ジェイド
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ただ僕だけが
春の青天と柔らかい気候。彼女が朝食のときに「散歩に行きましょう」と誘って来た。ジェイドは誘いを断ることなく頷いた。このところ、お互い休みも中々合わなくてゆっくりと過ごすことがなかった。
朝の名残が空気に残る時間。まだ人の気配もない遊歩道。途中で犬の散歩をしている人に彼女が話しかける。飼い主に了承を得たのかしゃがんで犬を撫でる。
その姿を上から覗き込むように見下ろす。
小さな頭。だから、毎回帽子を購入するときはオーダメイドしていると言う。
背中に流れる髪が風でさらさら流れる。やっぱり髪留めでまとめたほうがよかったのではないかと今更思う。
ひとしきり犬を撫で終わり、散歩を再開させる。
取り留めない会話をしながらたまに足を止めて写真を撮って歩き続ける。ふいに横を歩く彼女の綺麗な形をした頭を見下ろす。
身長差があるため真上から見ることができる。毎度毎度見惚れるほどに綺麗な形だと見下ろしていると――。
「なぁに?」
見下ろしていた綺麗な形をしていた頭が今度は小さな顔に変わる。シャープな線で描かれる輪郭。昏く沈む瞳には銀の星が散らばっている。その瞳を縁どるのはさらさらとした髪と同じ色の長い睫毛。彼女が瞬くたびにバサバサ音がしそうだった。
瞳の間にあるのは鼻筋の通った鼻で、そこから下に進めば淡く色づく薄い唇がある。薄い唇は手入れの行き届いた柔らかい唇なのを知っているのはどれだけいるのか。
「ジェイド?」
薄い唇が動いて名前を不思議そうな声で呼ぶ。まじまじと彼女の顔を観察していたジェイドの名前を。
不思議そうに瞬きを繰り返すとバサバサと音を立てるように長い睫毛が動く。羽のよう、と思いながらじっと見ていると綺麗に整った眉が下がる。
「なにか着いてる?」
「いいえ。なにも」
「なら、なに?」
こちらを見上げたまま首を傾げるとまたさらりと髪が動く。その様が美しいなと思いながら「とくに」と答えようとして口を噤む。
彼女を見ていたのは特に意味はない。特別な意味はないけれど――。
「貴方の鑑賞をしていただけですよ」
「私の鑑賞?」
「はい」
腰を折って見上げる彼女に顔を近づける。昏く沈む双眸に映るのはジェイドだけ。もちろん、彼女の瞳にめいっぱい映る権利を得ているのもジェイドだけ。
昏い瞳に満足気に微笑んでいる自分が映っている。
「それは愉しいの?」
「ええ。もちろん」
「あら、そう……ふふ」
意外そうに言いながら眦を緩むせて透き通るような白い肌を色つかせる。
淡く色づく目もとはとても魅力的で自然と引き寄せられて――。
「ぁ」
反射的に閉じると同時に僅かな風を感じたような気がした。彼女の睫毛の羽ばたきのせいだろうか。
そんなわけないか、と顔を話して彼女の顔を見る。離れた分さきほどより顔すべてが見えて自然に笑い声が零れた。
「ふふっ、貴方もそんな顔になることがあるんですね」
「だって……」
透き通るような白い肌は今やすべて真っ赤になっている。首筋まで色づいているのを見るのは昼間 ではめったに見られない光景。でも、その光景は瞼を伏せて目元を抑える細く華奢な手で隠されてしまった。
「隠さなくてもいいじゃないですか」
「だって恥ずかしいから」
「……貴方が今更いいますか」
「だって……」
目元を隠していた手を僅かに下げてこちらを見てくる姿は少し可愛い。そう思えるようになった自分に心中で苦笑が浮かぶ。
自分の成長を実感しながら手を下げる彼女の細い手を取る。絵を描く手は手入れをしっかりしているのか細く柔らかい。すっぽりとジェイドの手に隠される。
「もう少し歩きましょう」
「ええ。もちろんよ」
頷くと彼女の細い指が指に絡んでキュッと握られる。ぴったりと繋がる手に自然と笑みが浮かんだ。
