ジェイド
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素敵な貴方を独占したくて
輝石の国にあるとある街。街路樹はすっかり秋らしい色に染まっていた。
その中を浮かれた気持ちで待ち合わせ場所に向かう。スキップしたいくらいだけれど、流石にそれは控える。私だって、それをするとちょぉっと注目しちゃうことくらい分かっているわ。まぁ、でも、鼻歌くらいは許してほしい。
「ぁ!」
遠目からでも分かる人影を発見。周囲の人たちと比べて頭ひとつ高い姿は見つけやすくて助かる。そのまま鼻歌を歌いながら小走りで駆け寄る。
「ジェ~イド!」
機嫌よく声をかけながら腕に抱き着いて――パチと目の前にいる人と目が合う。そう。目が合った。女の子と。
見知らぬ女の子が私を見て目を見開いている。それから気まずそうに視線を逸らして早口で「ぁ、ありがとうございましたっ!」と足早に去って行く。よく見れば一人じゃなくてもう一人いた。
「もしかしてお邪魔しちゃったのかしら?」
「いえ、ちょうどお話も終わるところでしたよ」
窺うように見上げたジェイドはにっこりと微笑んだ。
そう、と思って腕から少し離れて上から下と顔を動かす。そして、彼の姿に私は満足げに頷く。
「うん! バッチリ再現できているわ!」
ジェイドの着ている服はナイトレイブンカレッジで行われている麓の街との共同企画で着ていたもの。ベレー帽も、アクセサリーも、服も、靴もすべて同じもの。そのすべてを私が衣装を扱っているテイラーが運営しているお店で購入して彼に贈った。
「そんなにこの恰好の僕が気に入りました」
「もちろん! あとで写真も撮りましょうね」
ちゃんとフォトスポットも抑えていることを告げるとジェイド苦笑する。
「わかりました。ところで、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なに?」
ジェイドが先ほど私がしたように頭から足元まで見るように視線を動かした。それから首を傾げる。
「貴方の服も同じテイラーのものですか?」
「そうなの!」
気づいてくれたことにまたテンションが上がる。思わず声が大きくなったのを慌てて口を押える。けれど、嬉しすぎて身体が揺れてしまう。
「ふふ。気づいてくれて嬉しいわ。そうなの。貴方の服に合うようなのを私も買ったのよ」
衣装を取り扱っていたお店はもちろん女性向けの服もある。そして、まだ時期的にも秋色の服も取り扱っておりせっかくだしとジェイドの衣装と揃えてみたのだけれど。
「どうかしら?」
ちょっと不安になってきた。あの時はテンションも高かったというか、今の今までテンションが高かった。今さらになってジェイドの反応が気になって来た。
「ふはっ。十分似合っていますよ。なんか普段の貴方と雰囲気も違って新鮮です」
笑うジェイドを見てほっと胸を撫で下ろす。
「とはいえ、どうしてこの街を選んだんですか?」
「ん~ちょっと賢者の島って気分じゃなかったって感じかしら」
本来の理由を隠すように言うとジェイドの目が意地悪そうに細くなる。その目から逃げるように視線を逸らす。
「賢者の島もここに負けないほど素晴らしい秋景色ですよ」
「知っているわよ……」
ジェイドの追撃にそう答える。今の時期の麓の街が素敵なのはもちろん知っているわ。フロイドが動画で紹介していたダイナーも気になったし。
でも、私はジェイドとのデートにこの街を選んだ。
「……ジェイドはやっぱり賢者の島の方がよかった?」
他の場所へ行くときの手続きが大変って聞いていたし煩わしかったのかしら。逸らしていた視線をジェイドに向ける。すると、彼は「違う」と言うように首を横に振った。
「いえ、僕も初めて来る街なので楽しみでしたよ。でも、何か他に理由があるのかと思って」
探るような、というよりも見透かすように目を細めるジェイド。その瞳に意地の悪さはない。もしかしたら純粋に疑問に思ったのかもしれない。
これに堪えなければデートは始まらない気がする。同時に申し訳ない気持ちが込み上げる。だって、たいした理由ではないから。つまり、彼が面白がるほどの理由ではないから。むしろ、嫌がられてしまう理由かもしれない。
口をするのは少し怖いけれど正直に話すことにした。だって、隠しても面白くないから。
「たいした理由じゃないの……あの、誰も知らない……顔見知りがいないところでジェイドとゆっくりデートしたかったの。ただ、それだけなの」
