不自然がしあわせを連れてくる
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不自然がしあわせを連れてくる
好きなヒト、気になるヒトから優しくされるのは誰だって嬉しいか。
私? 私ね。そうね。んー。嬉しいと言えば嬉しいかも?
だって、彼が私に優しいってとってもレアだから。
あ、違うわね。彼にとって誰かに優しいこと自体がレアかも。
そもそも〝優しい〟って考えるの難しかない?
何を持って優しいっていうのか。ていうか、優しいって何が優しいのかしら。
その時になってみないと分からないものよね。
――なんて話したのは最近だったかしら。
ぼんやりとした曖昧な記憶過ぎて本当にした会話なのかも分からない。そもそも最近意識がなんだかぼんやりとしている。はっきりと明瞭としない。まるでずっと寝起きの状態でスッキリとしない。
「きもちわるい、」
立ち眩みのような感覚に襲われて思わず砂浜にしゃがみ込む。
ふと、どうして私は砂浜にいるのだろうか。しかも、素足。細かい砂が足の間に入る感覚があるから素足だ。今、自分自身が素足であることに気づき、砂が俄かに温かく感じる。
〝最近〟こんなことばかり。ハッとすると学校じゃない違う場所にいる。ついさっきまで学校にいたのに、意識がふと途切れる瞬間に違う場所にいる。その場所は意識が途切れる少し前に〝次は〇〇に遊びに行きたいな〟とか〝旅行に行きたいな〟とか思った場所にいる。
魔法で瞬間移動なんて私の魔力量を考えると実現不可。そもそもできたとしたら制御不能過ぎるし、オーバーブロット間違いなし。
――じゃあ、この現象はなに?
私は何らかの病気にかかっているのだろうか。魔法を使えるヒト特有の何か。そうじゃなきゃこんな頻繁にあちらこちらに移動している自分に説明がつかない。きっと、そう。魔法が使えるヒト特有の何か病気的なものにかかっているに違いない。
「なら早く学校に戻った方が……」
「おや。もう戻ってしまわれるのですか?」
「ッ」
今まで浴びていた日差しを遮るような大きな影が私にかぶさる。
聞き覚えのある声に心臓がドクドクと煩い。一瞬詰めた息を聞かれないように吐き出して恐る恐る見上げる。
「ジェイド……?」
太陽を遮るように立っていた。細めた目の端を僅かに和らげて妙に〝優しい〟表情で私を見下ろしている。
そんな彼を見るとこめかみ辺りが少し痛むような、締めつけられるような気がする。今の今までなかった体調不良が出てきた。
「顔色が随分と酷い。暑い中、日傘もささずに何をしているんですか」
まったく、と言いたげな声はどこか柔らかくて〝優しく〟て――違う。けどのその違いが何なのか考えようとすると意識が遠くなるような、ぼんやりとする。
彼の言う通り、日差しの強い中、日傘をささず、帽子もかぶらずにいるのは軽率だった。早くここから涼しいところに避難しないといけない。
先ほどよりも熱く感じる砂浜から立ち上がると少しよろける。
まぁ、これくらいと思ったら咄嗟に肩に他人の体温が触れた。それは私よりも冷たい気がした。
「レティシア……大丈夫ですか」
触れたヒトの心配に滲む声に私はか細く「平気……」と答えた。けれど、そのヒトは手を離してくれなかった。むしろ、私の元気のない声にしっかりと肩を抱かれてしまった。いや、肩だけじゃなかった。ふいに、砂浜から足が離れた。
布を挟んで誰かに膝を抱えられているのが分かる。そして、頬が私を抱き上げている人の身体に触れる。
「少し休みましょう」
いつになく〝優しい〟声が頭上から降ってくる。それに「平気」と答えたい。この腕から降りて自分の足でレストハウスに向かう。でも、どうしてか瞼が重い。意識が遠くなるような気がする。眠くて、眠くて仕方ないときのような感覚。
「寝ても平気ですよ」
柔らかな声に私の意識はスコンと落ちてしまった。
* * *
「レティシアッ!」
「っ!」
身体が揺さぶられるのと同時に目が覚める。パチと私自身でも勢いよく目が覚めたと思うほどはっきりとしている。先ほどまでのぼんやりとした感覚もなくとても爽快。
爽快とはいえすぐに身体は起こせずゆっくりと上体を起こすと自然と欠伸が出る。
「ふぁ」
「ずいぶんとぐっすりと寝ていたんですね」
「また夜更かしですか」と呆れた声が何だか久しぶりで懐かしく感じる。
