしい。別に友達ってわけでもねぇんだけれど、説明がめんどくせぇからいいやってなった。
んで、それからちょいちょい会うことになった。アズールは姉ちゃんのことが好きらしくあんまりオレらに関わってほしくなさそうだった。それはそれで面白れぇけど、ちょぉっとあの姉ちゃんは怖いからあんまり悪戯はしないようにした。ジェイドも何かを感じたのかなぁにもしねぇ。
つーか、ジェイドはジェイドで目が昏い双子の片割れになんか絡まれていた。珍しく鬱陶し気というかなんかいつもと違うジェイドが面白れぇから放っておいた。たぶん、あいつも心底イヤというわけでもなさそうだし。言うなら満更でもないって感じ。
んで、オレっていうと――その双子の片割れに興味を持った。
最初は別に、特にって感じだったんだけど。そいつはアズールと姉ちゃん、ジェイドと双子の片割れをじぃっと見ていた。
なぁにしてんだろってオレはオレでそいつを見ていた。すると、たまに細くて長い指をトントン叩いて、何か口ずさんでんだよな。そんで鼻歌も。それがめぇちゃくちゃ上手で、なんか珊瑚の海で聞く曲と似ていたけど違ったような気がした。
ある日、一人で貝殻に何か書いていることがあってすぃっと近づいてみると――。
「楽譜?」
「ッ!」
ビクッと薄い肩が跳ねた。恐る恐るといった感じでオレの方を見上げた目はめちゃくちゃ長いまつ毛に囲われてデカかった。というか、オレに驚いて大きな瞳がより大きくなっているって感じだった。
こぉんな目ってデカくなるんだって見ていると――。
「な、なに」
薄い唇から零れた声は震えていた。そんな怖かったと首を傾げながら指を伸ばすとそれにもそいつは驚いて身体が跳ねていた。
「それ楽譜?」
「ぇ、ああ。これ。そうよ」
なんだ、と言いたげに身体の強張りがなくなった気がした。大きな瞳もオレから外れてなんかつまらなかった。けれど、小さな手の中にある楽譜も気になったままだからいい。
「オマエが作ったの?」
「まぁそうね」
「ふぅん。で、どんな曲?」
すいっと前に泳いでそいつの前に言ってその手元を覗き込む。楽譜の音符を追って鼻歌をしてみると中々面白い。
「なぁんか面白れぇ曲じゃん」
パッと作曲者を見れば大きな目を丸くして瞬かせたかと思うとくすぐったそうに笑った。
それにビッとなんかした。ビッとした意味が分からずに首を傾げる中「ありがとう」と言って貝殻の楽譜を撫でていた。
「面白い曲になってくれてよかった」
くすくす笑いながら大きな瞳がオレじゃない何かを見る。それがまたなんかイヤで追いかけるようにそいつが見ているものを見て今度はオレが目を瞬かせた。
「もしかして、曲のモチーフって〝あれ〟?」
「ええ! そう!」
高音の声はどこか愉し気だった。けれど、そいつが面白い曲のモチーフにしたものにオレも笑った。
視線の先に居たのはアズールとこいつの姉ちゃん、それにジェイドとこいつの片割れ。なるほど何だか歪で新鮮な曲で面白いと思ったのはあいつらの関係性をモチーフにしたのか。
「へぇ。なかなか悪趣味じゃん」
「心外だわ。むしろ、あんな面白いモチーフを逃す方がどうかしているわ」
整った眉を寄せ片方の口角を上げて言い返すそいつは紛れもなく面白かった。
「なぁなぁ。他になんかねぇの」
「あるけれどまだ未完なのよ」
「これだってそうなんだから」と言って彼女の白くて小さな手が楽譜を撫でる。何だかそれにモヤっとしてイラっとした。それにずっと彼女の視線を独り占めしているのも面白くない。
「ならさぁ」
「ん?」
彼女の大きな瞳がオレを見て一気にイライラが吹き飛んだ。気分を上げながらオレは彼女の手の中にあるそれを指さす。
「できたら聴かせてよ」
「興味あるの?」
「うん。いつも聞いてるやつと違ってなぁんか面白そうだし」
そう答えれば大きな瞳を瞬かせて小さく微笑んだ。
瞬間、あって理解した。
――あ~オレってこんな単純だった?
みたいな感じでまぁ好きになった。正直、アズールやジェイドと一緒にいるときとは全然違う。会う度に刺激があるかと言えば違う。ただ、会う度に彼女の態度も変わっていった。それに気安さとかじゃなくて、たぶん、たぁぶんだけれど。
――オレのこと好きなんじゃね?
