わからないひと
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◆ ジェイド視点
「見てみて! ジェイド! 貴方にそっくりな子よ!」
テンション高めな声と共に突き出してきた〝もの〟に目を瞬かせる。
傷ひとつない綺麗な手のひらにちょこんと丸いフォルムを持った〝もの〟が乗っていた。それは一見ぬいぐるみに見えるが僕はそれがぬいぐるみではないことを知っている。
――ツムさん?
ついこの間、突如現れ去った「ツム」という生き物だった。
ツムはある日突然、オンボロ寮の上空にぽっかり開いた穴から降って来た自分によく似たよく分からない謎の生き物だ。謎の生物は僕以外にもアズールや他の生徒によく似ていたものもいた。そして、彼らは積み重ねる習性がありそれを見た学園長が「ツム」と名付けた。
謎の生き物であるツムとのほんの短い時間は中々に興味深いものだった。愉快だった時間を思い出しながら彼女の手のひらにいるツムを見て僕は首を傾げる。
――おかしいですね。
僕がお世話したツムはオクタヴィネル寮の寮服によく似たものを着ていた(?) けれど、レティシアの手のひらにいるツムはナイトレイブンカレッジの制服に似た服を着ている。
――複数匹(?)存在するのか?
それはそれでとても興味深いことだ。でも、なぜ今回ナイトレイブンカレッジではなく別の魔法士養成学校に通う彼女のところにツムが出現したのが気になった。しかも、彼女に似たとかではなく僕に似たツムが。
ツムから視線を上げて昏く沈んだ瞳を煌めかせるレティシアを呼ぶ。
「レティシア。この子はどこから?」
「あら意外に驚きが薄いわね」
キラキラしていた瞳が途端がっかりしたものに変わる。突き出していた手のひらを自分の方に引き寄せて僕によく似たツムに「とっても驚くと思ったのに。ね」と告げる。ツムはぴょんと飛んで彼女の綺麗な頬に擦り寄った。
そのツムの行動に眉を顰める。どうやら僕のところに来たツムと彼女のところに来たツムは違うらしい。判断材料は少ないが何となくそう感じる。
彼女とツムの和やかなやり取りを見ていると周囲からチラチラと視線を感じる。もともと彼女の非常に整った容姿は注目を集めやすい。しかも、今は傍から見れば人形に話しかけているみたいな不思議ちゃんの状態だ。
「はぁ。レティシア。場所を変えましょう」
「ん? ああ、いいわよ」
最初は不思議そうな顔をしたレティシアも周りからの視線に気づいたのか大人しく頷いた。そして、移動する際にツムをショルダーバックに入れた。ツムはぴょんと顔(?)だけ出して嬉しそうに彼女を見上がていた。彼女もそのツムに満足げに見下ろしている。彼女とツムの微笑ましい光景は妙な気持ちにさせた。
――不愉快?
ツムが彼女の頬に擦り寄ったときに近い。だが、今込み上げて来たものとはまた違うような気がする。何が、と説明はし難い。ただ胸の辺りが気持ち悪かった。
「ジェイド。どこに行く?」
声につられて見下ろす。その先には彼女の昏く沈んだ瞳があった。その暗い双眸が僕を映したことに少しだけ胸の気持ち悪さが消えた気がする。
なんで、と考えてすぐに答えらしいものが出てイヤになった。
「ジェイド?」
どうしたの、と言いたげな声に溜め息で返す。すると、僕を見上げていた双眸が瞬きをする。その何もわかっていない瞬きに溜め息がまた出そうになるが、何とか耐えて彼女の細い手を取って腕に添わせる。
「いいの?」
「人が多いので」
「ふふ、ありがと♪」
見下ろした顔はとても嬉しそうに僕の腕を掴んでくる。それに思わず苦笑が滲むと下の方から視線を感じた。
感じた方を見てみれば恨めし気な雰囲気を醸し出したツムがいた。じぃっとりとした視線に〝やはり〟というある考えが浮かぶ。
――このツム、レティシアのこと番 かなんかだと思っているな。
ツムの生態はよく分からない。そもそも雌雄があるのかも分からない。だから〝番〟という概念が存在するのかも分からない。だが、彼女のバックの中にいるツムは少なくとも番の概念があると見る。
謎の生き物であるツムは非常に興味深い存在だ。そんな生き物に番概念や雌雄概念がると思うとさらに追及したい気持ちがあるが――。
ひんやりとしたものが胸の中に漂う。このツムが番と定めた相手が悪すぎた。
僕はツムに微笑んでからレティシアに向き直る。
「とりあえず海岸の方に行きましょう」
「わかった」
個室の店がないわけではないが休日は時間が限られている。それに店に入ってこのツムが何をするか分からない。
――面倒なことになったな。
最初はレティシアから引き取ってナイトレイブンカレッジで自然と帰そうと思った。だが、ツムが彼女を番と認定していたら引き離せない可能性がある。それに引き離したところで大人しく帰るかも分からなくなった。
――消すか?
魔法でどうにかできる存在ではないと思う。それともいっそ謎の生き物を解明してみるのも面白い。その結果、面白い生態を発見するかもしれない。なんて考えながら自然と口角が上がる。
「あらやだ。楽しそうな顔してるわね」
「おっと見られましたか」
下からくすくすと楽しそうな笑い声が聞こえて思わず笑みを変える。にっこりとわざとらしい笑みに変えてみれば彼女の昏い瞳が猫のようにしなる。
「別に今更隠すことないじゃない」
「まぁ誰が見ているか分からないので」
「あらあら」
ふふと笑う彼女に別の笑みを浮かべるとまたチクチクとした視線を感じる。チラと彼女のバックを見ればまた恨みがましい視線だった。そんなツムを鼻で笑いながら一蹴した。
「見てみて! ジェイド! 貴方にそっくりな子よ!」
テンション高めな声と共に突き出してきた〝もの〟に目を瞬かせる。
傷ひとつない綺麗な手のひらにちょこんと丸いフォルムを持った〝もの〟が乗っていた。それは一見ぬいぐるみに見えるが僕はそれがぬいぐるみではないことを知っている。
――ツムさん?