あの街はナイトレイブンカレッジの生徒も他にも私の学校の生徒もたくさんいる。特に島外に出るのに手続きが大変なナイトレイブンカレッジは麓の街に行くしかない。となれば、彼の同級生に、先輩に、後輩に、会う確率が高くなる。そこでもし面白いことがあればきっとジェイドは私のデートよりもそっちを選ぶに違いない。
せっかく素敵な服を着ているのにそんなことってないと思うの。
「貴方と少しでも一緒にいたかったの。誰にも邪魔されずに、」
束縛したいわけではない。けれど、私の中にも少しだけジェイドを独占したいと思う気持ちが出来てしまった。それは彼にとってあまりよくないかもしれないだろう。でも、付き合っているなら少しだけ、ほんの少しだけでも私と一緒にいる時間が欲しい。
こんな欲にジェイドも流石に呆れたかしら。それともイヤになったかしら。
何だか気まずくて自然と視線が下に向かっていたらぐいっと無理矢理に顔を上げられた。必然的にジェイドとしっかり目線を合うはめになった。
左右色の違う瞳は微笑んでいた。
「レティシア……随分と可愛らしいことを考えるんですね」
嫌気がさしているような声音ではなかった。意外にも好反応に少し安心する。
よかった、と安心していると顎を掴まれた手が離れる。その手を名残惜しいと思う間もなく長い指が流れるように髪を掬い上げる。
「貴方の独占欲なんてこの服を贈られた時点で分かっていますよ」
にっこりと微笑んだまま掬い上げた髪を耳にかけてくれた。ふいに耳に指が触れたのだけれど――ちょっと触り方がアレだった。
「これから色々周るのに今の、どうかと思う」
「おや。一体なんのことでしょうか」
眉を下げてにんまりと笑うジェイド。
まぁ。はぐらかすなんて。今度されたときは私も知らんぷりすることにする。絶対にくみ取ってあげない――たぶん。
「さ、レティシア」
「いきましょう」と手を差し出される。差し出された手を取ると長い指が絡まる。その瞬間が好きだったりする。
「満足気ですね」
「あら。まだまだよ」
言ってから自分の発言にちょっと面白くなる。素敵なジェイドがいて満足して、誰にも邪魔されずにデートできるのに、まだ私は満足できていなかったらしい。なんて貪欲なのかしら。
「ふふ。では、満足するまで付き合いますから――レティシア、貴方も付き合ってくださいよ」
「ええ、任せてちょうだい」
お互い満足いくまで共に過ごしましょう。その言葉にジェイドは満足の欠片を零した。
2025.11.22
輝石の国にあるとある街。街路樹はすっかり秋らしい色に染まっていた。
その中を浮かれた気持ちで待ち合わせ場所に向かう。スキップしたいくらいだけれど、流石にそれは控える。私だって、それをするとちょぉっと注目しちゃうことくらい分かっているわ。まぁ、でも、鼻歌くらいは許してほしい。
「ぁ!」
遠目からでも分かる人影を発見。周囲の人たちと比べて頭ひとつ高い姿は見つけやすくて助かる。そのまま鼻歌を歌いながら小走りで駆け寄る。
「ジェ~イド!」
機嫌よく声をかけながら腕に抱き着いて――パチと目の前にいる人と目が合う。そう。目が合った。女の子と。
見知らぬ女の子が私を見て目を見開いている。それから気まずそうに視線を逸らして早口で「ぁ、ありがとうございましたっ!」と足早に去って行く。よく見れば一人じゃなくてもう一人いた。
「もしかしてお邪魔しちゃったのかしら?」
「いえ、ちょうどお話も終わるところでしたよ」
窺うように見上げたジェイドはにっこりと微笑んだ。
そう、と思って腕から少し離れて上から下と顔を動かす。そして、彼の姿に私は満足げに頷く。
「うん! バッチリ再現できているわ!」
ジェイドの着ている服はナイトレイブンカレッジで行われている麓の街との共同企画で着ていたもの。ベレー帽も、アクセサリーも、服も、靴もすべて同じもの。そのすべてを私が衣装を扱っているテイラーが運営しているお店で購入して彼に贈った。
「そんなにこの恰好の僕が気に入りました」
「もちろん! あとで写真も撮りましょうね」
ちゃんとフォトスポットも抑えていることを告げるとジェイド苦笑する。
「わかりました。ところで、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なに?」
ジェイドが先ほど私がしたように頭から足元まで見るように視線を動かした。それから首を傾げる。
「貴方の服も同じテイラーのものですか?」
「そうなの!」
気づいてくれたことにまたテンションが上がる。思わず声が大きくなったのを慌てて口を押える。けれど、嬉しすぎて身体が揺れてしまう。
「ふふ。気づいてくれて嬉しいわ。そうなの。貴方の服に合うようなのを私も買ったのよ」