――そうそう。ジェイドはこれよね。
何だかそう思って自然と笑みが浮かぶと口に髪が入りかけているのに気づく。
おっと、いけないと手で避けようとしたときだった。私の手の前に黒い何かが視界の端に入る。そして、そっと〝優しく〟私に触れた。
思わずビクッと身体が跳ねる、とそっと手が離れる。
「すいません。髪の毛が口に入りそうだったので、つい」
「ぁ、そうだったの。ありがとう」
「いえ」
ちょっとツンとした声に安心する。けど、僅かに振れた部分が何だかゾワゾワする。皮手袋越しだったから体温なんて分からない。だのに、妙に冷える。
「顔色が悪いですね」
「そう?」
「ええ……保健室に行きますか?」
僅かに心配を滲ませた声は何度か聞いたことがある。彼らしい気遣う声色は妙に安心する。
「平気。大丈夫よ」
「ほんとうに?」
「うん。平気」
ふふ。心配性ね、と笑って立ち上がる。ふと、景色がいつもと違う。いつも見慣れているものと違うというか〝ここ〟は――。
「ナイトレイブンカレッジ? あら? 交流会なんてあったかしら?」
というか他校でぐっすりと寝ていたなんて流石に恥ずかしい。
やだな、と思って下を見た時だった。
「ぇ?」
制服が違う。なぜだかそう思った。〝黒〟を基調とした制服に違和感が襲う。
「ねぇ。ジェイド。私の制服おかしくない?」
「いえ? なにも?」
思わず確認するが不思議そうに首を傾げるジェイド。どうやら私の制服はおかしくないらしい。でも、何だか妙な気分だ。
「私、ナイトレイブンカレッジの制服着てる……」
「ふふ。ずいぶんとおかしなことを言いますね」
「ぇ? だって――」
「だって、貴方はナイトレイブンカレッジ生でしょ」
私の言葉を引きづいたように〝ジェイド〟が言う。それに私の頭に「そうだっけ」という言葉が浮かぶけれどすぐに霧散した。
「そういえば、そうね……なんか別の魔法士養成学校に通っていた気がして」
「居眠りしていたときの〝夢〟ですか?」
「夢?」
「夢でなければ妄想でも?」
妄想と言われて腑に落ちた。そういえば。そういうことも考えたことがあった。
「そうね。きっと貴方と別の学校に通っていたら私は全然会えなかったでしょうね」
「貴方は私に積極的に会ってくれないし」と付け足す。それにまた腑に落ちて何だか面白くなって自然と笑いが洩れる。
「私が声をかけないと何もしてくれない。」
「そういうヒトよ」と言えば眉がキュッと真ん中に寄る。まるでそうじゃない、と言いたげな顔にまた笑いそうになる。
「ふふ。違うなら貴方から会いに来てね」
「ハァ。もしもの話でしょうが分かりましたよ」
「約束よ」
念を押す私にジェイドがしょうがいと言ったように笑う様は――やっぱり何か違った。
2024.09.08
【 タイトル 】
お題配布サイト「エナメル」様から
『砂礫、またたき、宝石』より抜粋
好きなヒト、気になるヒトから優しくされるのは誰だって嬉しいか。
私? 私ね。そうね。んー。嬉しいと言えば嬉しいかも?
だって、彼が私に優しいってとってもレアだから。
あ、違うわね。彼にとって誰かに優しいこと自体がレアかも。
そもそも〝優しい〟って考えるの難しかない?
何を持って優しいっていうのか。ていうか、優しいって何が優しいのかしら。
その時になってみないと分からないものよね。
――なんて話したのは最近だったかしら。
ぼんやりとした曖昧な記憶過ぎて本当にした会話なのかも分からない。そもそも最近意識がなんだかぼんやりとしている。はっきりと明瞭としない。まるでずっと寝起きの状態でスッキリとしない。
「きもちわるい、」
立ち眩みのような感覚に襲われて思わず砂浜にしゃがみ込む。
ふと、どうして私は砂浜にいるのだろうか。しかも、素足。細かい砂が足の間に入る感覚があるから素足だ。今、自分自身が素足であることに気づき、砂が俄かに温かく感じる。
〝最近〟こんなことばかり。ハッとすると学校じゃない違う場所にいる。ついさっきまで学校にいたのに、意識がふと途切れる瞬間に違う場所にいる。その場所は意識が途切れる少し前に〝次は〇〇に遊びに行きたいな〟とか〝旅行に行きたいな〟とか思った場所にいる。
魔法で瞬間移動なんて私の魔力量を考えると実現不可。そもそもできたとしたら制御不能過ぎるし、オーバーブロット間違いなし。
――じゃあ、この現象はなに?