ついこの間、突如現れ去った「ツム」という生き物だった。
ツムはある日突然、オンボロ寮の上空にぽっかり開いた穴から降って来た自分によく似たよく分からない謎の生き物だ。謎の生物は僕以外にもアズールや他の生徒によく似ていたものもいた。そして、彼らは積み重ねる習性がありそれを見た学園長が「ツム」と名付けた。
謎の生き物であるツムとのほんの短い時間は中々に興味深いものだった。愉快だった時間を思い出しながら彼女の手のひらにいるツムを見て僕は首を傾げる。
――おかしいですね。
僕がお世話したツムはオクタヴィネル寮の寮服によく似たものを着ていた(?) けれど、レティシアの手のひらにいるツムはナイトレイブンカレッジの制服に似た服を着ている。
――複数匹(?)存在するのか?
それはそれでとても興味深いことだ。でも、なぜ今回ナイトレイブンカレッジではなく別の魔法士養成学校に通う彼女のところにツムが出現したのが気になった。しかも、彼女に似たとかではなく僕に似たツムが。
ツムから視線を上げて昏く沈んだ瞳を煌めかせるレティシアを呼ぶ。
「レティシア。この子はどこから?」
「あら意外に驚きが薄いわね」
キラキラしていた瞳が途端がっかりしたものに変わる。突き出していた手のひらを自分の方に引き寄せて僕によく似たツムに「とっても驚くと思ったのに。ね」と告げる。ツムはぴょんと飛んで彼女の綺麗な頬に擦り寄った。
そのツムの行動に眉を顰める。どうやら僕のところに来たツムと彼女のところに来たツムは違うらしい。判断材料は少ないが何となくそう感じる。
彼女とツムの和やかなやり取りを見ていると周囲からチラチラと視線を感じる。もともと彼女の非常に整った容姿は注目を集めやすい。しかも、今は傍から見れば人形に話しかけているみたいな不思議ちゃんの状態だ。
「はぁ。レティシア。場所を変えましょう」
「ん? ああ、いいわよ」
最初は不思議そうな顔をしたレティシアも周りからの視線に気づいたのか大人しく頷いた。そして、移動する際にツムをショルダーバックに入れた。ツムはぴょんと顔(?)だけ出して嬉しそうに彼女を見上がていた。彼女もそのツムに満足げに見下ろしている。彼女とツムの微笑ましい光景は妙な気持ちにさせた。
――不愉快?
ツムが彼女の頬に擦り寄ったときに近い。だが、今込み上げて来たものとはまた違うような気がする。何が、と説明はし難い。ただ胸の辺りが気持ち悪かった。
「ジェイド。どこに行く?」
声につられて見下ろす。その先には彼女の昏く沈んだ瞳があった。その暗い双眸が僕を映したことに少しだけ胸の気持ち悪さが消えた気がする。
なんで、と考えてすぐに答えらしいものが出てイヤになった。
「ジェイド?」
どうしたの、と言いたげな声に溜め息で返す。すると、僕を見上げていた双眸が瞬きをする。その何もわかっていない瞬きに溜め息がまた出そうになるが、何とか耐えて彼女の細い手を取って腕に添わせる。
「いいの?」
「人が多いので」
「ふふ、ありがと♪」
見下ろした顔はとても嬉しそうに僕の腕を掴んでくる。それに思わず苦笑が滲むと下の方から視線を感じた。
感じた方を見てみれば恨めし気な雰囲気を醸し出したツムがいた。じぃっとりとした視線に〝やはり〟というある考えが浮かぶ。
――このツム、レティシアのこと
ツムの生態はよく分からない。そもそも雌雄があるのかも分からない。だから〝番〟という概念が存在するのかも分からない。だが、彼女のバックの中にいるツムは少なくとも番の概念があると見る。
謎の生き物であるツムは非常に興味深い存在だ。そんな生き物に番概念や雌雄概念がると思うとさらに追及したい気持ちがあるが――。
ひんやりとしたものが胸の中に漂う。このツムが番と定めた相手が悪すぎた。
僕はツムに微笑んでからレティシアに向き直る。
「とりあえず海岸の方に行きましょう」
「わかった」
個室の店がないわけではないが休日は時間が限られている。それに店に入ってこのツムが何をするか分からない。
――面倒なことになったな。
最初はレティシアから引き取ってナイトレイブンカレッジで自然と帰そうと思った。だが、ツムが彼女を番と認定していたら引き離せない可能性がある。それに引き離したところで大人しく帰るかも分からなくなった。
――消すか?
魔法でどうにかできる存在ではないと思う。それともいっそ謎の生き物を解明してみるのも面白い。その結果、面白い生態を発見するかもしれない。なんて考えながら自然と口角が上がる。
「あらやだ。楽しそうな顔してるわね」
「おっと見られましたか」
下からくすくすと楽しそうな笑い声が聞こえて思わず笑みを変える。にっこりとわざとらしい笑みに変えてみれば彼女の昏い瞳が猫のようにしなる。
「別に今更隠すことないじゃない」
「まぁ誰が見ているか分からないので」
「あらあら」
ふふと笑う彼女に別の笑みを浮かべるとまたチクチクとした視線を感じる。チラと彼女のバックを見ればまた恨みがましい視線だった。そんなツムを鼻で笑いながら一蹴した。