そう結論に至ったのは会うのが海の中じゃない陸になったときだった。
ナイトレイブンカレッジに通うために陽光の国にある訓練所にアズールたちと一緒に受けているとき。
三人揃って遊びに来たというときだった。ジェイドは外の浜辺でレティシアに連れられて行き、アズールも姉ちゃんとどっかに行ったときだった。
オレも外にと思ったけれど、ヴァネッサと一緒に音楽室にいた。
「あのさ、別に隣に座んなくていいんじゃないの?」
隣に座って連弾するような形でオレとヴァネッサはピアノの前にいた。
ヴァネッサはなんか照れ隠しかなんかでオレに対してツンツンした態度を取ることが増えた。まぁ、明らかに照れ隠しって感じで可愛いからいいんだけれど。
「ピアノって足も使うから訓練になるじゃん」
「そうだけど、あたしは必要ないんじゃない?」
「えー。一緒に弾いたら楽しいって」
伺い気味にこっちを見上げるヴァネッサは可愛い。だから、隣にいさせるためにそれっぽく言う。
にしても、人魚の姿でもオレの方が大きいっていうか長かったけれど、人間の姿になるとより身長差がより顕著になった。つか、人魚の時も細かったけれど、人間のときとも変わらず細くて心配になる。艶やかな鱗を持った尾ビレが分かれてできた足も細く心もとない。つか、ほんと華奢すぎる。
「オマエ、ちゃんと飯食ってんの?」
「え。なにいきなり」
突然変わった話に怪訝な視線を向けてくるヴァネッサにため息をつく。
「だぁって、オマエさ、どこもかしこも細すぎ。飯食ってねぇんじゃねぇの?」
「ちゃんと食べてるわよ。それに、姉様やレティシアに比べれば言うほど細くないわよ」
いや、変わんねぇから。つか比較対象も華奢過ぎるから意味ねぇって。訓練所で見かける女のトレーナーの方とせめて比べろって。なんて言ってやりたい。
「ふぅん。ま、オレからしたら三姉妹もっとしっかりと食えって感じだけど」
「小食だからそんな食べられないのよ」
言ってこの間でデザート結構食っていたクセに、という思いを込めて見ているとヴァネッサがオレの視線から逃げるようにピアノを弾き始めた。
長い指が軽やかに鍵盤を叩いていく。相変わらず生き物のように指が動く。同時に聞いたことがない曲だった。
「なぁ。これって新曲?」
「そ。気分展開に作ってみたの」
ふぅんと思いながらタン、タンタタン、と動く指を見て何となくオレも鍵盤を弾き始める。ヴァネッサが作った曲に合わせるつもりはないけど、邪魔をするつもりもない。そんな感じで弾いているとヴァネッサの音が変わる。
「面白いわね。それ、」
弾んだ声と変わる曲調にオレの気分も上がっていく。
なんだかんだその後もオレも、ヴァネッサも満足するまで引き続けた。
* * *
「つか、なんで、脈なしだと思ったんだよ」
ヴァネッサを見送って一人学園に向かって帰っている最中思わず零れる不満。
だって、あいつがこんな鈍感だと思わなかったし。そもそも。
――そんな分かりづれぇことしたかなぁ。
オレからしたらヴァネッサへの態度なんて結構分かりやすいのに。そもそも他の女子にだって見向きもしてねぇし。あいつしか見てねぇのに。
――まぁ、この学園は面白れぇ奴たくさんいるけど。
それはそれ、これはこれじゃん。小エビちゃんだって異世界から来たオモシロ生徒だから覚えているだけだし。つか、ずっと興味持たれているってことに気づいてなさすぎじゃん。
――どうして分からねぇんだよ。
鈍感なヴァネッサにイラつきながらも「まぁいいや」と思った。だって、ネチネチ考えたってもう別に問題はないから。
さっきまでのヴァネッサとのやり取りを思い出して自然とイラつきがなくなる。
「あ~楽しみ」
初めてのデートでどこまでできっかな。別れ際に頬にキスをして真っ赤になったヴァネッサを思い出す。あの様子だとまだ夢とか思っていそうだし。まぁ、もう色々分からせてしまえばいいし、分からなすぎるなら――。
「どーしよっかなぁ♪」
ヴァネッサの反応を考えていたらいつの間にか学園前に到着していた。
2024.11.04
面白いとはかけ離れた人魚だと思ってた。
