ただしいよりもたのしいがいい
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ただしいよりもたのしいがいい
時たま何が「正しい」のかわからなくなる。元々世間一般の「正しい」に興味はなかったけれど本当にわからなくなる。と言っても、私の中で何が正しいのかはの基準はブレたことはない。
「貴方は昔から自分が基準ですからね」
「でも、それって誰もがそうじゃないの?」
ベタベタする身体に不愉快感が込み上げる。ジャワー浴びたいって隣に立っているジェイドに言えば「水魔法ぶつけますよ」なんて返して来た。水なんて風邪は引かなくてもこの不愉快感が拭えるとは思えない。
「シャワー浴びたい……」
「もう少し待ってください」
すぐ後ろにある壁に寄り掛かって慣れた手つきで片づけを始めるジェイド見る。いつも悪いなと思うし、そろそろ自分でどうにか出来ると思うのに彼は律儀に呼んだら来てくれる。
「いつもありがとう」
「契約ですから」
「ああ。そうだったわ」
見返りがしっかりあるからどこにいてもジェイドは私の元へ来てくれる。今日もそう。今日もやられそうになった私が反撃したら相手起きなくなちゃったの。だから、ジェイドを呼んだの。
「ベタベタする。髪もダメそう」
もう髪切ろうかなってベタベタなものが凝固し始めて絡む髪を見る。姉様に憧れて伸ばしていた長い髪もこんなことが何度も起きるなら切った方がいいかもしれない。
「ねぇねぇ。ジェイド、髪短いの似合うと思う?」
「おや。切るご予定が?」
マジカルペンを振りながら顔だけこちらに向けるジェイド。そのジェイドに「悩み中」って返す。どうしようかな短いのなんてここ数年していない。
「僕は長い方が好きですけど……」
「わっ」
驚いた。いつの間にかさっきまで片付けをしていたジェイドが前に現れた。制服姿でも式典服でもない。ただの真っ黒な服を見に纏っている彼は暗闇にすぐに溶け込んでしまうからこうして目の前に現れて驚いてしまう。
「もう終わったの?」
「はい。あらかた。というか、そろそろプロの方にお頼みしては」
「貴方だって十分にプロよ」
「はぁ。僕はただの学生です」
嘘おっしゃいな。ただのウツボの人魚の男の子なわけがないでしょ。彼のリーチ家の子息の一人なんだから。ただの学生なわけがない。私だってだだの学生だったら依頼していない。ただの学生じゃないから依頼しているんだから。
「それにしても貴方もう少し綺麗にできないんですか」
「だって、君が俺のモノにならないならっ――て、いきなり襲い掛かってきたの」
無理よ、と言えば深い溜息が聞こえた。ジェイドを見れば半眼で私を見下ろしていた。とても何か言いたげな顔をしている。でも、私は肩をすくめるだけにとどめた。
「ハァ。シャワー浴びたいんでしたっけ?」
「そう。でも、このままじゃ裏路地から出れないわ」
どうしましょう、と言うといつものようにシャランと音がする。そして、瞬く間に身体を魔法の煌めきに包まれて不愉快感が消えていく。私の身体は綺麗になっていく。髪に絡みついて凝固したモノもなくなった。
「いいな。私もこの魔法覚えよう」
「そうしてください。ああ。でも服の汚れは難しいですね」
「ああ。血はね」
仕方ないわ。白い服についた赤茶の染み。流石にここを綺麗にするには洗濯が必要なんだと思う。でも、この服は一生着る予定はないしなんなら今すぐ脱ぎ捨てたい。
「ジェイド。何か余分なジャケット――」
「ありますよ」
いつの間にか取り出した大き目の黒いパーカーが彼の手元にあった。準備周到というか私がいつも服が駄目になるから用意をしてくれているんだろう。
「ありがとう。なら今すぐ着替えるわ」
「はいはい。どうぞ」
くるっと背中を向けるジェイドに私も背中を向ける。そして、掴みかかられたときに外れた釦以外の釦を外す。
「このブラウス結構気に入っていたのよ」
「でしょうね。何度か見たことがあります。貴方にしては意外でしたね」
「うん。だって、ジェイドが選んだものだから」
「え」というジェイドが零すのと同時にブラウスを脱ぎ捨てて振り返る。ジェイドが驚きに瞠目しながらすぐに視線を逸らして持っていたパーカーを渡して来た。
いい加減私の裸に慣れてもいいと思うけど、と考えながら受け取ってすっぽりとかぶる。意外に冷えていたのかパーカーを着るとあったかかった。
「ジェイドの匂いがするわね」
くんと匂いを嗅げばこちらを見たジェイドが眉を顰めた。別に可笑しい行動じゃないと思うけれど。それに臭いって言っているわけじゃないのに。
「いい匂いよ。私は好き」
貴方と同じくらいね、と心の中で付け足す。
じっと見つめ続ければ先に逸らしたのはジェイドの方だった。
「さ。怪我の手当てもありますから行きましょう」
「そうね。お腹空いたし」
「……貴方って人はこんな状況で」
呆れて首を横に振るジェイドが歩き始める。私もそれに続いて歩き始める。徐々に、徐々に、薄暗い裏路地から離れていく。そして、私は彼と共に再び光が満ちる世界へと戻った。
お題サイト「as far as I know」様より