「今日はほんといい天気ですね」
2024.04.15
春の青天と柔らかい気候。彼女が朝食のときに「散歩に行きましょう」と誘って来た。ジェイドは誘いを断ることなく頷いた。このところ、お互い休みも中々合わなくてゆっくりと過ごすことがなかった。
朝の名残が空気に残る時間。まだ人の気配もない遊歩道。途中で犬の散歩をしている人に彼女が話しかける。飼い主に了承を得たのかしゃがんで犬を撫でる。
その姿を上から覗き込むように見下ろす。
小さな頭。だから、毎回帽子を購入するときはオーダメイドしていると言う。
背中に流れる髪が風でさらさら流れる。やっぱり髪留めでまとめたほうがよかったのではないかと今更思う。
ひとしきり犬を撫で終わり、散歩を再開させる。
取り留めない会話をしながらたまに足を止めて写真を撮って歩き続ける。ふいに横を歩く彼女の綺麗な形をした頭を見下ろす。
身長差があるため真上から見ることができる。毎度毎度見惚れるほどに綺麗な形だと見下ろしていると――。
「なぁに?」
見下ろしていた綺麗な形をしていた頭が今度は小さな顔に変わる。シャープな線で描かれる輪郭。昏く沈む瞳には銀の星が散らばっている。その瞳を縁どるのはさらさらとした髪と同じ色の長い睫毛。彼女が瞬くたびにバサバサ音がしそうだった。
瞳の間にあるのは鼻筋の通った鼻で、そこから下に進めば淡く色づく薄い唇がある。薄い唇は手入れの行き届いた柔らかい唇なのを知っているのはどれだけいるのか。
「ジェイド?」
薄い唇が動いて名前を不思議そうな声で呼ぶ。まじまじと彼女の顔を観察していたジェイドの名前を。
不思議そうに瞬きを繰り返すとバサバサと音を立てるように長い睫毛が動く。羽のよう、と思いながらじっと見ていると綺麗に整った眉が下がる。
「なにか着いてる?」
「いいえ。なにも」
「なら、なに?」
こちらを見上げたまま首を傾げるとまたさらりと髪が動く。その様が美しいなと思いながら「とくに」と答えようとして口を噤む。
彼女を見ていたのは特に意味はない。特別な意味はないけれど――。
「貴方の鑑賞をしていただけですよ」
「私の鑑賞?」
「はい」
腰を折って見上げる彼女に顔を近づける。昏く沈む双眸に映るのはジェイドだけ。もちろん、彼女の瞳にめいっぱい映る権利を得ているのもジェイドだけ。
昏い瞳に満足気に微笑んでいる自分が映っている。
「それは愉しいの?」
「ええ。もちろん」
「あら、そう……ふふ」
意外そうに言いながら眦を緩むせて透き通るような白い肌を色つかせる。
淡く色づく目もとはとても魅力的で自然と引き寄せられて――。
「ぁ」
反射的に閉じると同時に僅かな風を感じたような気がした。彼女の睫毛の羽ばたきのせいだろうか。
そんなわけないか、と顔を話して彼女の顔を見る。離れた分さきほどより顔すべてが見えて自然に笑い声が零れた。
「ふふっ、貴方もそんな顔になることがあるんですね」
「だって……」
透き通るような白い肌は今やすべて真っ赤になっている。首筋まで色づいているのを見るのは
「隠さなくてもいいじゃないですか」
「だって恥ずかしいから」
「……貴方が今更いいますか」
「だって……」
目元を隠していた手を僅かに下げてこちらを見てくる姿は少し可愛い。そう思えるようになった自分に心中で苦笑が浮かぶ。
自分の成長を実感しながら手を下げる彼女の細い手を取る。絵を描く手は手入れをしっかりしているのか細く柔らかい。すっぽりとジェイドの手に隠される。
「もう少し歩きましょう」
「ええ。もちろんよ」
頷くと彼女の細い指が指に絡んでキュッと握られる。ぴったりと繋がる手に自然と笑みが浮かんだ。
「今日はほんといい天気ですね」
2024.04.15
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