アズールとツルむようになってから紹介された幼馴染だという三姉妹の人魚。三人揃ってじぃっとオレとジェイドを値踏みするように見て来た。いや、ちゃんと表面上は取り繕っていたけれど。
で、どうやらアズールの〝トモダチ〟というのに合格したらしい。別に友達ってわけでもねぇんだけれど、説明がめんどくせぇからいいやってなった。
んで、それからちょいちょい会うことになった。アズールは姉ちゃんのことが好きらしくあんまりオレらに関わってほしくなさそうだった。それはそれで面白れぇけど、ちょぉっとあの姉ちゃんは怖いからあんまり悪戯はしないようにした。ジェイドも何かを感じたのかなぁにもしねぇ。
つーか、ジェイドはジェイドで目が昏い双子の片割れになんか絡まれていた。珍しく鬱陶し気というかなんかいつもと違うジェイドが面白れぇから放っておいた。たぶん、あいつも心底イヤというわけでもなさそうだし。言うなら満更でもないって感じ。
んで、オレっていうと――その双子の片割れに興味を持った。
最初は別に、特にって感じだったんだけど。そいつはアズールと姉ちゃん、ジェイドと双子の片割れをじぃっと見ていた。
なぁにしてんだろってオレはオレでそいつを見ていた。すると、たまに細くて長い指をトントン叩いて、何か口ずさんでんだよな。そんで鼻歌も。それがめぇちゃくちゃ上手で、なんか珊瑚の海で聞く曲と似ていたけど違ったような気がした。
ある日、一人で貝殻に何か書いていることがあってすぃっと近づいてみると――。
「楽譜?」
「ッ!」
ビクッと薄い肩が跳ねた。恐る恐るといった感じでオレの方を見上げた目はめちゃくちゃ長いまつ毛に囲われてデカかった。というか、オレに驚いて大きな瞳がより大きくなっているって感じだった。
こぉんな目ってデカくなるんだって見ていると――。
「な、なに」
薄い唇から零れた声は震えていた。そんな怖かったと首を傾げながら指を伸ばすとそれにもそいつは驚いて身体が跳ねていた。
「それ楽譜?」
「ぇ、ああ。これ。そうよ」
なんだ、と言いたげに身体の強張りがなくなった気がした。大きな瞳もオレから外れてなんかつまらなかった。けれど、小さな手の中にある楽譜も気になったままだからいい。
「オマエが作ったの?」
「まぁそうね」
「ふぅん。で、どんな曲?」
すいっと前に泳いでそいつの前に言ってその手元を覗き込む。楽譜の音符を追って鼻歌をしてみると中々面白い。
「なぁんか面白れぇ曲じゃん」
パッと作曲者を見れば大きな目を丸くして瞬かせたかと思うとくすぐったそうに笑った。
それにビッとなんかした。ビッとした意味が分からずに首を傾げる中「ありがとう」と言って貝殻の楽譜を撫でていた。
「面白い曲になってくれてよかった」
くすくす笑いながら大きな瞳がオレじゃない何かを見る。それがまたなんかイヤで追いかけるようにそいつが見ているものを見て今度はオレが目を瞬かせた。
「もしかして、曲のモチーフって〝あれ〟?」
「ええ! そう!」
高音の声はどこか愉し気だった。けれど、そいつが面白い曲のモチーフにしたものにオレも笑った。
視線の先に居たのはアズールとこいつの姉ちゃん、それにジェイドとこいつの片割れ。なるほど何だか歪で新鮮な曲で面白いと思ったのはあいつらの関係性をモチーフにしたのか。
「へぇ。なかなか悪趣味じゃん」
「心外だわ。むしろ、あんな面白いモチーフを逃す方がどうかしているわ」
整った眉を寄せ片方の口角を上げて言い返すそいつは紛れもなく面白かった。
「なぁなぁ。他になんかねぇの」
「あるけれどまだ未完なのよ」
「これだってそうなんだから」と言って彼女の白くて小さな手が楽譜を撫でる。何だかそれにモヤっとしてイラっとした。それにずっと彼女の視線を独り占めしているのも面白くない。
「ならさぁ」
「ん?」
彼女の大きな瞳がオレを見て一気にイライラが吹き飛んだ。気分を上げながらオレは彼女の手の中にあるそれを指さす。
「できたら聴かせてよ」
「興味あるの?」
「うん。いつも聞いてるやつと違ってなぁんか面白そうだし」
そう答えれば大きな瞳を瞬かせて小さく微笑んだ。
瞬間、あって理解した。
――あ~オレってこんな単純だった?