衣装を取り扱っていたお店はもちろん女性向けの服もある。そして、まだ時期的にも秋色の服も取り扱っておりせっかくだしとジェイドの衣装と揃えてみたのだけれど。
「どうかしら?」
ちょっと不安になってきた。あの時はテンションも高かったというか、今の今までテンションが高かった。今さらになってジェイドの反応が気になって来た。
「ふはっ。十分似合っていますよ。なんか普段の貴方と雰囲気も違って新鮮です」
笑うジェイドを見てほっと胸を撫で下ろす。
「とはいえ、どうしてこの街を選んだんですか?」
「ん~ちょっと賢者の島って気分じゃなかったって感じかしら」
本来の理由を隠すように言うとジェイドの目が意地悪そうに細くなる。その目から逃げるように視線を逸らす。
「賢者の島もここに負けないほど素晴らしい秋景色ですよ」
「知っているわよ……」
ジェイドの追撃にそう答える。今の時期の麓の街が素敵なのはもちろん知っているわ。フロイドが動画で紹介していたダイナーも気になったし。
でも、私はジェイドとのデートにこの街を選んだ。
「……ジェイドはやっぱり賢者の島の方がよかった?」
他の場所へ行くときの手続きが大変って聞いていたし煩わしかったのかしら。逸らしていた視線をジェイドに向ける。すると、彼は「違う」と言うように首を横に振った。
「いえ、僕も初めて来る街なので楽しみでしたよ。でも、何か他に理由があるのかと思って」
探るような、というよりも見透かすように目を細めるジェイド。その瞳に意地の悪さはない。もしかしたら純粋に疑問に思ったのかもしれない。
これに堪えなければデートは始まらない気がする。同時に申し訳ない気持ちが込み上げる。だって、たいした理由ではないから。つまり、彼が面白がるほどの理由ではないから。むしろ、嫌がられてしまう理由かもしれない。
口をするのは少し怖いけれど正直に話すことにした。だって、隠しても面白くないから。
「たいした理由じゃないの……あの、誰も知らない……顔見知りがいないところでジェイドとゆっくりデートしたかったの。ただ、それだけなの」
あの街はナイトレイブンカレッジの生徒も他にも私の学校の生徒もたくさんいる。特に島外に出るのに手続きが大変なナイトレイブンカレッジは麓の街に行くしかない。となれば、彼の同級生に、先輩に、後輩に、会う確率が高くなる。そこでもし面白いことがあればきっとジェイドは私のデートよりもそっちを選ぶに違いない。
せっかく素敵な服を着ているのにそんなことってないと思うの。
「貴方と少しでも一緒にいたかったの。誰にも邪魔されずに、」
束縛したいわけではない。けれど、私の中にも少しだけジェイドを独占したいと思う気持ちが出来てしまった。それは彼にとってあまりよくないかもしれないだろう。でも、付き合っているなら少しだけ、ほんの少しだけでも私と一緒にいる時間が欲しい。
こんな欲にジェイドも流石に呆れたかしら。それともイヤになったかしら。
何だか気まずくて自然と視線が下に向かっていたらぐいっと無理矢理に顔を上げられた。必然的にジェイドとしっかり目線を合うはめになった。
左右色の違う瞳は微笑んでいた。
「レティシア……随分と可愛らしいことを考えるんですね」
嫌気がさしているような声音ではなかった。意外にも好反応に少し安心する。
よかった、と安心していると顎を掴まれた手が離れる。その手を名残惜しいと思う間もなく長い指が流れるように髪を掬い上げる。
「貴方の独占欲なんてこの服を贈られた時点で分かっていますよ」
にっこりと微笑んだまま掬い上げた髪を耳にかけてくれた。ふいに耳に指が触れたのだけれど――ちょっと触り方がアレだった。
「これから色々周るのに今の、どうかと思う」
「おや。一体なんのことでしょうか」
眉を下げてにんまりと笑うジェイド。
まぁ。はぐらかすなんて。今度されたときは私も知らんぷりすることにする。絶対にくみ取ってあげない――たぶん。
「さ、レティシア」
「いきましょう」と手を差し出される。差し出された手を取ると長い指が絡まる。その瞬間が好きだったりする。
「満足気ですね」
「あら。まだまだよ」
言ってから自分の発言にちょっと面白くなる。素敵なジェイドがいて満足して、誰にも邪魔されずにデートできるのに、まだ私は満足できていなかったらしい。なんて貪欲なのかしら。
「ふふ。では、満足するまで付き合いますから――レティシア、貴方も付き合ってくださいよ」
「ええ、任せてちょうだい」
お互い満足いくまで共に過ごしましょう。その言葉にジェイドは満足の欠片を零した。
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