私は何らかの病気にかかっているのだろうか。魔法を使えるヒト特有の何か。そうじゃなきゃこんな頻繁にあちらこちらに移動している自分に説明がつかない。きっと、そう。魔法が使えるヒト特有の何か病気的なものにかかっているに違いない。
「なら早く学校に戻った方が……」
「おや。もう戻ってしまわれるのですか?」
「ッ」
今まで浴びていた日差しを遮るような大きな影が私にかぶさる。
聞き覚えのある声に心臓がドクドクと煩い。一瞬詰めた息を聞かれないように吐き出して恐る恐る見上げる。
「ジェイド……?」
太陽を遮るように立っていた。細めた目の端を僅かに和らげて妙に〝優しい〟表情で私を見下ろしている。
そんな彼を見るとこめかみ辺りが少し痛むような、締めつけられるような気がする。今の今までなかった体調不良が出てきた。
「顔色が随分と酷い。暑い中、日傘もささずに何をしているんですか」
まったく、と言いたげな声はどこか柔らかくて〝優しく〟て――違う。けどのその違いが何なのか考えようとすると意識が遠くなるような、ぼんやりとする。
彼の言う通り、日差しの強い中、日傘をささず、帽子もかぶらずにいるのは軽率だった。早くここから涼しいところに避難しないといけない。
先ほどよりも熱く感じる砂浜から立ち上がると少しよろける。
まぁ、これくらいと思ったら咄嗟に肩に他人の体温が触れた。それは私よりも冷たい気がした。
「レティシア……大丈夫ですか」
触れたヒトの心配に滲む声に私はか細く「平気……」と答えた。けれど、そのヒトは手を離してくれなかった。むしろ、私の元気のない声にしっかりと肩を抱かれてしまった。いや、肩だけじゃなかった。ふいに、砂浜から足が離れた。
布を挟んで誰かに膝を抱えられているのが分かる。そして、頬が私を抱き上げている人の身体に触れる。
「少し休みましょう」
いつになく〝優しい〟声が頭上から降ってくる。それに「平気」と答えたい。この腕から降りて自分の足でレストハウスに向かう。でも、どうしてか瞼が重い。意識が遠くなるような気がする。眠くて、眠くて仕方ないときのような感覚。
「寝ても平気ですよ」
柔らかな声に私の意識はスコンと落ちてしまった。
* * *
「レティシアッ!」
「っ!」
身体が揺さぶられるのと同時に目が覚める。パチと私自身でも勢いよく目が覚めたと思うほどはっきりとしている。先ほどまでのぼんやりとした感覚もなくとても爽快。
爽快とはいえすぐに身体は起こせずゆっくりと上体を起こすと自然と欠伸が出る。
「ふぁ」
「ずいぶんとぐっすりと寝ていたんですね」
「また夜更かしですか」と呆れた声が何だか久しぶりで懐かしく感じる。
――そうそう。ジェイドはこれよね。
何だかそう思って自然と笑みが浮かぶと口に髪が入りかけているのに気づく。
おっと、いけないと手で避けようとしたときだった。私の手の前に黒い何かが視界の端に入る。そして、そっと〝優しく〟私に触れた。
思わずビクッと身体が跳ねる、とそっと手が離れる。
「すいません。髪の毛が口に入りそうだったので、つい」
「ぁ、そうだったの。ありがとう」
「いえ」
ちょっとツンとした声に安心する。けど、僅かに振れた部分が何だかゾワゾワする。皮手袋越しだったから体温なんて分からない。だのに、妙に冷える。
「顔色が悪いですね」
「そう?」
「ええ……保健室に行きますか?」
僅かに心配を滲ませた声は何度か聞いたことがある。彼らしい気遣う声色は妙に安心する。
「平気。大丈夫よ」
「ほんとうに?」
「うん。平気」
ふふ。心配性ね、と笑って立ち上がる。ふと、景色がいつもと違う。いつも見慣れているものと違うというか〝ここ〟は――。
「ナイトレイブンカレッジ? あら? 交流会なんてあったかしら?」
というか他校でぐっすりと寝ていたなんて流石に恥ずかしい。
やだな、と思って下を見た時だった。
「ぇ?」
制服が違う。なぜだかそう思った。〝黒〟を基調とした制服に違和感が襲う。
「ねぇ。ジェイド。私の制服おかしくない?」
「いえ? なにも?」
思わず確認するが不思議そうに首を傾げるジェイド。どうやら私の制服はおかしくないらしい。でも、何だか妙な気分だ。
「私、ナイトレイブンカレッジの制服着てる……」
「ふふ。ずいぶんとおかしなことを言いますね」
「ぇ? だって――」
「だって、貴方はナイトレイブンカレッジ生でしょ」
私の言葉を引きづいたように〝ジェイド〟が言う。それに私の頭に「そうだっけ」という言葉が浮かぶけれどすぐに霧散した。
「そういえば、そうね……なんか別の魔法士養成学校に通っていた気がして」
「居眠りしていたときの〝夢〟ですか?」
「夢?」
「夢でなければ妄想でも?」
妄想と言われて腑に落ちた。そういえば。そういうことも考えたことがあった。
「そうね。きっと貴方と別の学校に通っていたら私は全然会えなかったでしょうね」
「貴方は私に積極的に会ってくれないし」と付け足す。それにまた腑に落ちて何だか面白くなって自然と笑いが洩れる。
「私が声をかけないと何もしてくれない。」
「そういうヒトよ」と言えば眉がキュッと真ん中に寄る。まるでそうじゃない、と言いたげな顔にまた笑いそうになる。
「ふふ。違うなら貴方から会いに来てね」
「ハァ。もしもの話でしょうが分かりましたよ」
「約束よ」
念を押す私にジェイドがしょうがいと言ったように笑う様は――やっぱり何か違った。
2024.09.08
【 タイトル 】
お題配布サイト「エナメル」様から
『砂礫、またたき、宝石』より抜粋
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