お題『あなたとおはなし』から抜粋
時たま何が「正しい」のかわからなくなる。元々世間一般の「正しい」に興味はなかったけれど本当にわからなくなる。と言っても、私の中で何が正しいのかはの基準はブレたことはない。
「貴方は昔から自分が基準ですからね」
「でも、それって誰もがそうじゃないの?」
ベタベタする身体に不愉快感が込み上げる。ジャワー浴びたいって隣に立っているジェイドに言えば「水魔法ぶつけますよ」なんて返して来た。水なんて風邪は引かなくてもこの不愉快感が拭えるとは思えない。
「シャワー浴びたい……」
「もう少し待ってください」
すぐ後ろにある壁に寄り掛かって慣れた手つきで片づけを始めるジェイド見る。いつも悪いなと思うし、そろそろ自分でどうにか出来ると思うのに彼は律儀に呼んだら来てくれる。
「いつもありがとう」
「契約ですから」
「ああ。そうだったわ」
見返りがしっかりあるからどこにいてもジェイドは私の元へ来てくれる。今日もそう。今日もやられそうになった私が反撃したら相手起きなくなちゃったの。だから、ジェイドを呼んだの。
「ベタベタする。髪もダメそう」
もう髪切ろうかなってベタベタなものが凝固し始めて絡む髪を見る。姉様に憧れて伸ばしていた長い髪もこんなことが何度も起きるなら切った方がいいかもしれない。
「ねぇねぇ。ジェイド、髪短いの似合うと思う?」
「おや。切るご予定が?」
マジカルペンを振りながら顔だけこちらに向けるジェイド。そのジェイドに「悩み中」って返す。どうしようかな短いのなんてここ数年していない。
「僕は長い方が好きですけど……」
「わっ」
驚いた。いつの間にかさっきまで片付けをしていたジェイドが前に現れた。制服姿でも式典服でもない。ただの真っ黒な服を見に纏っている彼は暗闇にすぐに溶け込んでしまうからこうして目の前に現れて驚いてしまう。
「もう終わったの?」
「はい。あらかた。というか、そろそろプロの方にお頼みしては」
「貴方だって十分にプロよ」
「はぁ。僕はただの学生です」
嘘おっしゃいな。ただのウツボの人魚の男の子なわけがないでしょ。彼のリーチ家の子息の一人なんだから。ただの学生なわけがない。私だってだだの学生だったら依頼していない。ただの学生じゃないから依頼しているんだから。
「それにしても貴方もう少し綺麗にできないんですか」
「だって、君が俺のモノにならないならっ――て、いきなり襲い掛かってきたの」
無理よ、と言えば深い溜息が聞こえた。ジェイドを見れば半眼で私を見下ろしていた。とても何か言いたげな顔をしている。でも、私は肩をすくめるだけにとどめた。
「ハァ。シャワー浴びたいんでしたっけ?」
「そう。でも、このままじゃ裏路地から出れないわ」
どうしましょう、と言うといつものようにシャランと音がする。そして、瞬く間に身体を魔法の煌めきに包まれて不愉快感が消えていく。私の身体は綺麗になっていく。髪に絡みついて凝固したモノもなくなった。
「いいな。私もこの魔法覚えよう」
「そうしてください。ああ。でも服の汚れは難しいですね」
「ああ。血はね」
仕方ないわ。白い服についた赤茶の染み。流石にここを綺麗にするには洗濯が必要なんだと思う。でも、この服は一生着る予定はないしなんなら今すぐ脱ぎ捨てたい。
「ジェイド。何か余分なジャケット――」
「ありますよ」
いつの間にか取り出した大き目の黒いパーカーが彼の手元にあった。準備周到というか私がいつも服が駄目になるから用意をしてくれているんだろう。
「ありがとう。なら今すぐ着替えるわ」
「はいはい。どうぞ」
くるっと背中を向けるジェイドに私も背中を向ける。そして、掴みかかられたときに外れた釦以外の釦を外す。
「このブラウス結構気に入っていたのよ」
「でしょうね。何度か見たことがあります。貴方にしては意外でしたね」
「うん。だって、ジェイドが選んだものだから」
「え」というジェイドが零すのと同時にブラウスを脱ぎ捨てて振り返る。ジェイドが驚きに瞠目しながらすぐに視線を逸らして持っていたパーカーを渡して来た。
いい加減私の裸に慣れてもいいと思うけど、と考えながら受け取ってすっぽりとかぶる。意外に冷えていたのかパーカーを着るとあったかかった。
「ジェイドの匂いがするわね」
くんと匂いを嗅げばこちらを見たジェイドが眉を顰めた。別に可笑しい行動じゃないと思うけれど。それに臭いって言っているわけじゃないのに。
「いい匂いよ。私は好き」
貴方と同じくらいね、と心の中で付け足す。
じっと見つめ続ければ先に逸らしたのはジェイドの方だった。
「さ。怪我の手当てもありますから行きましょう」
「そうね。お腹空いたし」
「……貴方って人はこんな状況で」
呆れて首を横に振るジェイドが歩き始める。私もそれに続いて歩き始める。徐々に、徐々に、薄暗い裏路地から離れていく。そして、私は彼と共に再び光が満ちる世界へと戻った。
お題サイト「as far as I know」様より
お題『あなたとおはなし』から抜粋
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