みたいな感じでまぁ好きになった。正直、アズールやジェイドと一緒にいるときとは全然違う。会う度に刺激があるかと言えば違う。ただ、会う度に彼女の態度も変わっていった。それに気安さとかじゃなくて、たぶん、たぁぶんだけれど。
――オレのこと好きなんじゃね?
そう結論に至ったのは会うのが海の中じゃない陸になったときだった。
ナイトレイブンカレッジに通うために陽光の国にある訓練所にアズールたちと一緒に受けているとき。
三人揃って遊びに来たというときだった。ジェイドは外の浜辺でレティシアに連れられて行き、アズールも姉ちゃんとどっかに行ったときだった。
オレも外にと思ったけれど、ヴァネッサと一緒に音楽室にいた。
「あのさ、別に隣に座んなくていいんじゃないの?」
隣に座って連弾するような形でオレとヴァネッサはピアノの前にいた。
ヴァネッサはなんか照れ隠しかなんかでオレに対してツンツンした態度を取ることが増えた。まぁ、明らかに照れ隠しって感じで可愛いからいいんだけれど。
「ピアノって足も使うから訓練になるじゃん」
「そうだけど、あたしは必要ないんじゃない?」
「えー。一緒に弾いたら楽しいって」
伺い気味にこっちを見上げるヴァネッサは可愛い。だから、隣にいさせるためにそれっぽく言う。
にしても、人魚の姿でもオレの方が大きいっていうか長かったけれど、人間の姿になるとより身長差がより顕著になった。つか、人魚の時も細かったけれど、人間のときとも変わらず細くて心配になる。艶やかな鱗を持った尾ビレが分かれてできた足も細く心もとない。つか、ほんと華奢すぎる。
「オマエ、ちゃんと飯食ってんの?」
「え。なにいきなり」
突然変わった話に怪訝な視線を向けてくるヴァネッサにため息をつく。
「だぁって、オマエさ、どこもかしこも細すぎ。飯食ってねぇんじゃねぇの?」
「ちゃんと食べてるわよ。それに、姉様やレティシアに比べれば言うほど細くないわよ」
いや、変わんねぇから。つか比較対象も華奢過ぎるから意味ねぇって。訓練所で見かける女のトレーナーの方とせめて比べろって。なんて言ってやりたい。
「ふぅん。ま、オレからしたら三姉妹もっとしっかりと食えって感じだけど」
「小食だからそんな食べられないのよ」
言ってこの間でデザート結構食っていたクセに、という思いを込めて見ているとヴァネッサがオレの視線から逃げるようにピアノを弾き始めた。
長い指が軽やかに鍵盤を叩いていく。相変わらず生き物のように指が動く。同時に聞いたことがない曲だった。
「なぁ。これって新曲?」
「そ。気分展開に作ってみたの」
ふぅんと思いながらタン、タンタタン、と動く指を見て何となくオレも鍵盤を弾き始める。ヴァネッサが作った曲に合わせるつもりはないけど、邪魔をするつもりもない。そんな感じで弾いているとヴァネッサの音が変わる。
「面白いわね。それ、」
弾んだ声と変わる曲調にオレの気分も上がっていく。
なんだかんだその後もオレも、ヴァネッサも満足するまで引き続けた。
* * *
「つか、なんで、脈なしだと思ったんだよ」
ヴァネッサを見送って一人学園に向かって帰っている最中思わず零れる不満。
だって、あいつがこんな鈍感だと思わなかったし。そもそも。
――そんな分かりづれぇことしたかなぁ。
オレからしたらヴァネッサへの態度なんて結構分かりやすいのに。そもそも他の女子にだって見向きもしてねぇし。あいつしか見てねぇのに。
――まぁ、この学園は面白れぇ奴たくさんいるけど。
それはそれ、これはこれじゃん。小エビちゃんだって異世界から来たオモシロ生徒だから覚えているだけだし。つか、ずっと興味持たれているってことに気づいてなさすぎじゃん。
――どうして分からねぇんだよ。
鈍感なヴァネッサにイラつきながらも「まぁいいや」と思った。だって、ネチネチ考えたってもう別に問題はないから。
さっきまでのヴァネッサとのやり取りを思い出して自然とイラつきがなくなる。
「あ~楽しみ」
初めてのデートでどこまでできっかな。別れ際に頬にキスをして真っ赤になったヴァネッサを思い出す。あの様子だとまだ夢とか思っていそうだし。まぁ、もう色々分からせてしまえばいいし、分からなすぎるなら――。
「どーしよっかなぁ♪」
ヴァネッサの反応を考えていたらいつの間にか学園前に到着していた。
2024.11.04